第19話 その先へ

隠し扉の先を注意しながら進んでいると大広間のような場所に出た。


円柱のような大きな場所で天井の高さは20m位ありそうだ。


「なんだ、ここは…?」


急に広い空間が出てきたので俺は奇妙さを感じた。


そう思っていた瞬間、俺達の足元に20m程の大きさの紫色にあやしく光る魔法陣が現れた。


「――ッ!?何だコレは……!?」


「これは……転移魔法陣!?」


そうツルギが呟いた瞬間、俺たちは紫色の光に包まれ、気が付いたら目の前の景色が変わっていた。


そこは無数で強大な白い柱に支えられた広大で神殿のような場所だった。


柱の1本1本が直径3mはあり、規則正しく一定間隔で柱が並んでいる。


天井までの高さは30mは余裕で越えてそうだ。


地面は大理石でできているのか、平らで綺麗なものである。


どこか荘厳さを感じさせる空間だった。


「――ここは、どこだ…?」


「……どうやら僕たちは回避不可能のトラップに引っかかってしまったらしいな…」


「マジか……それにしても、何だ、この暑さは?」


「暑さ?僕は逆に寒さを感じるんだけど……」


不思議だと思った俺たちは神殿の奥のほうを見た。


「――ハハッ、コイツが原因か…」


俺は乾いた笑い声を出してそう言った。


何せ、そこにいたのは体長30m、2つの頭と長い首、鋭い牙と漆黒の眼の化け物。


――【神殿のり人】の異名を持つモンスター”双頭龍 ひょうえん”だったからだ。


「ガァァァァァァァァァァァ‼」


咆哮とともに壮絶な殺気が俺達に叩きつけられた。


同時に赤い方の頭がガパッと口を開き火炎放射を放ってきた。


俺とツルギは素早くそのから飛び退き反撃を開始した。


「『磁力ネオジム』ッ‼」


俺はヤツの頭と地面を別の極にし、頭をたたきつけた。


そこにツルギの技が繰り出された。


白蓮びゃくれんつるぎ流――雷轟らいごうッ‼」


雷を纏った刀でツルギは真向まっこう切りをし、刀を上段から振り下ろした。


その技は白蓮劔流の中でも最上位クラスの重さを持ち、かつ、単体の敵専用の技だ。


この技を食らった者は、タダでは済まないだろう。


だが、この双頭龍は普通ではなかった。


ヤツの頭に刀身が届いた瞬間、刀身が砕け散ったのだ。


「――ッ!?」


雷轟の技の重さと龍の鱗の硬さがぶつかり合ったことで刀に強い振動が伝わり、耐えられなくなったのだろう。


「クッ……今までのモンスターとは硬さが段違いだな」


得物を失ったツルギはすぐさまバックステップで龍から離れた。


一時的に『磁力ネオジム』で首を下に押さえつけられていた氷炎ひょうえんはのっそりと首をあげた。


「ヤクモ!どうするっ…?」


刀身が半分ほどになった刀を持つツルギが俺に言った。


俺は腰にげていた片手剣をツルギのほうに投げ渡した。


「ツルギの刀はもう使えないだろう?だから俺のをッ」


「――‼助かるッ…」


そして俺が投げた片手剣をツルギは持ち直した。


「ツルギはできるだけ時間を稼いでほしい!!」


「――何か作戦があるんだな、分かった…だけど、そう持たないと思う」


「大丈夫だ……俺達はコイツを倒すんじゃなくて、この戦いから一旦逃れることが第一だから!!」


「承知ッ――」


そう言ってツルギは『身体能力強化』を使って龍のほうに走っていった。


――今からやることは結構な集中力がいる……磁力の核心を掴んだ俺でも出来るかどうか分からない。


だけど、この絶望的状況をどうにかするには、コレしかない‼


そして俺は龍の真上の天井に向かって手を伸ばした。


「『磁力ネオジム』ッ」


天井と地面を別の極にして、あの龍に、落ちてくる瓦礫を当て、目くらましをし、その間に俺たちはヤツから離れるという魂胆だ。


だが、そう簡単にいくわけもなく、天井はなかなか崩れて落ちてこなかった。


――やっぱり、この神殿に使われている資材は普通のダンジョンの資材よりも何十倍の硬度をもつのか……


ならば、磁力をコントロールし、狙うところを1ヵ所に絞ってそこを落としてやる。


磁力ネオジム』の磁力を初っ端なから出力最大にしてしまうと、コントロール出来なくなってしまうので、始めは弱く、徐々に強くしていく順で。


「『磁力ネオジム』ッ」


ここからのヤクモは己の集中力との闘いに専念したのだった……


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リメイク日(2024 12/16)

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2024年12月22日 17:04 毎日 17:04

【6400PV ♡300感謝!!】外れスキル『磁力』持ちの俺は追放された後覚醒する 朧月アーク @obiroduki-yakumo

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