第5話 俺っち、ドクターから提案される

「あ、その、Dr.パパ、リ、リハビリなんだ!彼、日乃本クンはゲームで指の麻痺を治しているだよ。ミーはそのヘルプさ。」


 さっきまでの高慢さはどこに行ったのか、花崎は取って付けたような言い訳をした。が、無論、純は猛然と反論する。


「オイッ!ドクタースランプ、俺っちはリハビリなんかしてねえ!そんなものいらねえ!」


 純はそう言い放つと身体を起こして健在をアッピールするが、下半身に激痛が走り顔をしかめてしまう。うぅっ、、


「アーユー、オーライ?日乃本クン、先ずは指の麻痺から根気よく治していこうよ!」


 花崎がすかさず言葉を挟み込む。純は痛みに耐えながら、入院なんかしてられねえ、ウチは貧乏ナンダヨ、サッサと退院させろヨと口汚く吠える。


 それを姉の音々ねねは優しく諭す。今は治療に専念すること、そしてお金の心配なんてしなくていいと。


「姉ちゃん、大学辞めてお仕事をするわ。なんでも中高年の耳垢を取ってあげると巨万の富を築けるアルバイトもあるみたいなの。」


「駄目よ、お姉さん!お姉さんには古代クレタ文字を解明する大きな夢があるじゃないのサ!大学を辞めちゃダメ。ダメよダメダメ。」


 今どき珍しい人情派のJK、クー子が家族のマターに割って入ると、にわかに温かいムードが室内に漂う。


 そのやり取りをフムフムと聞いていたDr.ケーシー花崎はその怜悧な頭で弾いていた。


(成程、ゲームを使ったリハビリテーション、これは新しい研究になるかも知れぬ。上手くいけばお上*とゲーム産業がコラボレーションして、官民連携の新たな金脈が生まれるやも、、)


[註]お上、ここでは厚生労働省とその眷属を指す


 「ものは相談だが、少年クランケとそのご家族、このゲームリハにモニターとして協力してくれたら、治療費は要りませんよ。治療費はお上からの補助金で補てんするのでご安心を。」


つづく

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