第7話 俺っち、初めてコントローラーを握る

 交通事故による高次機能障害、難しい言い方をすればそうなる。が、純はいずれはこれまでどおり自由に身体を動かせるようになる、そう考えている。


 おかしな流れでゲームのプレイでリハビリをすることになった純、幼馴染のクー子はどこか喜んでいるが、姉の音々ねねはどうやら歓迎していないようだ。


 ゲームリハビリが決まった翌日には最新のゲーム機が運ばれてきた。プレイステーション3だ。ゲーム音痴の純だって名前くらいは知っている。


「日乃本クン、このプレステ3は発売日にはポリスが出動するほどのレベルだったんだよ。」


「ユー、ラッキィだねえ、人気ゲームが出来てさぁ!」


 花崎のヤツ、そんな事を言ってたなぁ。そして捨てゼリフ、一週間後にミーと対戦しよう、格ゲーのロードバトラー2で闘おうと一方的に決めやがった。あのオタク族め。


 まあ、正直何でもいい。こちとら治療費が無料ただにさえなれば何の問題もない。勝とうが負けようが、対戦はテキトーに済ませればいい。


 そうは言うものの、マッタク使えないのは流石に都合が悪いので、一応練習しておくか、と純は初めてプレステに電源を入れた。


 青い画面に不思議と癒やされる起動音、純は生まれて初めてコントローラーを握った。


初めて握るコントローラー、ゲーム機なんてどうせ買って貰えない、だからゲームなんてゼッタイしない。


 そう心に誓った児童クラブの頃、まさか高二でゲーム画面と向き合うことになろうとは。純は複雑で面映ゆいものを心に抱えながら黒いコントローラーを手に取った。


 耳の奥、いや頭の中の後ろ側か、分からない。眉間に闇が広がり何かが去来する。確かに聞こえた、誰かの声、ユニゾンで、、


 「ジュン、、、ジュン、、」


 振り返ると姉の音々ねねが心配そうにこっちを見ていた。そうか、姉ちゃんか。


つづく

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