第14話 俺っち、酔いどれと会う

 格ゲーデビュー戦で花崎に惨敗した純。しかしリベンジの糸口を見い出し、三日後に再戦を約した。


 花崎攻略の要点はコマンド技の会得。あの気流拳だの飛竜拳だのを覚えさえすればいい。そうすればきっと花崎と伍することが出来る。


 そう思ってクー子と特訓に入ったが何せコマンド技のやり方が分からない。クー子が花崎にネゴしてバト2のマニュアルを手に入れたが、それは勘所が黒塗りされたコピーだった。


 花崎はゲーム購入者にしか全面開示できない、著作権の保護だとヨクワカラナイ主張の強弁してクー子を煙に巻いてしまった。


 黒塗りされたコマンド技のやり方を確認できないか、火であぶろうとするチャレンジグなクー子。懐かしい理科の実験か?果汁で書いた文字の要領だろうが、もちろん何の効果もない。


 途方に暮れる純たちは気晴らしに病院一階のホールにやって来た。ここにはコンビニがあり、別棟のリハビリ患者らも利用している。


 車椅子に乗っている純とソファに座る姉の音々ねねは、クー子が飲み物を買って来るのを待っていた。


 するとコンビニから大きな怒鳴り声が響く。なんでバーボンがないんだと難癖をつける客がいるようだ。


 病院ですからアルコールは置けないんですと店員、だったら消毒用のも撤去しろよと難癖オジサン。


 そうなってくるとレジに並んでいた正義派クー子が黙っていられない。止めなさいよ、店員サンが困っているノダ、とお説教をぶつ。


 店員も諭す。夢原サン、明日から新しい病院でリハビリなんでしょ、お酒ばっかり飲んでちゃ駄目よ。


 ナンダヨ、うるさい女どもだと罵った時、アル中の難癖男、夢原の目にクー子が持っていたコピーが目に入った。


「お、お嬢ちゃん、それはバト2のマニュアルじゃあねえのか?」


「そうナノじゃ、オジサンよく知ってるね。でも大事なとこが隠されていて、困ったことにコマンド技が分からないノダ。」


「そうか。コマンド技が知りたいか。お、俺は明日、ここから追い出される。置き土産だ、格ゲー、教えてやろうか?」


「え、アル中オジサン、格ゲーできるンですか?おーい、純。アルのオジサマがバト2、教えてくれるって。」


 そうクー子が純に伝えた時、夢原と音々の目が合い、飲んだくれのニヤけた表情がサッと消え、真顔に一変した。反射的に目を逸らす音々。


 美人の音々によく起きる、純やクー子にとって見飽きた光景がそこにあった。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る