第2話 体育館を破壊してしまった理由
「あああああ。だるい、だるいよう。」
魔白は校長先生の長ったらしい話を聞きながら俺の膝に寄りかかってくる。
「あのクソ校長、もう少し短く話をまとめられないのかのう?」
老人ボイスで俺に話しかけてきたが、
「こうなったのは、お前のせいだろ。」
俺は言ってやった。こいつはバカだ。自分がやったことをもう忘れている。
「うん?うん、そうだね。ちなみに破壊した理由、聞きたい?」
得意げな表現を見せて、ニヤリと何やら気持ち悪い顔を俺に見せつけてくる。この顔、こいつ、説明したいんだな。どうやって、魔法でこの体育館を破壊したのか。
「はいはい、聞いてやるよ。」
俺も校長先生の長ったらしい話には飽きてきた頃だった。周りの様子をみると、全校がこの体育館の有様に食いついているらしく、俺たち以外、ほとんどの生徒が校長講話に耳を傾けている。
「むふふふふ!では、話してあげよう!私がなぜ、体育館を破壊したのか!」
「はいはい、とっととしてくれ。」
「もう〜、そんな急かさないで(//∇//)」
キモい。キモいなこいつ。バカなくせに、こういう時だけ調子乗るんだからな。
「えっと、授業をサボろうと思いまして…」
マジか、もっとなんか、こう、誰かを助けるために、抜け出したんだと思ってたわ。俺は呆れた表情で頷く。
「おい、そんな顔すんな。ひどいぞ。」
「いいから、話、続けろ。」
「もう、強引なんだから〜。」
魔法関連の話だと、キモくなるな。もう少し、マシになってくれるといいんだけど。
「そんで、とにかく、無事に授業を抜け出したわけ。暇だから屋上に向かってたら、窓の先に体育館が見えた。そしたら、ほら、あいつ、えっと〜名前、名前…やば、名前が出てこん。ちょ、あきら、わからん?あいつ。」
そんな『あいつ』でわかるわけが…
「ベンディーだろ。」
口が滑った。
「アッタリ!そうそう、それそれ。ベンディーだ!」
別に、知っていたわけではない。ただ、体育館にでっかく横たわっていたのを見ただけだ。ん?これを知っていたと言うのか?まあいい。でも、あいつが教室を出ていった時、何かあったんじゃないかと思い、一応、窓の外を見ていただけだ。
「よくわかったね。」
ふふっとイタズラっぽく笑う彼女を俺は、少し懲らしめてやりたいと思ってしまった。
ベンティーというのは、人間には見えにくい魔物で、尚且つ、とても凶暴だ。あの時、体育館の屋根の上で大人しく横たわっていたのは珍しい方だ。大体は暴れまくって、人を殺すというベンティーが多い。
そんなベンティーがあそこにいたのだ。俺はどれだけお前を心配したか。まあ、こいつはバカだ。そんな気持ちなんか知らずに淡々と彼女は喋る。
「そんで、あ、居るなー。って思ったから、魔法でぶっ飛ばした結果、ああなった。」
うん、全く、説明になっていない。だが、ある程度はわかった。
そのベンティーを倒そうとした結果、あの体育館を壊してしまったのだ。
「ベンティーは倒せたっぽいな。」
ベンティーの気配を感じない。多分、魔白の膨大な魔力によって、完全消滅したのだろう。さすが、魔法検定一級だ。
「ベンティーは完全消滅したっぽいな。」
「ムフフフ。そりゃあ、私の魔法だもん。」
とても誇らしげに彼女は言った。
「でも流石ね〜あんたも。」
「は?」
俺は彼女が言っている意味が分からず、思わず、「は?」と言葉を溢した。しかし、彼女はそんなことは気にせずに言葉を続ける。
「ベンティーの存在を察知するなんて、中々だぞ?一流の魔法使いでも、察知できないケースが多いのに。」
「そ、そうか?そんな、大したことじゃねえと思うけどな。」
そう言ってくれる魔白に嬉しさを感じていると、彼女はまた誇らしげな表情を見せて、「ま、私はすぐに察知出来るけど。」と付け足していた。俺は、「はいはい」と言って、適当に返事を返す。
校長講話が終わりを迎えようとしている頃には、学校の周りに数が数えきれない程の記者とカメラマンで埋め尽くされていた。やはり、こういうものに敏感な人たちはすごいなと、俺は思った。魔白の顔を見ると、ダルそうな表情で俺の膝にもたれかかっている。
そして、何かに気づいたのか、俺の足を強く叩いた。
「いってっ、おい、何す…」
「やっべ、この事、大魔女様に届かない…よね⁉︎」
魔白は珍しく、体を震わせていた。
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