第8話 俺っち、格ゲーの初対戦に臨む

「純、リハビリは順調?」


 いつもの穏やかさで音々ねねは純に声をかけたが、何処か咎めるような響きもある。やはり未だゲームリハビリには反対しているようだ。


「今始めたばっか。使い方分かんなくてよぉ。姉ちゃんは知ってる?」


「知ってるも何も、ウチにはずっとゲームなんて無かったでしょ?」


 そう言いながらも音々は純からコントローラーを取り上げると、画面に目を凝らして見当を付けながら、格ゲー「ロードバトラー2」のメニュー画面にたどり着いた。


 Road Battler2!気取ったディスクジョッキー風の声でゲームが始まる。


「ここで好きなキャラを選べばいいみたい。」


 じゃこれにしようかな、純は日本人らしき空手家キャラを選んだ。リョウと言うらしい。自分が少林寺拳法を学んでいるから同じ武道家に親しみを感じたのだ。


 一方で対戦相手はゲーム機側で無作為に選ぶようだ。純にとっての格ゲーデビュー戦は、巨漢の力士との闘いになった。


 左の指でキャラを動かして、右でボタンを押したらきっと何かパンチとか技をやるワヨ、音々に言われるとおり麻痺の残る指でチャレンジする。


 画面の中の空手家は自分の指操作に合わせて右に左に移動し、パンチやキックを繰り出す。これがゲームか、これが格ゲーか。


 純は静かな興奮に包まれていた。


つづく

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