第一章 資料編

資料:秘匿物品回収報告書【兵器人間ガソリンマン】


秘匿物品回収報告書【増田太郎/兵器人間瓦斯倫男】

担当者:秘匿一課所属 海川有馬/秘匿一課所属 賀茂瀬里奈/秘匿一課所属 鳥羽或人

物品番号:2022041EAjp

物品種別:人体・機械・呪物・魔道機械

物品危険性:不安定・封印可能→不能

魔術種別;複合的呪術:B群神経操作術/A群精神操作術/A群電荷・磁性誘導術/C群力学操作術/C群生体情報変容術/A群霊魂操作術

秘匿物品強度:核分裂級→無害

秘匿物品処理:魔界府篠田重工産業博物館所蔵処分

物品通称:瓦斯倫男(ガソリンマン)

物品外観;基本は大日本帝国陸軍少尉増田太郎氏の遺体。頭部、両腕、両脚、胸部の一部が機械化。頭部はヘルメット状、鋼鉄製の脳髄と連結した機械と合金製の差し歯、および咬合補助の鉄線機構が設けられる。

胸部には小型化された発動機が前面から背面に掛けて貫通している。背骨は発動機の一部に埋め込まれているほか、肩甲骨などは取り払われている。消化器官は全て取り払われ発動機から伸びた内部骨格が人体の形状を保っている。

両腕は同じ機構の義手であり口に含まれた道具の形状を手が再現する機能を持つ。自在に手と道具の状態を切り替えることができることが観察される。また各関節は回転する。脚部は間接の回転機構以外は通例の合金製義肢であることが報告された。(※1)

物品魔術観測:CHI141地点での散発的な核分裂級魔力観測報告が2月8日20時5分~10分の間で三回為され、20時15分には数百メートル先CHI143地点で一回報告された。これ以降の観測も警察資料とほぼ日時と位置が一致する魔力観測報告があったため、2月15日に千葉県警へ捜査引継ぎ指令を通達、当日中に引き継ぎが認可された。物品の特徴から魔力観測装置による計量は必要なしと判断。

物品魔術効能:

①魔力循環機構。本物品の胸部にある小型発動機には乾燥した人間の脳髄が四つ内蔵されているほか、心臓も四つ内蔵されている。また、血文字の魔術的結合が儀式によって施されており、これはA群霊魂操作術に分類される術式とB群神経操作術、A群精神操作術の複合術式が刻まれており、霊魂操作によって小型発動機内部に魔力で形成された霊魂を循環させ、全身に魔力を巡らせ、消費した魔力を霊魂体によってなるべく吸収する機構を成立させている。更に霊魂体自体も魔力を微弱ながら生成するため、長期の魔力維持が可能になり少ない人工的な手法で呪物を作成している。また、神経操作術と精神操作術の触媒として霊魂体も利用されているため、これらに残留する記憶情報を基に本物品に『夢』のような幻覚を見せることで凶暴化と鎮静化を制御できるようにしている。(※2)

②再現機構。本物品は頭部にある口に何らかの道具を挿入し咀嚼、嚥下することで、手をその吸収した道具似た形状、似た効能を持つ姿に変化させる。道具は全てを咀嚼・嚥下する必要はなく、その一部分で良い。そのため、飛行機の残骸やジェットエンジンの部品を食べることでその性能を再現できる。これは東南アジアに広く分布する形態模写の信仰に関わる呪術が複数援用されており、本物品口内に刻まれたと思われる術式である。その正確な組成は残骸からは不明。(※2)

③関節の回転。本物品の主要な間接は360度の回転機能を有する。また、その回転の勢いはレシプロ機の馬力に等しいと推定される。発動機と各関節に渡って刻まれた術式であることが想定され、その一部は発動機に刻まれており、発動機の持つ本来の性能を再現するインドシナ半島方面の形態模写術式の様相が見られた。(※2)

回収経緯・概要:2月16日千葉県警の報告と魔力観測に基づき、この件を一課預かりとして、秘匿一課課長は課員海川有馬、賀茂瀬里奈、鳥羽或人に担当を指名。同日13時30分より捜査が開始された。14時35分ごろ移動中に本物品の襲撃を受ける。襲撃の際本物品を操作していると思しき違法術師を発見。本物品と魔術師はそれぞれ逃走。15時45分千葉県船山市内で本物品と接触、本物品は逃走、逃走には近隣に出現した先述の違法術師が関連。17時10分、船山市山林にて先述の違法術師と本物品、そして違法団体『隠者の薔薇』大幹部団黄金の教示『栄光のジュン』と接敵、戦闘に至る。17時12分、鳥羽或人による魔術により『栄光のジュン』は撤退。17時15分、本物品の暴走により違法術師は死亡。

 事後調査により違法術師は違法傭兵団体『アーネンエルベ』の一員と判明(※3)。17時18分、本物品の回収、無力化に成功。同時に本物品の魔術は不能化。18時50分護送完了。2月17日13時15分篠田重工産業博物館へ移送(※4)。

※1:外部資料、篠田重工産業博物館学芸員2022041EAjp観察報告に記載。

※2:外部資料、篠田重工博物館研究員2022041EAjp報告に記載。

※3:外部資料、2022041EAjp事後調査報告に記載。

※4:本物品の所有権に関する篠田重工の請願に関する報告は篠田重工秘密物品移譲請願報告2022216に詳細が記載。

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