概要
一九九二年八月、九歳の少年トビーはフロリダでハリケーンに遭い視力を失った。両親は変わらぬ愛を持って接するが、トビーの心は不満、不公平感、苛立ちに支配され脱出できずにいた。四年後、一家はメイン州の田舎町ニネベに移り住む。トビーは、父が与えた愛犬ハミングとの散歩中に森で古い鍵を拾った。持ち主はジャン・グッドスピード。酒に煙草にギター、見透かすような会話、不味いチョコバーを食わせたこの男に不信感と苛立ちを覚えながらも、同時に安息や不思議な信頼も抱く。
トビーはジャンと訪れたエクタバナのダイナーでサラに出会う。彼女の「読み上げる」言葉の魅力によりメニューに味わいを覚えるトビー。彼女に惹きつけられると同時に、その言葉
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人生と犬生。一人では難しくても。
特別賞受賞、おめでとうございます。
同じ物書きとして、この作品が受賞したことを心から嬉しく思います。そして本当に、本当に勇気づけられました。
何度言っても言い足りない。おめでとうございます。
受賞するべくして受賞した作品だと思います。
大きな、誠に大きな困難を前にして、固まり、苦しみながらも、人やわんこに支えられて、そっと一歩を踏み出す少年の生き様に、心の底から声援を送りながら、ぐいぐいと読み進めてしまいました。
戸惑いながらも人と関わり、憤りながらも優しさに触れ、強くなりたいと願いながらまた戸惑い、自身も優しくなっていく。
全ての年齢層の方に、できる限り多くの方に読んで欲しい作品です。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!多くのキャラクターを通して自己理解をするような物語
彼らの世界を通して自分の精神と向き合うような作品でした。
視力を失った少年が主人公です。
ここからして、私は彼の思い描く世界を物理的には理解できないのです。
しかし例え同じものを同じところから見たとして思い描くものは違うはずです。
それを人間は想像して、他者が何を見ているのか理解しようと試みる。
見えているからこそ見えていないことがある。
でも、目という器官を飛び越えて見ようと思えば、見えてくるものもある。
彼が心で「見た」ことが、精緻で温かな文章によって伝わってきます。
彼らの視点を通して自分の心が一体何を見ようとしていたのかと思わされます。
そんな素晴らしい物語でした、ありがとうございま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!とんでもないクオリティ。一回、プロローグ読んでみてよ。
やばい。クオリティがエグイ(語彙力喪失)。
一旦、プロローグだけでも読んでみて欲しい。
舞台となるアメリカの背景知識というか、文化の描写があまりにも自然で、海外文学を読んでいる時と全く同じ気持ちになった。自分の知らない異国の地が、作中に人物にとっては日常でしかない、あの感じ。
なにより圧巻なのは、作者のセンス。「そのハミングは7」というタイトルを見た時点で「なんか他とは違うぞ?」とわくわくしたが、その期待通りどころか、はるかに超えてきた。
作中のなんでもない、描写やセリフ、ワードの一つ一つに作者のセンスが込められてて、どうあがいても真似しようのないプロ作家の何かを感じた。
なんとい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!見るってなんだろう。と、考えながら、飲むように読む。
めちゃくちゃ不思議なジャン。とっても素敵なジャン。読みながら、ジャンに惚れずにはいられなかった。
普段、私は目で世界を見ている。目で世界を見た気になっている。
でも、それって本当に見ているんだろうかと。実は、ろくに見えていないんじゃないかと。
リズムよくならんだ文字を、サラサラと目で撫でながら、そんなことを考えた。
日本にいると、経験できないことが描かれている。だから、どこか非日常感がある。
でも、この物語の非日常は、読み手の日常に優しく混ざり込んでくる。
読み終わった瞬間から、いつもの世界が違く見える気がした。
この、優しくて、スパイシーな読後感……サイコーに美味です! - ★★★ Excellent!!!気付くとまた一気に読んでいた…
作者様の文章は映像的というか、小説を普段読まない私にも、シーンの映像が浮かんできて、物語が勝手に進んでいくような体験を与えてくれます。
気になって読み始めるとドンドン止まらなくなる…
スッと含まれている細やかな描写が想像をサポートしてくれるんだろうか…
私の友人が「人は嘘つきだから信じられないけど、犬は優しいから好きなんだ。」って言っていた話を思い出したりしました。
ハミング数、という概念は知らなかったんですが、面白い魔法のような、想い(愛)を込められたメッセージですね。
また、人生について考える貴重な時間を与えてくれました。ありがとうございます。
また他の作品も拝見しますし、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ドント・ウォーリー。愛が見えないのは、あなただけじゃない。
貧困、疾病、失恋、死別。思いもかけない時に、突如として様々な絶望が降りかかってくることがある。すべてを失った、もしもあなたがそう感じた時には、是非この小説を読んでみて欲しい。
ここに書かれているのは、視力を失った少年が導きを得て、自分が愛に包まれていることに気付く物語。
そう聞くとあなたは、導きなんて都合のいいものがそこらに転がっているわけないじゃないか、と憤るかもしれない。そうじゃない、探そうとしなければ、それは視力があったって見えないんだ。
人の悪意ばかりが取りざたされるこんな時代でも、誰かがあなたをきっと見守ってくれている。自分に素直になれば、きっとそれは心の目で見えてくるはず。そして…続きを読む