第18話 『魔法』は手放さない

「はあ、書くかー…」

風呂に入り、髪の毛を乾かすと、俺は自分の部屋に入った。

俺は便箋を引き出しから出して、万年筆を手に取って、グレーナへ返事を書き始めた。


{グレーナへ。返事が遅くなってすまない。俺は元気だ。お前の方も元気そうで何よりだ。手紙に書いてあった件、俺も参加するよ。久しぶりにグリーナにも会いたいしな。気になったのだが、キクも来るのか?返事待ってる。レオンより。}


ふうと一息をついて、俺は手紙がグリーナに届くよう魔法をかける。

暖かい光がふわあと手紙を包み、その光がだんだんと消えてくると、俺は、その手紙を持って、窓を開け、手紙を空に向かって投げる。

「これでよし。」

俺は、学校からの課題を鞄から出して、机の上に広げる。

黙って、課題に取り組み始めようとした途端、スマホから通知音が鳴った。

「ん?」

俺は、そのスマホ画面を覗く……





「魔白、聞いたよ?大魔女様に怒られたんだって?しかも、2回も!」

やけに嬉しそうに私のことを話してくる、彼女は、私と同じく一級魔法使いだ。

「ネラ、マジでうるさい。」

木の長机の上に魔導書を鞄から出しながら言ってやった。

「んで、とうとう大魔女様から地球へは行くなあーって言われちゃったりして…w」

マジでうるせえ。久しぶりに一級魔法使いが集い、授業を行うというのに、こういう奴がいたら、マジで邪魔にしかならない。

「そんなこと、あるわけないだろ。てか、2回も怒られてねえよ。今回のことは見逃してくれたから。」


そう、実はドロドロ魔物について話した結果、魔白は大魔女に叱られることなく、「これからは気をつけろ」で済んだのだ。


「ふーん、ほんとかなあ?」

うざいな。そんなことを思ってしまったが、口に出すことなく、黙ってネラを見つめた。


ちなみに、魔法使いにはそれぞれ階級があり、魔法使い検定で一級を取ったら最高、尚且つ最強であるが、十級から魔法検定はあるため、大体の人は、この級から始めて一般的には四級または三級が取れていれば魔法使い認定される。しかし、四級、三級以下だと魔女見習いや魔法見習いと捉えられ、魔法学校に毎日行かされるのだ。

だが、魔白のような一級魔法使いの場合、ほとんど学校に来る意味はない。下手したら教える教師である魔法使いですらも、一級魔法使いの生徒の方が、魔法を磨きあげているため、教えることがないのだ。

だが、授業自体は存在しており、たまに魔法学校に一級魔法使いが集まり、『攻撃魔法』を使った実戦的な授業を行うことが多い。




「そうだけど。で?」

だから何?

睨みつけながら言うと、彼女は急に怯えだし、その体の震えを抑えながら話す。

「い、いや、別に。というか、今まで地球にいたのね。」

話の話題を変えようと必死なのか、地球の話に切り替えた。

「そうだよ。」

平然として答える。

「ふーん、地球ってどんな感じなのよ?」

少し上から目線で気になるが、それでも私は平然として答える。

「まあまあってとこ。そんなに楽しい所じゃない。まあ、私の場合、地球に行ってる理由は……」

「知ってるわよ。あんたは勇者一行と旅し、魔王を倒した、世界一の魔法使いルミナ。つまり、地球という世界はどのような所なのかを探るために派遣された者であり、この世界から出てしまった魔物を抹消するために地球へ送られた者。」

「あーらw、よおおく知ってるのね。」

ニヨニヨと不気味な笑みを浮かべる。そんな私を見てか、ネラはとても嫌そうな顔をして、私の隣に座った。

「ねえ。ルミナ。私は本当に心配しているのよ。確かにあんたは強い。世界一よ。でも、なんだか利用されているような気がするのよ。」

声を小さくして、話す彼女の顔がどれだけ真剣か、私には理解が出来ない。

でも私は、この自分の魔法を使って生きることができれば、それでいい。いくら利用されたって、必要とされたって、恨まれたって、私は『魔法』を絶対に手放すことはない。絶対に。



カーン、カーン、カーン



地球の学校でいうチャイムの音が、鳴り響いた。

「心配してくれるのはありがたいけど、私は大丈夫だって!どうにかなるんだから。」

ネラが呆れた顔で、あきらのように「はいはい、わかった」と適当な返事をした。私はなんだかクスッと笑ってしまった。

「ちょ、なんで笑っているのよ!」

そんなネラのツッコミでより笑ってしまった。




私は、手放さない。『魔法』は、私の物。




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次回は2月25日に更新します!

うーん、魔白、過去になんかあった感じかな?

ていうか、最近、あきらの出番が少ない…?

ま、気のせいだな!次回も、お楽しみに!

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