第3話 大魔女=クソババア
「オワタ。オワッタよ、あきら…」
電話越しで、彼女は低い口調で「終わった」と悟った。
「お前、ほんと、バカだな。バレるに決まってんだろ。」
俺は、こいつには呆れまくっていたため、学校から出された課題とやらをやりながら、魔白の話を聞いていた。
「もおおおお〜!なんで、あのババアにバレなきゃいけないんだよ!どこ誰が私の仕業だって分かったのよおおおお!」
俺のスマホから、とんでもない程のでかい声を出して喚いている。
「そんな喚いていると、近所迷惑だぞ。バカか、お前は。」
「うっさい!私はねえ、あの大魔女様とかいうババアは大っ嫌いなんだよ〜!もう、やってらんない!あきら、今すぐに、こっちに来い!さもないと〜、お前がやったことにするから。」
「なんだそれ、脅しになってんのかよ。もう既に向こうにはお前がやったってことバレてんだろ。だったら、そんな脅しは効かないけど。」
俺はいかにも平然として答えた。電話越しから、何やら悔しそうな声が聞こえてくる。俺は少し、嬉しく思いながらも、課題を進めていった。
ちなみに、学校はあの後、休みとなった。先生たちがインタビューなどに答えなければならないし、体育館も建て直さなければならないので、学校があったであろう水曜日から金曜日まで休みで、土日を挟み、月曜日登校となった。その間の課題が半端ない量なので、俺はひたすらに解いているのだ。魔白は一切、やっている様子がないが。
「うう…」
「それに、お前の家、向こうの方だろ?」
俺は魔白にトドメを刺そうとしていた。
「向こう…ああ、レイラレルアの世界こと言ってんの?」
「そう。」
レイラレルアの世界とは、この地球とは別世界の所だ。しかし、ある魔法使いが何かの手違いによって、『地球』と『レイラレルア』を繋いでしまったため、一部の魔法使いが来るようになったが、地球では『繋いだ』という事を知っている人間は一人もいない。あえて言うのならば、俺くらいだろう。
「そっちには、あいにく、行きたいとも思えないからな。」
「ううう、、、こんなにもか弱い乙女が助けを求めていると言うのに…」
およよと悲しそうに声を発しているが、俺はそんなことでは動じない。いつも通り「はいはい」と答えて、話を流す。
「ねえ、あきら。」
急に真面目そうな声で俺の『名前』を呼ぶ。
「なんだよ。」
俺は課題をする手を止めて、その声に耳を傾ける。
「もう無理、あのババアを殺すしかない。」
マジの声のトーンで話すので、何かと思ったら、そんなどうでもいいことだった。
「はあ…ったく。お前、そんなんで…」
「ぎゃああああ!」
突然の悲鳴に俺は、驚き、スマホを持ち、「大丈夫か!」と咄嗟に叫ぶ。
「ふぇ?な、なんで、あんたが…大魔女様がいるん⁉︎」
俺もビビる。しかし、俺の口からは何も発せなかった。
「魔白 ルリア。あなたのおかげで–––––」
ブツッ
俺は何故か、通話を切っていた。
ツーツーツー
「うん?切られた?」
私は、切られた通話画面を覗く。
「誰かと喋っていたのですか?」
大魔女様……あのクソババアが尋ねてくる。
「そうだけど。」
平然と答える。
「そうですか。では、話を戻しましょう。今回の件であなたは魔法使いの一級資格は落としませんが、地球で大規模な魔法の使用を禁じます。」
何か、誤解しているのではないか。そう思い、私はクソババアに伝える。
「私が、今回、体育館を潰してしまった理由は、ベンディーがいたからです。」
「関係ありません。」
「は?」
私の何かが、プツンと音を立てて、千切れた。
「あんた、ベンティーの存在はご存知だよね?そいつを倒すには総合魔力、50000マジクは必要なんだよ。それに、あの時、倒しておかないとない、後々、地球が大変なことになっていたのかもしれないんだよ。分かってるよな?」
口調なんて気にせずに、私は言葉を続ける。
「だから、そんな膨大な魔力の量じゃないと、あいつは殺せないし、消滅させられない。ベンティーはごく一部の魔法使いか、勇者じゃないと殺せない。あんた、分かってる?昔のあんたの方が、少しは分かってくれたような気がするけど、歳をとるとそんな、感じになるんだ。私、びっくり。」
こんなにも論破したにも関わらず、クソババアは落ち着いた口調で話し始める。
「いくらでも言いなさい。しかし、それが大規模な魔法の使用を許可するのとは別です。一級の魔法使いは膨大な魔力を使用しなくても、ベンティーなどとはごく簡単な魔法と、少量の魔力で倒すことができますよ。総合魔力50000マジクと言いましたよね?それは一般の魔法使いが使用する魔力です。あなたは一級魔法使い。つまりです。もっと、少量の魔力で倒す必要があるのですよ。」
返せる言葉なんて、、、ない。
「それでは、そろそろ行きますね。一級だからと調子に乗ってはいけせんよ。」
クソババアは消えていった。
「あのクソババア。昔はもっと、いい奴だったのに…」
私から溢れた言葉はこれくらいだった。
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