第9話 使いこなせれば

「はぁ。マジで何だよこの力……」


驚きと疲労感で部屋に入ったとたんに脱力感に襲われた。


覚醒とか急に言われてもなんだよなぁ。


でも使ってみた力はホンモノで今でもよくわからない感覚になる。


うまく使いこなせれば以前の俺よりも圧倒的に強くなるだろうな……


――よし、目標を決めよう。目標はそうだな……


この覚醒したスキルを使いこなせるまで鍛えて強くなる、とかどうだろう。今の俺にできることはそれくらいだ。


覚醒したって使いこなせなければ宝の持ち腐れ。だったら徹底的に鍛えて強くなってやる。


そう決心した俺はゆっくりと目を閉じ、スイッチを切るように頭の中から全ての灯りを消しさって闇の中に心を埋めた。


―――――――――――――――

次の日、俺はスキルのコントロールを習得するべく、さっそく近くのダンジョンに来ていた。


昨日使ってみた感じ、磁力が上がっててコントロールできないんじゃないのかって思ったからだ。


早速、俺はその辺に転がっている小石に向かってスキルを使ってみる。


「『磁力ネオジム』」


小石をN極に奥の壁をS極にした。


この動作めんどいからオート(見ただけでどれを何極にするか)にできればしたいんだけどね。


※現在はいちいち脳内でコレが何極、コレは何極と決めているのでスキルを使うまで時間がかかる


ステータス画面からだったら設定できるんかな。


そう思い、開いて確認してみたら………


驚くことに出来た。あっさりと。自身に近いほうがN極となるような設定にしておいた。


毎回頭ん中で考えてから実行する手間があったけど、これで解消されたな。


設定が終わったので再度『磁力ネオジム』を使用する。


すると案の定、雷光のように小石が壁に打ち付けられした。


「えぇ……消滅したんだけど」


正確には消滅はしていないが、俺はそう感じ取った。


はぁ、やっぱり威力がすごいことになっているな。一回磁力を弱くしてやってみるか……今回はコツンと壁に当ててやる。


まぁ、できればの話だけど。


「『磁力ネオジム』」


……結果は惨敗。見るも無残に霧散した。


小石くん……さよなら、君のことは忘れないよ…………


その後、何回も何十回も俺は試してみたがすべて失敗。


「調節はムズいな。いくらやっても速いまま」


やり方が違うのだろうか、それともコントロールはできないものなのか、よく分からない。


一回、神経を集中させてめっちゃ磁力を弱めて壁に当てるイメージを立ててから、やってみるか。


そのぐらいしか、今俺が思いつくことはない。


心臓の調子を整えるため、俺は時間をかけてゆっくりと深呼吸をする。そして脳内でイメージを膨らませていく。まるで両目で見ているかのように心の中に浮かび上がる。


「『磁力ネオジム』」


俺は目をつぶり、自分の心の奥底を覗き込むような表情でそう言った。今までだったらここでパァンといった感じの音が薄暗いダンジョン内に響き渡った。


けれども今回俺の耳に聞こえてきたのはコツンという小さくて辺りに消えていような音だった。


俺は恐る恐る目を開けた。


音があったほうを見ると小石は無事だった。


「や、やった……のか」


喜びが後から後から心の底から溢れ、心と体を満たした後、外に溢れ出た。


「――よっし!!」


反射的に俺はガッツポーズをした。


この胸の高鳴りを抑えることはのち数分間は出来なかった。


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リメイク日(2024 12/7)

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