魔術資料の章
魔術の分類について
魔術に関する南極卿財団秘匿資料より抜粋。
:法令群分類
群分類は魔界法令における禁則上の便宜的分類法であり、国連秘匿保障委員会評議会による魔界法令に順ずる。
A群(禁制術式):研究目的及び区役所警備課の令状による許可、もしくは秘匿課職員でなければ扱うことは法令として禁止されている。主に反射術式、減退術式、封魔障壁術式、などでの対処が難しいもしくは対処不能なものが指定されている。
A―Ⅱ群(A群特例禁制術式):特例時三級免許保持者の使用が認可されるA群術式。
B群(準禁制術式):三級免許以上で認可される術式。複数の陰陽道系術や呪殺・呪術系術式、密教広域現世利益や運反転術式など。殺傷能力を持つ、反転・減退・封魔障壁術式ので対処可能な術式。
B―Ⅱ群(B群特例準禁制術式):特例時に一般に使用が認可されるB群術式。世俗渡航時に一般の使用が許される透明化系の術式と記憶操作系の神経操作術が代表的。
C群(公共禁制術式):公共の場に影響を及ぼした場合に罰則のある術式。広範囲に影響力を及ぼす天候操作や機運操作などを扱うもの。個人規模の場合でも多くの自治法において罰則が制定されている。
:魔力強度
魔術の持つ魔力の強さ。その術が総合的にどれだけの魔力の力を持つかを破壊力の指標としての〈TNT換算〉を参考にしつつ10段階の等級分けが為されている。
・神格:世界の理論そのもの。
・黙示録級:それひとつで人類終焉の危機をはらむ物品・魔力につけられる強度
・災厄級:俗世界兵器並びに魔術界の操作し得る兵器を越した強度の物品・魔力につけられる。
・核融合級:現在想定し得る最大の被害を持つ化学兵器と同等の強度を誇る物品・魔力につけられる強度。物質をエネルギーから生成する術などもこれに該当する。
・核分裂級:原子核分裂と同等の効果もしくは原子核分裂自体を再現・実現させる強度を誇る物品・魔力につけられる強度。
・メガトン級:メガトン級爆弾炸裂程度の強度を持つ物品・魔力・事象の強度。
・キロトン級:キロトン級爆弾炸裂程度の強度を持つ物品・魔力・事象。
・トン級:数百から数トン規模の爆発エネルギーと同程度の強度。
・キロ級;TNT爆薬数キロ規模の爆発エネルギーと同程度の強度。
・常用級:キロ級以下の魔界居住者すべてが日常で使える術の強度。
:種分類
術式効能による分類法。
物理現象操作術
量子力学、物理学などで扱われる現象を操作する術。主に「電磁波操作・生成」を基幹としている術がすべてこれに該当する。下位分類は以下の通り。
・神経操作術
脳のニューロン伝達の電気信号に対して操作を行う魔術の総称。近代以前は精神操作術と共に幻惑・幻覚術とされていた。即死呪文や即死魔術、感覚まひや一時的全盲、永続的全盲などが存在するものの、微細な操作を必要とすることと固定化された様式であることから防衛は容易である。記憶操作術は全魔術師が習得を義務化されているがB群指定魔術である。他の術は基本的にA群指定魔術がほとんどである。
・熱力学操作術
魔力を熱運動へ変換し熱量を操作する術。古典力学操作術などと並び世俗の科学的知見によって難度が確定した。神経操作術の基礎として熱力学操作術の一部が使われる、即死系に属する神経操作術は脳の受容体を焼き切るためである。
・力学操作術
魔力を運動能力へ変換し運動を操作する術。古い形式ではもっとも下位の術であったが物理学的な知見が導入され、呪術物理学などの発展に際し電子発生、熱運動以上に高燃費な操作であることが発覚した。現代魔術においては古典的な運動操作術の呪文や文字を基に他と複雑に利用して運用される。
・電荷・磁性誘導術
魔力を電子変換もしくは磁性変換などを行い自由電子の誘導などにより物質に電荷を付与するほかプラズマによる雷放電などもこれにあたる。複雑な呪文などは必要ない。熱力学操作術と比べ安価。電磁誘導に代表されるように周囲の電荷・磁性の微弱な変化に応じて作用するエネルギーであるために安価。
・電磁波誘導・生成術
エネルギーの最も基本的な単位である電磁波(各波長)を生成する。自然現象の中でも対生成・対消滅に直接影響する物理現象であるがゆえにすべての術は無意識的にここに該当する効能を行っている場合が多い。コンプトン効果(散乱)や真空崩壊に見られる対生成を基に仕事を発生させるのが物理現象操作術の根源である。
・物質生成術
魔力を物質へ転換する。少なくとも爆発などのプラズマ・熱力学操作術の高等術以上に大きな力を必要とする。また、この術を応用し原子核融合、原子核分裂を引き起こすことも可能。兵器としての性能は原子核融合と原子核分裂の方が上だが下記の「対消滅」のほうが単純エネルギー量としては上位。ごく小規模な超重力場(ブラックホール)の生成は対消滅も関わっているとされる。
・反物質生成術・物質消滅術
魔力を反物質へ転換する。物質生成術と同等の難度であるが量子力学的な仮説の実証として生まれた新時代の技術である。それゆえに高度な術として体系化はされていない。また、無自覚にこの効能を示していた古典術が数例存在する(呪塔會蔵「呪術大典 呪術網羅録 禁術巻
情報術
上記の物理現象操作術に相対する情報世界を操作する術。幻惑・幻覚などのほかに世界法則などの法則、言語による伝達などを扱う。ただ、情報世界と物理世界の厳密な分化は不可能であり一部被る分野が見られる。この二つの世界の見方は暫定的なものであり哲学的な考察の域を出ない。
・法則術
物理現象を伴わない純粋な「法則性」に介入する術。大きく「魔術法則付与術」と「異世界法則付与術」に分けられる。ほとんどありえないが「世界法則付与術」が論じられる場合がある。以下は下位分類。
・魔術法則付与術
魔術自体に法則、制約、条件を付与する術。心理的な負荷やハンデによって魔術に消費される魔力の量が減ることから、ほぼすべての魔術にこの術が利用される。これらのハンデの負荷は術者本人およびかつてその術に携わった人々の集合的無意識によって判定される。少なくとも魔術哲学の分野において集合的無意識の存在は考慮すべきとされている。古典魔術に分類されるものや信仰による術にはこの術に分類されないとされるがそこに関しては議論が続いている。
・異世界法則術(領域法則付与術・結界法則付与術)
限定的な範囲内において「世界法則」を付与する。限定的な範囲内が異世界(現行世界の物理法則が施行されない世界)となるためにこの名を取る。「結界」として物品や法則などで範囲を指定したり、拘束する場合もあるが自然物の場合複雑な範囲を取る場合が多い。これらの力を持つ「地点」や「物品」は自然発生する。また異次元についてもこの形態を便宜上とるとされる。術者の存在する術としては非常に難度が高く、古代の術と結界、複雑な魔術法則付与術の連帯、複数かついわくある媒体を必要とする。少なくとも個人が行える術の範囲を大きく超える。結界術と物理現象操作術の複合によりこの術を疑似的に行うことを試みた術も多いが現世界の物理法則の域を出ない。呪物としては数世紀、数千年にわたる崇拝対象などがこの術を扱うほか、後述の「精神寄生生物」などはこの術を生態の一部としている。
・世界法則付与術
上記の異世界法則術と異なり現世界の法則を付与・消失させる術。全世界的効果であるため、論理破綻による世界崩壊の可能性がある。人間には不可能。太陽系の全質量をエネルギー変換したところで些細な法則の付与も不可能である。この術の存在は「呪術大典」および「聖典インサニア」において双方の著者が存在を示唆し、自身がそれの体現であると記されているほかにない。南極卿執務室においてはこの世界法則付与術の触媒となっている存在と術者となっている存在を「上位存在」と呼称する。
・精神操作術
認識誤認や認知誤認、心理的ストレスや興奮などを引き起こす魔術の総称。これは物理的な神経系には作用しない。物理的な神経系の構造が生み出す精神そのものに作用し、幻覚・幻惑・魅了などと近代以前に呼称されていた魔術である。用途の例として指定した幻覚による精神攻撃や認識誤認による隠匿・隠ぺいなどがある。心理的な催眠や魅了なども行える。トラウマの想起や、認知誤認など主に指定した幻覚効果を扱う。
・霊魂操作術
この術によってのみ霊は霊として存在し得るとされる。自然発生的な霊魂は記憶や意志の残滓として情報世界へと消えてゆくだけの存在であるが魔術的な結合により物理干渉能力を得ることが可能。現代においても完全な死者の霊魂から人間の身体へ精神を流入もしくは生成し死者の復活を果たすことは不可能に近い。複雑な意識を持つ人間の霊魂を操作し、物品や魔術自体にCPUのようなものとして付与することが主な目的として挙がる。だが人間の霊魂でさえも死者の霊魂については不完全なものであり、できの悪いAIのような性能しか持ちえない。
・生体情報変容術(身体変容術)
身体内の遺伝子情報、細胞情報の書き換えによる生体の変化を引き起こす魔術。変装・偽装としても利用される。「獣人族」が古代より利用する魔術でありその起源は不明。南極卿研究資料によると南極地下世界において確認された「上位存在」に起源があるとされる。物質的な構造変化による情報改ざんではなく情報の変容に即して物質的な構造変化が行われる。
・仮想情報付加術
仮想情報と呼ばれる物理的干渉が限定された情報を付与する術。例えば仮想重量は完全なる情報的な重量であり、あらゆる法則、現象に対しては重量があるようにふるまうが物理的な質量は持たない。
認識・認知誤認とは異なり仮想範囲を自在に変容させることができ、最終的には世界法則付与術もしくは対生成・対消滅術へとなる。精神操作術と物理現象操作術の中間に位置する。仮想情報は世界法則付与術のように永続的な影響は難しく、時間変化によって散逸していく。これは仮想情報について、エントロピー拡散の効果が非常に強く影響すると考えられている。元来身体変容術から開発されたため、身体変容術と複合して用いられることが多い。比較的近年に分類された術であるため詳細は不明であり、性質も矛盾を抱えている。
・結界術
物理的・情報的な仕切りによって外界と区別された境界内部に魔術的結合を充満することで空間内の事象すべてを疑似的に支配する術の形式。厳密には効能を示すものではなく媒体を示す分類であるがその形式の特異性から並んで語られる。結界内部では術者の術式が即座に適応され、回避するには自らを結果内部のものよりも強力な魔術的結合で覆う必要があるが結界術自体の歴史は古く、有史以前の信仰の歴史から須らく強力な魔力を帯びる。また、結界術は結界の媒体使われる物理的仕切りを破壊することでも解除が可能だが、物理的な仕切りは呪物や魔術物品に見られる再生能力を持つため破壊が極めて困難である。類似の術式に境界術がある。
・境界術
物理的な仕切りを持たない結界術。魔術的結合で満たされた空間がその境界内として扱われる。デメリットとして効率の低さから結界術に術自体の出力は劣り、境界内に結界術を張られる可能性がある。メリットとしては物理的な仕切りによる制約がなく、自在に境界内部の形状と範囲を変形することが可能である点。
介入術
魔術的結合に対してのみ効果を持つ術式や技術。他者もしくは自らの放った魔術的結合に対して反射・反転・減衰・封魔・障壁・切断などの術式を流入もしくは書き換えを行う。
魔術的結合は術者と媒体、そして魔術の対象との関連性を結ぶものであり、魔力によって紡がれる言葉の紐で、魔術の本体である『コード』という文章が書かれている。現代魔術においてはコードは複数の術式とそれを繋ぐ文章、魔術法則付与術式で構成されている。それは複数もしくは単一の言語で示されているが魔術法則付与術式を紡ぐ言語は(基本言語)とされ、介入術でその部分が改変されるとほとんどの魔術は機能が停止する。故に介入術をする際は基本言語が何かを判別する必要がある。魔術的結合の『コード』は結合に近づくほど知覚しやすい。
基本的に介入術の利用には対象の術式の言語とほぼ同一の言語を利用し、魔力的に優位である必要がある。魔力的に優位とは対象の術式の消費魔力及び術式自体の持つ魔力を超えた魔力を術式もしくは術者が持つ必要がある。ゆえに、複数言語や複数の術式を利用した現代魔術は介入が難しく、更に高度な使い手は防護術や物理的に魔術的結合を造る、人間の反応不可能な速度での結合の投射など介入に対して対策を行うため、簡易的な術式や古典的な術式への対処以外では達人以外利用することは少ない。
介入術は一種の『魔術法則付与術式』とも考えられている。外部から法則を注入するのが介入術とされている。
・魔術結合置換術
対象魔術における魔術結合を変化させる。これは効果を対象の結合に上書きする術式であるが結合の言語と同一の言語を以て上書きする必要がある上に、上書きする箇所は結合コード内の位置を正確に指定する必要がある。したがって対象となる術式を習得しているか、メカニズムを感知・推理する必要がある。
・反射術
魔術結合を反射する術式。古代から多くの呪術師や魔術師がこの反射術を開発してきた。最も一般的な術式。
・反転術
魔術的性質を反転する。情報術においては効果が意味的に反転、物理魔術は現象が反転。反転コードを魔術的結合に流入する術式だがコードが正確に効果を発揮しない場合など扱いに関して難がある。既に存在する術式にこの術式を付加することで逆転した効果の術を開発することができる。これは現代魔術理論以前にも古典的に観られた手法である。
・減衰術
魔術効果を減衰・減少させる。対象の術式の結合を別の同一言語、近隣言語の結合を混ぜ、魔力を減衰させる術式。
・魔術結合保護術
魔術結合を封じ込める。ある術式の結合の上から保護術式で覆うことで、介入の難易度を向上させる。
・封魔術
魔術的結合のコードに介入し術式の一部、もしくはすべての効果を無力化する。これは呪物や魔術物品の結合などでの応用では一時的に魔術効果を停止する。これは後で解除が可能である。
・障壁術
魔術的な防護を作り出す。結界術派生形。結界術の魔術的結合に対する防衛能力を再現する。内部で効果を発揮する場合結界術とされる。。
・切断術
魔術的結合に介入し術者との結合を断つことで魔術を不発にする。またコードの一部に介入することで能力の一部を不発にする。
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