第10話 俺っち、花崎と対戦する

 そらから純の格ゲー練習の日々が始まった。最初の頃は未だ指の麻痺が残るものの、繰り返しプレイする度に少しづつではあるが、純の腕前は上がっていった。


 主治医のケーシー花崎が定期的に純の病室にやってきた。純の指や身体全般の状態を確認してゲームプレイによるリハビリの効果について、記録を取っているようだ。


 毎日のように見舞いにやってくるクー子がゲーム練習にも色々と世話を焼いてくれた。コンピューターの対戦相手の強さを変えることができたのも、クー子の発見による。


 姉の音々ねねは時折夢中になる二人を諭しながら、そんな様子を静かに見守っていた。そのうち純のキー操作も幾分スムーズになり、手や指の麻痺をさほどには感じ無くなってきている。


 一週間が経ち、いよいよ花崎との勝負の日がやってきた。対戦場所は純の病室。音々、クー子、そしてケーシー花崎と花崎家の執事が観戦に訪れた。


「日乃本クン、ちゃんと練習してきた?いくらド素人だかって容赦しないよ!ゲームに失礼だからね。」


 と、気取った口上を垂れて花崎がプレステ3に電源を入れる。誰かを意識しているのか、良い事言った感のある満足げな表情を浮かべて、コホンと咳払いを一つする。


 音々とクー子は、もっともらしく聞こえるが、実はあまり意味の無い花崎の戯言ざれごとを聞き流して、純ガンバレ!と声援を送る。


 任せとけ!威勢よく純は返してプレイヤーキャラに空手家リョウを選ぶ。花崎は同じく空手家のゲンを選んだ。


 真似すんな、真似ぢゃねえよ、そんなつばぜり合いを交わしながら、純と花崎のロードバトラー2、バト2のゴングがなった。

つづく

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