第8話 勇者、バレたけど、どうにかなる…らしい…
「ヤッベっ!」
俺は、ワープポイントを潜り抜けたあと、この浮島からもすぐに飛び立った。
そうしなければ、多分、あの王女もワープポイントを潜り抜けて、こちら側に来たかもしれない。
俺は焦りながら、箒の速度を上げていく。
地球では、既に日が昇り始めていた。
向こうの世界とこちらの世界とは、時間軸がまるで違う。そのため、向こうで1時間くらいの感覚でも、こちらでは、8時間いなかったようなものだ。しかし、魔白の場合は、一級魔法使いであるため、そういった時間をすべて、コントロールできる。俺は、できるのかもしれないが、あえてしていない。それをしたことによって、命の危険があるからだ。
一応、魔白は地球のアパートを借りている。学校があるからである。
「バレたな…どうする…俺は一応、魔王と共に死んだことになっているんだがな…」
そう、俺は『勇者』として、魔王を倒し、その魔王と共に死んだことになっているのだ。まあ、それを広めてくれたのが、魔白とかなのだが。
「あああああ〜…でも、ほら、夜だったし、王女様はきっと見間違いとか思ったりしてくれなねえかなあ…」
そんな期待をしても、多分、無意味だろう。俺の顔は新聞に載ってしまっていたし。それに、本とかにもなっている。
まじで、ヤバい。
ちなみに、バレたくない理由は一つだ。俺の生活を、俺の日常を壊してほしくないのだ。例えば、魔王を倒したことによって、そのまま帰還すると、絶対、「この王国に尽くしてもらえぬか〜」とか「このインタビューに答えてくれ〜」とか、「あんたを描かせてくれ〜」とか、言われまくるだろう…俺はなんのために、魔王を倒したのか、それは…
魔物が鬱陶しかったからだ!
いつも通りの生活をしていたかったらだ!
ただそれだけだった。それだけの理由だったのに、しつこい勧誘やらインタビューやらで、絶対「いつも通り」では過ごせなくなると、かつての仲間たちが言っていた。だから、3年前、もうここには来ないと誓ったのに、魔白が心配で、来てしまったのだ。
「あ〜あ。まあいっか、気にしなくて。さっさと戻ろ。」
俺はそんな独り言を呟いて、自分の家へと向かった。
しかし、よく考えれば、まだ休みはある。
課題は終わっているし、勉強をしなければならないが、そこはまあ、どうにかなる。とにかく、今の現状を魔白に伝えよう。
家、到着。
朝風呂に入り、髪を乾かしたり、着替えたりして、ある程度のことは終わらせた。
兄さんはどうやら、既に大学へと向かったらしい。
俺は部屋に入り、現状を話すため魔白に電話をかけた。
プルルルルルルル…
ブチッ
「はいはい、おはようございまーす。どうせ、あのことでしょ?」
どうやら、向こうの方では既に出回っているらしい…非常にまずい…
あの王女、やりやがった…
俺は、そんなことを考えながら、魔白に話す。
「もう話は出回っているんだな…」
魔白は小さくため息をついた。
「はあ…うん、まあそうだね。でも私のために、こっちに来てくれたから、このことは私が対処するわ。だから、お前は大人しく家にいて。どうやら、地球の方に何かを送ったらしいから。あんたを見つける為に、ね。絶対に家にいてよ!」
俺は半ば泣きそうになりながら、魔白にお礼を告げた。
「マジでありがとう。本当に助かる。今度、課題、半分はやってあげるわ。」
俺は、言った。
すると、魔白の本当に嬉しそうな声のトーンで
「やった!んじゃ、魔法で一気にやっちゃうわ。こっちの世界では大暴れしても許されるらしいからっ!」
魔白の調子乗った声で、この通話は終わった。
なんだかんだ、あいつはバカなところがあるが、助けれらたことは俺の方が多い。本当に、魔白には感謝しても、仕切れないレベルだ。
「ありがとな、魔白。」
既に切れている通話越しに俺はボソリと言葉を発していた。
ん?ちょっと待て。あいつが言っていた、地球の方に送った何かってなんだ?
それも消さなきゃ、俺、外に出れないのでは?
ちょ、おい、魔白?地球では大規模な魔法をつかってはいけないんだよな?
うん、魔白のバカ。ったく、結局はバカだ。
こっちは俺でどうにかするしかないか…
=========================================
次回は1月22日に更新します!
学校外での話がまだまだ続きますが、どうぞ、お楽しみください!
学校は学校で、体育館が破壊されたことへの対処で忙しいらしいので。
この二人、いい感じでいい感じにならないのが、自分でもモヤモヤするんだよね…
では、また次回で!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます