第11話 俺っち、飛び道具を見切る

 レディー、ファイ!闘いの火蓋は切って落とされた。純が未だ慣れていない手付きでプレイキャラのリョウを前進させると、花崎のゲンはサッと後退した。


 すっ、素早い!移動速度がまるで違う。


「は、花崎、おめぇズルしてねえかぁ!」

 

「何言ってるんだよ、バックステップさ。バト2の基本だ!」


 俺っちはそんなの知らねぇ!と純。それこそ事知ったことじゃないと花崎。マニュアル読めよと突き放す。端からマニュアルなんて無かったよ!とクー子が鋭く指弾する。


 と、その時、花崎のキャラ、ゲンが手から奇妙な波動を出した。


 「喰らえ、気流拳!」


 以前、花崎がDSで使ってみせた殴る蹴るとは異なり、「気」で攻撃する特殊な技。これを花崎は早々から繰り出してきたのだ。ゲンの気流拳が純・リョウの顔面にヒットする。


「痛てぇ!卑怯なことすンだよ!」


 卑怯もクソもあるか、と花崎・ゲンは気流拳を連発する。現実ね~だろこんな技!と、頑固な拳法少年の純。シャラープ!ゲームだッつッてンだろが!と花崎。


 ペシッ、ペシッと花崎・ゲンの気流拳が純・リョウの体力を削っていく。もう体力ゲージがゼロになりそうだ。純危うし!


 その時、


 「純、キーを上に、、」


 の声が何処からか届く。


 分かった姉ちゃん!純はすかさず左指で操作キーの上を押す。すると純リョウは垂直にジャンプして、花崎ゲンの気流拳を見事にかわしたのだった。


 やった!クー子が喝采を送るとケーシー花崎も驚きの表情を見せて唸る。


憤懣ふんまん、悔しさが指の麻痺を忘れさせたのか?OH!ザッツ・リハビリテーション!」


「花崎、お前の技は見切ったゾ!勝負はこれからだッ!」


 病室に純のアジテーションが響き渡った。


つづく

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