第5話 箒に乗って。

玄関を出れば、そこは『外』だった。

向こうの世界へ行くのは本当に3年ぶりだ。


俺は、箒に跨ぐ。


「誰もいねえよな?」


キョロキョロと辺りを見回し、いないことを確認した。


「よし…久しぶりだな。ふう、フリーゲン。」


俺は目を閉じ、呪文を一言唱える。


ふわりと箒が浮く。


まだ体が、箒の乗り方は覚えているらしい。


とてもバランスが良かった。自分で言うのもなんか嫌だが…


「そしたら…えっと、箒を動かす呪文ってなんだったっけ?」


地面から少し浮かんでいる箒の上で、俺は考えた。


「あっ。ビブーゲン。」


箒が動き始めた。


「なんか、思ってたんと違う…んだが…」


あまりのも遅かった。


「もう一回、言うんだっけ?ビブーゲン。」


グイグイと箒を誰かが引っ張られるているような動きを見せた後、猛スピードで箒が上へ上へと向かっていった。一軒家の上へ、ビルの上へ。タワーマンションの上へ、雲が広がっている上へ、すると雲海に出た。


「うおっ、えっと、箒を傾けて…」


傾ける方向を変えると、箒が安定した。


「よし、いい感じ。このまま、『あそこ』へ行くか。」


俺はだんだんと操縦に慣れてくると、周りの景色を見れる余裕もできてきた。


周りには何もない。ビルだって、タワマンだって、飛行機だってない。見えるのは雲の中へ顔を隠そうとしている太陽と、下に広がっている雲海…そして、綺麗な星々が顔を出し始めていた。


静かだった。ここは電波が届くのか気になり、スマホを取り出そうとポケットに手を突っ込んだが、


「え?ない。まじか…まあでもいらねえか。いやいや、困るって、俺持ってないっけ?」


いろんなポケットに手を突っ込んだが、なかった。


「あああ…忘れたああ…もういいや、行こう…」


箒を更に加速させようと「ビブーゲン」を唱える。


すると、浮島が見えてきた。浮島と言っても、そこまで大きくない。大きさを具体的に言うには、コンビニくらいの大きさで、まさにコンビニみたいにいろんな物が売っている。


「見えてきた。」


俺は浮島に着陸しようと「ランドーグ」と唱える。すると、箒は静かに、ゆっくりと浮島に着陸した。

「ふう…なんか、ちょっと疲れた…箒、細すぎるんだよ…」

なんて文句を言いながら、売っている物を見る。

浮島には、屋根や、棚といった物はない。とんでもない大きさの切り株の上に商品が色々と置いてあるのだ。

「ふーん、向こうの世界では今、こういうのが売ってんのか。」

傷を治すポーション、気分が良くなるネックレス、ある賢者が使っていたであろう杖、竜の爪、魚の鱗、フルーツジュース、お弁当、アニメキャラのウエハース、などが売っていた。

どうやら、向こうの世界でも『地球』の影響がだいぶあるらしい。



俺がいたのは3年前、つまり、『地球』と『レイラレルア』と繋いでしまったばかりの頃だ…



「気分転換にフルーツジュース欲しいな」

俺は、フルーツジュースを手に取って、「会計」と書いてある切り株の元へと向かう。俺はそこにフルーツジュースを置いた。

「えっと、、、コインあったっけ?」

さっき、ポケットを漁った時に、スマホをなかったが、コインを10コインくらいはあった。

「4コインになります。」

誰もいないのに、声がした。

「はい、ちょっと待って…えーっと…あ、あった!はい。」

俺は4コイン出した。

「ありがとうござ……うん?」

「へ?」

何か盗んだかと思い、自分の体を触る…しかし、商品だった物はこれしかない。

「もしかして、、、」

「………!」

俺は気づいた。まずい、マジでまずい。バレると面倒だ。

「失礼しました!」

俺は、「ワープポイント」という、金色の円に突っ込んだ。




「あ。ちょ。まあ、いっか。そんなわけないしな。」

浮島は、そう言って、客が来るまで、また眠りについた。




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次回は1月7日に更新します!

魔白に会うまでが長くなってしまった…

多分、次回には会っていると思う…多分だけど…

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