第14話 頑張る魔法使いの下で。
放課後。
クラスのほとんどが部活や自習室に向かっている中、俺は魔白を見ていた。
今日のあいつ、明らかに変だった。
いつもより大人しいし、いつもより授業を真面目に聞いていたし…
なんだ、あいつ。もしかして、気づいたのか、自分がバカだということに!おお!だとすれば、「成長」ってやつだな!存分に祝って…
魔白が席を立つ。鞄を持って。あの表情。なにか‥いるのか?
魔白の表情が明らかに、これから戦いに行ってきます。という顔をしている。
俺はいつも通り、窓の外を見る。
しかし、何もいない。
おかしい。だが、魔白は教室を出ていった。
俺は気になって、尾行という形で、追いかけた。
廊下。
下駄箱。
校門。
公園。
そして、魔白は何か唱えたのか、あの大きな帽子と箒が現れ、それをかぶり、跨ごうとした瞬間、俺が隠れていた方向に水が飛んできた。
「うわっ、え、」
「バレてる。ついてくんなよ。」
怒って、、、いや、ムカついているな。
「悪かったな。尾行して。何すんだか知らねえけど、終わったら連絡しろ。あと、助けがほしかったら連絡しろ。じゃあな。」
魔白は何も言わず、箒に跨いで飛んでいった。
「あいつ、なんか、めっちゃムカついてなかったか?はあ、ったく。なんなん?」
俺は溜息をついて、スマホをズボンのポケットから取り出す。イヤホンも取り出し、耳に付け、音楽を聴く。
「あーあ!大魔女様が怒るわ、こりゃ。」
私は目の前に見えてきた、なんかドロドロした液体を頭から被っている魔物が3体くらい飛んでいる。
「え、キモ。てか、無理。衛生的に無理だよ、これ。」
しかも、なんだか笑っているのか、「ぎゅるぎゅる」という音が聞こえる。どうやら勇者を探しているらしい。
「よっしゃ、やっちゃいますか!」
私は両手を箒から離し、「ファイムリャ」と唱える。
魔物に向けて広げた手の平から、大きすぎる火の玉が出る。ゴオオオという音と共に火の玉が魔物を包む。
「なんか、音が…って、はあ?」
イヤホンを付けているというのに、大きな爆発音が聞こえてきた。
空を見上げれば、魔白が空中戦が繰り広げれていた。
「っち。だから、あいつ!」
周りを見ると、気づいている子供がチラホラと出てきている。まずい。非常にまずい。俺は朝、魔白に唱えた呪文をもう一度、唱えた。
「なんか、感じる…もしかして、見えないようにされた?この魔法の特徴…あきらか。」
独り言を呟きながら、ボンボンと火の玉を出し続ける。
「ぎゅるううう。ぎゃる。」
え、今、ギャルって言った?ぷっ、ちょ、オモロい。
そんな余裕をドロドロの魔物見せつけていると、呪文の特徴を捉えたのか、急に火の玉をガードし始めた。
「っち。こちとら、一級魔法使いだぞ。なんで、そんなヘンポコバリアで防ごうなんて、考えたのよ!」
魔白は火の玉に何やら、仕掛けを付けて、バスケットボールくらいの大きさの火の玉をいくつか出し、攻撃した。
その玉は、ドロドロ魔物の2体には効いたが、残りの1体には効き目はなかった。
「くっそ、マジで腹立つ。」
「あいつ、意外と苦戦しているな。」
そんな独り言を呟いて、俺は視線を下ろし、辺りを見回す。先程まで、まじまじと空を見つめていた子供たちがいなくなっていた。
多分、親に「変な物見た」とでも言うのだろう。
しかし、今では俺の魔法で見えなくしてある。
「はあ、俺が魔王を倒した意味ってあるんかな。」
魔白なら倒せるだろうと思った上で、俺はトボトボと歩き始めた。イヤホンはポケットに入れた。今は音楽など聴く余裕なんてない。
昔、こんな出来事があった。
「お前は、なんのために、このわしを倒そうと決心したのだ?」
魔王が俺に聞いてきた。
「魔物がいると、面倒だから。」
「は?」
「あ、いや、そのですね、あなたが創り出した魔物どもが鬱陶しいし、俺はいつもの生活を取り戻したかったからだ。」
「ほう。お前、今までの勇者とは違うらしいな。」
「へー、そうなんだ。」
「これまでの勇者は、誰しもがこう言った。『人助け』とな。」
「ふーん。」
俺はぶっちゃけ、こんな話には興味がなかった。
「もう、殺していいか?」
「ははは!いいとも!出来るならな!」
魔王は笑った。嘲笑った。
その後は、俺が魔王を倒して終わり、なわけだが、今考えると、今まで挑んできた勇者たちが全員『人助け』をするために魔王を倒すという行為に及んだ気持ちがなんだか分かる気がした。
「俺は、守りたいと思う奴がいる。」
だから、今は、今の俺は『人助け』のために魔物を殺す。
だが、何故だか最近、魔物がやけに増えている気がする。それに、その魔物どもが地球にも来ている。
何かが、変だ。
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次回は2月16日に更新します!
自分の気持ちがわかってきた、あきらですが、
魔白はどんな気持ちで魔物を倒してるんだか…
では、次回もお楽しみに!
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