第2話 俺っち、ライバルに出会う

 しばしの笑い声、それも途切れて沈黙が病室を覆う。クー子がまた深刻な顔になり、姉の音々ねねは静かに純を見つめている。


「、、姉ちゃん。俺っち、いつ退院出来るかな?」


 純は作り笑いで問いかけた。まだ分からない。今は回復に集中よ、と音々は答えた。


 そして入院から約1週間が過ぎ、集中治療室を出て一般病棟に移った純。首や手はある程度動くものの、指の麻痺が続いている。


 下半身はほとんど動かず、用を足すのに苦労する毎日が続いている。早く良くなりたい、拳法道場に通いたい。純の不満と不安は溢れつつあった。


「坊っちゃん、いけません、お止めになって下さい、、」


 病室の扉が開くと同時に、慌てふためく声が純たちの耳を驚かした。


「ナンセンス。ミーはこの病院の跡取りだぞ!どうして自分の部屋に入ってはいけないのさ!」


 純の病室に突如乱入してきた若者。歳の頃は純と同じ高校生か。フンッと鼻を鳴らしてあたりを見回す若者の手には、小型の機械が握られている。


 ゲーム機を持っていない純は、それが大人気のニンテンドウDSであることを知らない。


「おい、姉ちゃん、あれは、、何だ」


「何かなぁ?姉ちゃん、、あまりメカには詳しくないから。メンゴ、女性が宇宙に行く時代だけどメカニックには弱いのよ。」


 音々は何処か言い訳がましく純の質問に応えた。誰でも一度は見たことがあるゲーム機なのだが。


「何だ、DSを見たことないのかい?信じられないねえ!」


 いけ好かない闖入者がシュールな前髪を掻き上げて冷笑する。すかさずクー子が鋭い目を向ける。純を馬鹿にする輩は許さない、いつだって。


 「ヘイヘイ、そんなに怒らないでよ、レディース。おい、ユー。触ってみたいのか、このニンテンドウDSを。」


 闖入者はDSを純の鼻先に向けてチッと舌打ちした。音々をチラチラ見てもいる。


 「なんだよ、キザ野郎!ゲーム機なんて触りたかねえよ、俺っちは!」


 「ふん、触りたくないんじゃなくて、触れないんじゃないのかい、その身体じゃ。」


 キザはフフンと嘲笑して続けた。


 「やりたかったら、やらせてやるぜ。この格闘ゲーム、ロードバトラー2、バト2を!」


つづく

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