第6話 しょうがないっしょ!なんとかなるって!
くぐり抜けた先には、見覚えのある、景色だった。
俺は、先ほどのようにバレるのは嫌なので、服に元々付いていたフードを被る。
「うわ〜、人が多い…」
俺はボソリ呟く。
「あ。あきら!」
魔白の声だ。どうやら、ワープポイントから出てくることを予測していたらしい。意外とバカなのにやるな。なんて思ったが、魔白があまりにも嬉しそうにしているため、そんなことを思ったなんてすぐに忘れた。
「魔白…」
電話した時と同じテンションではあるが、どこかがおかしい。俺にはやはり、違和感を覚える。
「あきら。せっかく3年ぶりに来たんだしさ、どっかのカフェに入らん?」
俺は、その誘いを断った。
「ごめん。俺、静かな所で魔白と話したい。お前、結構…」
俺は言葉を切った。喉まで出てきそうになったが、ここで言うのはなんだか違う気がする。
「そう言うと思った。ほら、行こ。私の家に。」
俺は頷く。
久しぶりの景色に俺は胸をワクワクさせている一方、バレないかが不安だった。
色んな者とすれ違った。例えば、ゴブリン、魔女、冒険者、エルフ、小人、妖精などだ。地球では滅多に見ることの出来ない…いや、見られない者たちばかりであった。
空は満天の星空だったが、これもまた地球とは少し違っていた。ただ星が光っているのではなく、色とりどりの星がまるで、金平糖のように夜空の上を転がっていたのだ。
「着いた。ほら、入って。懐かしいでしょ?でも、ふっふっふ。あんたよりも長くいるから、私の方が、今では詳しいぞ?」
鼻を高くして言うため、俺はまたいつもの呆れた表情と口調で、「はいはい」と答えた。
魔白の家は「花屋」だ。そのため、家から溢れ出る花々と大きさが尋常ではない花などが数多く売っていた。なんだかおしゃれな家だ。懐かしい。
「お前、花屋は1人でやってんの?」
「ううん。魔女っ子見習いのマルジアっていう女の子が手伝いで来てくれているから、1人じゃない。」
「そうか。」
魔白の部屋に入り、俺はベットの上に腰を下ろす。
ふかふかで、花の香り…ラベンダーの香りを漂わせていた。
魔白は椅子に座る。
「なあ、魔白。大魔女様から言われたこと、大丈夫か?」
「ふっ、あんなクソババア…まあでも私が悪いわけだし、しょうがないっしょ!」
「お前らしいな。いい度胸だわ。」
そんな魔白を俺は褒めた。どんな立場でこいつを褒めているのか、俺でもわからないが、上から目線というのは変わりないだろう。
「どうせ、心配してここに来たんだろ?ありがと。でも、ま、しょうがいないし、少量の魔法でもベンティーを殺せるか、試してみるよ。結局はどうにかなるって!」
彼女は言った。どうやら、俺が思っていた以上に元気を取り戻していたらしかった。
「そっか。んじゃ、俺、帰るわ。そんな心配しなくても良さそうだしな。」
「え。もう帰るの⁉︎来たばかりじゃん!実はさ、やって欲しいことが–––」
「バーカ、やるわけがねえ。どうせ課題を押し付ける気だろ。」
「えええええ!頼むよお。ほら、そうそういないぞ?こんな近くに魔法使い検定一級の人がここにいるなんてさ!ほら、だから〜!」
俺はキッパリと断る。
「無理だ。自分でやれ。いくら一級でも学校のテストが悪いんだからよ、魔法を学ぶときくらい…いや、そのとき以上に勉学にも励んでもらいたいね!」
「えええ…ケチ。」
「うるせ、俺は帰る。この世界にいると色々と面倒だから!じゃあな!」
「うう。ふーん帰るんだ。そういうことしちゃうんだ。へー、それで何が楽しいの?こんな人のこと困らせて、何が楽しいというの?帰るんだ。本当に帰るんだ。」
これはヒス構文というやつだろう。だが、このバカだ。俺は楽しくて、帰るわけではない。
「バカは大人しく、勉強しろ。じゃあな。わからない問題があるなら電話しろ。」
「う。わかった。じゃあね。来てくれてありがとよ。親友。」
「おう。」
珍しいな。あいつから『親友』という言葉が出るなんて。もうかれこれ、3年前だぞ。言われた時なんて。
俺は魔白の家から出た。
大して時間は経っていないはずだが、先ほどよりもすれ違う生き物が少なくなった。
「とっと、帰ろ。」
俺はフードを深く被って、走ってワープポイントへと向かった。
「あーあ。だるいな。いちいちワープポイントまで行くの。ま、でもしょうがないか。」
ボソボソと喋りながら、歩いていると、
「すみません。」
何やら、話しかけられた。
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次回は1月8日に更新します!
まだ、魔白たちの学校が始まらないので、
しばらくの間、異世界の方で話が回ると思います。
次回もお楽しみに〜
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