第3話 俺っち、格ゲーを批判する

「ファイティングロードをまっしぐら、格闘ゲームの最高峰、ロードバトラー2!」


 まるで広告のように叫ぶとキザ君はユーも見たいんだろとゲーム機に電源を入れた。クー子は見せたいくせにと独りごちた。


 ミーはこのキャラにハマってンだよねえ!と言ってキザは赤い道衣の空手家を選んだ。対戦相手には不思議な髪型をしたアーミーシャツの男を選んだ。


「キャラってなんだよ?クー子(ヒソヒソ)。」 


「キャラクターのことサ、全く何にも知ンないんだから(ヒソヒソ)。」


「そのキャラクターて何だよ?(ヒソヒソ)」


「ユー達、何ヒソヒソやってんの。ちゃんとミーのプレイを見てなさいよ!」


 そう言うと、キザはパンチ、キックと巧みにキャラクターを操り、変な髪型ソルジャーを一蹴して見せた。


 どうだ、と言わんばかりキザが純を見下ろした時、純が猛然と注文を付けた。


「お前のキャラクター、変だゾ!空手でも拳法でも、本当はそんな技、出来っこねえぞ!」


 そんな問題ではない、これはゲームだからと言いそうになった時、キザはどこか負けた気がして口をつぐんでしまった。純の格ゲー批判は止まらない。


 「だいたい、そんなカメハメ波みたいなの*、現実に誰が出せるンだよ!」


[註]本作中の格闘ゲーム、ロードバトラー2のキャラクターが念動力によって波動を繰り出す技を指している


「マッタク、格闘技もしたことのない引きこもりのオタク族はこれだからなぁ!」


 ゲームやマンガ等々、二次元の世界に現実世界のモノサシを持ち込むという不粋ながら破壊力タップリの荒業にキザ君は二の句が告げない。


 しかし、そんなキザ君に助け舟を出したのは以外な人物だった。


「違うわ、純。念動力は存在するのよ、ワンインチパンチなら純も聞いたことがあるでしょ?」


 何とその言葉の主は姉の音々ねねだった。


「体内の波動、つまり"気"の攻撃は現実にあるのよ。ゲームは非現実じゃない。」


「ね、姉ちゃん、何でこんな奴の肩持つンだよ!」


 あ、姉ちゃん余計なこと言っちゃったねと音々はメンゴ、メンゴと言いながら手のひらで自分の顔をあおいで見せた。


 しかし、とっさの事とはいえ、何故、音々が急に格ゲーを擁護したのか。クー子は不審に思った。


「ほう、こちらのレディース、よく分かってらっしゃる!おい、空手バカ一代、ケチつけるなら、バト2やってみろよ!」


 音々の言に蘇生した打たれ弱いブルジョア、キザ君がニンテンドーDSを純に突きつけた。


つづく

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