米(※注意、虫の描写アリ)
どうあがいても美しい導入を書くのが無理なので単刀直入に書く。家で米を炊こうとしたら米に虫がわいていた。それの話をするぜ。
(作者の精神衛生上の理由によりフィクションじみた口調でお送りさせていただいております。)
事が起こったのは日曜の夜だ。俺は大体日曜の夜にまとめて米を炊いて冷凍しておくことにしている。そうすると平日の俺が感謝してくれるからだ。
その夜、いつものように米を炊こうとしたんだ。炊飯器の内釜に米を入れて、水道の水をそそいだ。たまにはとぎ汁を部屋の観葉植物たちにあげてもいいか、でも無洗米だとあんまり意味ないらしいんだよなあ、なんて呑気なことを考えながらふと見ると、やたらゴミが浮いているんだ。とぎ汁に。黒い、細かいやつだ。
嫌な予感がしたが一旦水を流し、米を見る。見たところ異常はない。
もう一度水をそそぐ。そうすると(これが本当に気味が悪いが)どこからともなく黒いゴミが浮いてくる。
今度はそのゴミをよく見てみる。決して、よく見たらゴミに小さい足が生えていてそれをばたつかせてとぎ汁の中で溺れているとかじゃないんだ。本当にただの黒いゴミなんだ。
もう一度水を捨てて、俺は冷静に考える。考えてみよう。
水を入れればゴミは浮き上がって流れていく。ならばそれを繰り返せば、物理的にそれはゼロになるのではないか?
冷静に考える。
人から聞いたことがあった。米に虫がわいたって話。他人事だと思ってたね。今の今まで。
その人の話を思い出しもう一度考える。
そして、ついさっき開けた米びつを見る。もう何年も使っている透明のプラスチック製だ。それを持ち上げる。持ち上げて、透明の底を見る。
いるのだ。
やつらが。動いているのだ。黒いゴミ。ゴミだと思いたかったものが。
真っ白の米を米びつから直接ゴミ箱に流し込んだ経験はあるか?
稲作民族の末裔として、このとき俺は一番やっちゃいけないことをやっていると思ったね。
料理の褒め言葉の最上級に料理じゃなくて「ご飯が進む」っていうよく考えると謎な褒め言葉を使う国民として一番やっちゃいけないことだと思ったね。
釜に入れてとぎかけだった米の方こそ、他のゴミが入ったゴミ箱に直で入れることが本当にできなかった。一回別のビニール袋に入れて口を縛ってから捨てた。
もったいないとか心が痛むとかを超えて「タブー」感がすごかった。
仮定の話だよ。
もし日本人全員を本気でキレさせたいなら宗教とか歴史関連ではなく、黄金色に実った田んぼにペンキをぶちまけるとか、大量の精米を砂みたいにゴミ捨て場にばらまくとか、ホカホカの炊き立てご飯を土足で踏みつけるとかじゃないだろうか。
そんなことよりマジで伝えたいのは夏場は米も冷蔵庫に入れろ。俺からは以上だ。
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