王女様を、どうにかしないと。

第9話 勇者の考えごと。

いや、待て。

あいつは外に出るなと言っていたな。

ってことは、出ないでどうにかするしかないか。

俺の思考回路がぐるぐると回り始める。


一体、何をこっちに送ってきたのだろう…


「わからない…な。」

小さくため息を吐いた。






「ねえ。王女様。初めまして。」

私は、フリフリの可愛らしい赤いドレスを着た女の子に話しかける。

「なんだよお。お前、だりぇだ?って言うか、兵士、呼んでもいい?お前、バカなのお?こんな窓から入ってくりゅなんてえ!お前も所詮、私の下僕のくせにい!」

やけにムカつく口調のガキだな。

私は、目を細めて「けっ」と言ってやった。

なんか、スッキリ。

「お、おまええええ!よくもお、この私に「けっ」なんて言いやがったなあああ!」

王女様は、キレた表情で私に近づいてくる。

「あんた、この私にそんにゃ態度をとっていると、あとで痛い目にあうからなあ!」

デカい声で喋っているのだろうけど、私の耳には、入っては出ていくを繰り返していた。

と言うか、興味がない。こんなクソガキ野郎、とっとと消そう。

そんな言葉が脳裏によぎったが、このことを『あいつ』に言ったら、多分、殺されていただろう。

「だから、あんたは殺さない。けど、少し、痛い目見せてもらおっか。」

性格が悪いとよく仲間には言われていたが、こういうことをするのは、得意であり、若干好きだった。

そう、こういう上の立場にいるような人間を、私の綺麗な魔法で『浄化』させるっていうやつ。

「…?」

王女様からハテナマークが出てきたが、私は気にせずに呪文を唱えた。

「ブローク。」

私の大好きな呪文の一つ。




「さあ、王女さま?お口を閉じる時間ですよ?」




キマった––––

相変わらず、私は天才ね。






俺はひとまず、兄さんに電話をかけた。確か、今なら電話に出てくれるだろう。この時間帯なら、既に講義は終わっているだろうし。

そんなことを思いながら、スマホを耳に近づける。


プルルルル


ブチッ


「あ、兄さん?」

「おう、戻ってきてたか。って言うか、お前、やらかしたな。」

兄さんも、この現状に気づいていたらしい。

「そ、そうなんだよ。マジでやらかした。今、外はどうなってる?魔白には、外に出るなって言われていて…」

「地球人には見えてない…わけじゃないけど、いる…」

「ま、まじ?」

「おう…マジ…めっちゃ空飛んでる…あいつ、、、えっと、ほら…ええと…」

兄さんが飛んでいる物体の名前を思い出そうとしているが、俺はすぐにわかった。

「フィンデン…だろ…?」

俺は、兄さんの返事を待つ。

「ああ!それだ!」

俺は黙った。

まさか、こいつを俺を探すためだけに地球に送ったのだとすれば、本当に無責任な奴らだ。

俺は知っている。

『フィンデン』というのは、人探しの際に使われる魔物だが、意外とその性能は悪いものなのだ。下手したら、人間を、地球人を殺す場合だってある。とにかく、『魔法』という存在がない地球には送ってはいけない魔物だ。

このままじゃ、本当にまずい。

「兄さん、今飛んでいる魔物って本当にフィンデンなのか?」

「ああ。本物だ。俺の目には狂いはない。」

「教えてくれてありがとう。兄さん、また後で。」

「お、おう。」

俺は通話ボタンを切った。


ブチッ


「本当にまずいな…」

まさか、フィンデンを送ったなんて…








「王女様?今すぐ、地球に送った『何か』をこっちに戻してくれない?」

体が動かない王女に、話しかける。

王女は、床の上で倒れているが、一応、言葉を話せるようにはしてある。それに、気絶しているわけでもなく、意識ははっきりとしているままだ。

ほんっと、私は天才ね。誰かさんはバカバカうるさいけど。

ふと、あきらの顔が頭に浮かんで、ムカついたが、今は地球に送った何かを止めることに専念した。

「こ、のお、下僕うう。この私を床に転がすなんてえ!」

やけに王女は怒っているようだが、私は呆れた目で、見下ろす。

「あんた、ほんっとうるさい。はあ。」

「うううううう。下僕のくしぇに『ブローク』を扱える魔法使いだなんてえ!」

おっ、どうやら魔法に関しての知識はあるらしい。

「ふーん、意外と知識あるじゃん。」

また見下ろしていると、急に髪の毛を引っ張られた感触がした。

引きちぎれるのではないかと心配するレベルで、髪の毛を引っ張られる。

「痛っ!」

一本抜けた。

「精霊さん!おにぇがい!この下僕を地下牢にい!そしたら、兵士たちも呼べえ!あと、今すぐに勇者をみちゅけろおお!」

うるさい、うるさいなあ。

そんなことを思っていると、精霊どもに眠ら––––




「ほんと、うるせ。」




何やら聞き覚えのある声が耳に入り、脳に響いた。




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次回は1月26日に更新します!

うううんんん…王女様って言う新キャラ、意外といい役してる気がするのは私だけかな…

まあ、勇者の過去に触れながら、どんどん書いていこうと思います!

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