第16話 緊急事態

「え、あの元気が取り柄な黒羽根先輩がすか?」


思わず高城の口から驚きの声が出る。俺も同意見だし、青峰さんも驚いた表情をしている。


「ああ、なんでも数日前から頭が痛いとはずっと言っていたんだがな……一昨日早退してから一切音沙汰すらないんだよな」

「とりあえず明日もう一度連絡してみるが……」神流先輩が不安そうに話しているとき、はやりのJ-POPが流れてくる。


紅林先輩が慌てて携帯を取り出し、申し訳なさそうに電話に出る。


「あ、ごめん私だ。もしもし……あ、うん、今部屋だから、スピーカーするわ」


そして紅林先輩がスピーカーにすると、ちょうど今話題の人の声が聞こえてきた


「皆さんお疲れ様です。黒羽根ですぅ……」

「おう、大丈夫か?調子悪いならゆっくり休んで大丈夫だぞ」


さっと気遣える当たり、もはや超人なんよなぁ


「神流くんありがとね……遥ちゃんと……今他にはだれがいる……?」

「あ、お疲れ様です。柚木です。あと高城と青峰さんが」

「あ、じゃあほとんどみんないるね……」


行きたかったなぁ……と聞こえた気がした。

「実はね、私今病院なの」


その発言に、今度は先輩たちも驚く

「ああごめん心配しないで、そんな大ごとじゃないから」


そして黒羽根先輩の話を聞くと、どうやら数日前からはやり病を少しこじらせてしまい、改めて検査したところ数日間入院を勧められたらしい


「そんなわけでこの大事な時期に申し訳ないんだけど……お願いしてもいいかな?」

「ああ、安心して治療に専念してくれ。お大事に」


そういって神流先輩が電話の終了ボタンを押す。


「むぅ……どうするか」

「あ、じゃあ俺一年の数学みましょうか?」

「あー……じゃあすまんが、頼む」

本来生物を専門としている高城だが、数学も得意とのことなので一年生のほうは代打で見ることになった。

「問題は二年なんだよな……本当なら俺が行きたいんだが……」

「いや……先輩も今手一杯じゃないですか……」

「そうなんだよな……」


なんせ今先輩は一年の現代社会と三年の世界史と演習、そこに二年の世界史もオブザーバー参加しているという状態なので正直オーバーワークもオーバーワークだ


「かといって私や柚木は数学得意じゃないしな……」

「私も……正直数学は教えられる自信ないです……」


俺や紅林先輩や青峰さんは三人ともそこまで数学が得意ではないので教えることが出来ない


「とりあえず、一旦今日はお開きにするぞ……また数学の件は後日考えるとするから……」



そして問題を先送りにして今日はお開きになった。

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