昔読んだ絵本
昔読んであれおもしろかったなーと思い返す絵本というのはいくつかあるが、今考えても示唆に富んでいて攻めた内容だった、しかも詳細を全然思い出せない、というものがあるので紹介したい。万が一、タイトルをご存じの方がいらっしゃったらコメントください。
あらすじ
───
ある男が神(か仙人か魔法使い的な者)から一つの「木の実」を貰う。神(的な者)はこう言う。
「この実を食べればお前は一年間空腹にならず、何も食べずに暮らすことができる。この実を植えれば木が育ち、一年後に実が二つできる」
男はその実を植えた。
実は芽を出して育ち、一年後に木になった。木は二つの実をつけた。男はなった実の一つを食べ、もう一つを植えた。男は一年間食べ物に困ることなく暮らした。
一年後に木が育ち、実を二つつけた。男はなった実の一つを植え、もう一つを食べて暮らした。
男はそうして食べ物に困ることなく何年も暮らした。
ある年、男はこう思いつく。
「今年はこの実を二つとも植えてみよう」
そうして男は実を二つとも植え、一年間別の物を食べて暮らした。一年後に二つの実からそれぞれ二つの実がなった。
男はその実の一つを食べ、残りの三つを植えた。
三つの実はそれぞれ木に育ち、それぞれ二つずつ実をつけた。
男は結婚してお嫁さんと二人になった。二人で一つずつ木の実を食べ、残りの四つの実を二人で植えた。
四つの実は木に育ち、一年後に二つずつの実をつけた。
二人のあいだに子供が産まれ、三人になった。三人で一つずつ実を食べ、残りの五つの実を植えた。
五つの実は木に育ち、一年後に二つずつの実をつけた。
子供がもう一人生まれ四人家族となったので、四人で一つずつの実を食べ、残りの六つの実を植えた。
六つの実は木に育ち、一年後に二つずつの実をつけた。
家族四人で一つずつ実を食べ、残りの八つの実を植えた。
八つの実は木に育ち、一年後に二つずつの実をつけた。
───
記憶にあるあらすじはこんな感じ。一つから二つ実がなるということ以外、数や人の記憶は正確ではありません。その後、倉庫を作って実を保管したり、とかもあった気がする。
Q.産まれて一歳未満でそんな実は食べられないのでは?
A.そんな実は存在しません
Q.年子で二人子供が産まれれば数年は実を育てる暇はないのでは?
A.そんな実は存在しません
Q.人類の食文化を根底から破壊しかねませんか?
A.そんな実は存在しません
展開として実が育たないとか食べられないとか食べても満腹にならなくなるとか盗まれるとか、そういう話ではなかった。要は、不思議な実を取り巻く人々の話ではなく、財の概念としての実だったのだと思う。
絵柄も、主人公の一人称的な目線ではなく俯瞰の絵だったことを記憶している。一本の木と一人だったのが、少しずつ賑やかに発展していく印象だった。
そうして末永く幸せに暮しました的な結末だったはずだったが、改めて思い返すと、そんな無尽蔵に増え続けるまま終わるなんてお話としてありか? という気もするな。
一つが二つに増える数のおもしろさや、一つの元手を増やす資本主義的なおもしろさを教わったことが印象深い。
神(的な者)はあくまで一つの実を与えただけで、それを男はその場で食べて終わらすことも、一つ食べて一つ植えるだけで一生を終わらすこともできた。それを大きく発展させたのは男の行動なのだ、という啓蒙のお話だったのかどうかは覚えていない。
読む人によっては、発展させない方が幸せだったと捉えるのだろうか。「もし一年間空腹にならない実があったら」という生き方を考えるのだろうか。
という題材を絵本として楽しく読ませるというのも今思うとすごい。改めて読みたい。全然詳細が思い出せない。
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