第17話 俺っち、花崎と再戦す

 花崎との再戦の日がやって来た。花崎の帰宅に合わせて夕方からのマッチメイクとなったが、いつもどおりドクター花崎と花崎家の執事が同席した。


 純の応援団はクー子と姉の音々ねね。そして同室の患者数人が物見遊山でテレビモニターを囲む。


 キャラ選択画面、純と花崎はそれぞれのファイターを選ぶ。純は空手家のリョウ、花崎はそのライバルのゲン、あたかも二人の関係を投影したかのような選択だ。


「ユー、逃げ出すかと思ってたよ。その点だけは褒めてやる。」


 花崎が挑発してくる。既に闘いは始まっているのだ。後で吠え面をかくなよ、一瞥する純。珍しく冷静だ。


 たとえビデオゲームとはいえ勝負事。少林寺拳法で鍛えた肉体派の純は、ゲーム好きのオタク族なぞに負けるはずがない、そう信じているのだろうか。


 それぞれの応援団が固唾を飲んで見守るなか、ついに再戦の火花が切って落とされた。


 レディー、ファイ!


 花崎が操る空手家ゲンがバックステップで純のキャラ、リョウと距離を開ける。そして得意の飛び道具、気流拳きりゅうけんを放つ。


 純はそれを垂直ジャンプでかわす。また花崎・ゲンが気流拳を放ち、純・リョウがかわす。


 花崎は前回同様に焦れて飛び込んで来る純をジャンピングアッパーカット、飛竜拳ひりゅうけんの餌食にする算段だ。


 このままでは前と同じ展開になる、純はどう打開するのか。その時クー子が叫んだ。純、今ナノダ!


 垂直ジャンプから着地した刹那、純は方向キーを↓↙←と滑らし同時に(✕)を押す。


 「レップーキャク!」


 画面の中のリョウが叫ぶとコマのように回転しゲンとの距離をグッと縮めた。純が初めて対人戦でみせたコマ技に、病室には驚きの歓声がこだました。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る