第16話 俺っち、コマンド技を覚える
夢原がコマンド技、
一度目。上手く技が出ない。どうも方向キーの入力がスムーズじゃないようだ。夢原が純を叱咤する。
「固い!固いよ、坊主。指は滑らかに、滑らすように。分かる?さぁもう一回チャレンジ!」
「滑らかに、滑らすように。ようし、、」
純が再度、烈風脚にチャレンジする。また技が出ない。今度は(✕)ボタンが遅いようだ。
いいか、よく見てろと夢原が手本を見せる。コントローラーを握る夢原に酔いどれの顔はない。純とクー子がテレビ画面に釘付けになる。
夢原が操る空手家リョウはレップーキャク、と
「左親指の方向キー入力と右親指でのボタン押し、このタイミングがコマ技を出す基本だ。」
「感覚で覚えろ。考えるな、感じろ、だ。」
夢原の言葉に純は黙って頷く。格ゲーの格言ナノダ、クー子は自分のダジャレにほくそ笑む。
考えるな、感じろ、そう反芻すると純は思い切ってコマ技を入力した。画面の空手家リョウがコマのように回転して蹴りを連発する。
で、出来た!烈風脚、クー子が手を叩く。夢原がニヤリと頬を撫でる。純、初めてのコマ技だ。
やったぜぇ!歓喜した純が叫ぶ。
夕陽が射し込む病室に鳴り響くレップーキャク!の声。他の入院患者の迷惑も顧みず、純の特訓は続く。
これにストップをかけたのは姉の
「純、夢原さんはそろそろ退院の手続きがあるわ。ねぇ、夢原さん。」
「ええ、まあ。」
はい、今日はもうお開きよ、とやや強引に特訓を終わらせる音々。純、かなり上達したんじゃない、すごいね、といいながら夢原に出したお茶を片付ける。
何か言いたげな夢原だったが、それでは失礼とコントローラーを置く。姉ちゃん、もう少しいいだろと純が粘るが取り付く島がない。
帰り際、夢原はドアの所で振り返り、お達者で、と言った。それは音々に言っているように、純には聞こえた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。