第24話 持ち掛け

ルドラさん率いる『戦勝の法則』の会議室には、緊張と期待が入り混じる雰囲気が漂っていた。


双頭龍討伐に出かけたS級パーティーの帰りを待つ時間は長く感じ、俺達と、ルドラさんは互いに短い言葉を交わしながらも、心の中では無事を祈っていた。


やがて、会議室のドアがゆっくりと開き、S級パーティーのメンバーが姿を現した。


彼らの顔には疲労の色が見えるものの、安堵の表情も浮かんでいた。


『真夜中の太陽』のリーダーであるスカーレットが、一歩一歩力強く歩み寄りながら言った。


「ギルドマスター、お待たせしました。双頭龍は討伐しました。」


彼女の声には、勝利の喜びと共に疲れがにじんでいた。


ルドラさんは穏やかに微笑み、感謝の意を表した。


「皆、お疲れ様。では詳細を聞かせてもらえるか。」


彼女は頷き、「では、ここは私が」と『氷帝の覇者』のリーダー、グレイが討伐の経過や戦闘の詳細を報告し始めた。


彼らの報告によると、双頭龍は予想以上に強敵であったが、メンバーの連携と戦術によって無事に討伐することができたとのことだった。


「ヤツの表面の鱗は思いの外硬く、普通の攻撃では刃が通らなかったので彼女、スカーレットの"神之片鱗"を使用しました」


ルドラさんは少し目を見開いてから頷き、「報告感謝します。皆さんの奮闘があったからこそ、この危機を乗り越えることができたと思います」と称賛した。


「報酬は後程渡すので、まずは十分な休息を取ってください。」


ルドラさんは一同に向けて指示を出した。


会議室内には、討伐の成功を祝う静かな安堵感が広がった。


―――――――――――――――

翌日の朝、俺は再びルドラさんに呼び出された。


何故か俺だけ。


そしてギルド内を奥に進んで、会議室の扉を開けた。


「おっ、来た来た」


すると目の前に背が180cm程ある筋骨粒々の男が立っていた。


「えっ、アシスさん!?」


2年前のイレギュラーから救ってくれた人だ。


「でもなんでここにアシスさんが?」


するとギィと扉が開いてルドラさんが入ってきた。


「やぁ、おはよう。二人とも早いな」


ルドラさんが会議室に入ると、彼は片手上げて軽く微笑みながら挨拶した。


その時、ルドラはアシスに向かって頷いた。


そして左側にいるヤクモの方へ目を向けた。


「ヤクモくん、少し時間をいただけますか? あなたにお伝えしたいことがあります。」


ヤクモは頷き、ゆっくりと椅子に近づいて腰掛けた。


アシスさんはルドラさんの隣に腰掛けた。


「実は、最近の双頭龍討伐の成功を受けて、我々のギルド内で更なる連携と強化が必要だと考えています。そこで、あなたに提案があるんです。」


ルドラさんは一瞬言葉を止めてから、続けた。


「私達のギルドの強化には、より高いレベルの戦術やスキルが求められると感じています。それに伴い、あなたにもレベルアップを果たしてもらいたいと思っているんです。」


俺は驚きながらも、興味津々で耳を傾けた。


「レベルアップ.....ですか?」


ルドラさんが言葉を補う。


「私達のギルドの強化の一環として、才がありそうな方をとことん鍛えて最終的には"神之片鱗"を使えるところまで持っていく、というものです。」


―――神之片鱗。


S級パーティーを待っていた間にルドラさんから教えてもらったものだ......。


たしか、才能を持つ者が、厳しい修業の末に会得する神の言霊の一部を具象化した武器.....だったっけ。


俺は驚きながらも、興奮を隠せなかった。


「そこで神之片鱗を使える方々の協力のもと、指導を始めたいと思っています。」


ルドラさんは説明を続けた。


「ヤクモ君の担当はアシスさんにしてもらうことになりました。因みにツルギ君も別の方からの指導を受けるはずです」


「たとえ、神之片鱗が使えなかったとしてもこの特訓は意味あるものになると思います。」


「どうですか?やってみる価値は十分にあると思います」


俺は深呼吸しながら考えた。


ルドラさんが提案することは確かに大きなもので、それに応えることで自分自身も大きく成長できるチャンスだと感じた。


「わかりました。これから全力で取り組みますので、よろしくお願いします。」


ルドラさんとアシスさんは満足そうに頷き、これからの計画や詳細についての話し合いが始まった。


会議室の空気は、これから始まる新たな挑戦に向けた前向きなエネルギーで満ちていた。


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(リメイク日1/4)

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