第2話 転校生
電子音が聞こえる
目が覚めると俺は床に突っ伏していた。
アラームを止めると、昨日の投稿が目に入った。
「嘘……だったらよかったのに……」
返信欄は閉じられている。
泣きそうになりながら着替え、登校する。
一人暮らしなので今の姿を親に見られずに済むのは救いだろうか
教室に入ると、見慣れない机が一つ増えていた。
「何があったの?」
「さぁ」
「やべーぞなんか転校生がくるらしいぞ」
近くの会話へ聞き耳を立てると、転校生がくると大騒ぎだ。
チャイムが鳴り、担任の大羽先生が入ってくる。体育教師でありガタイがいいが
面倒見が良く、クラスの生徒から兄貴分として慕われている。
「おはようさん、今日は察してるかもしれないがな、転校生がくるぞ」
教室が一気に騒がしくなる、まるでアーティストのMCのように
HRぐらい寝たいんだ……俺は
そんなわけで流れに逆行するように俺は机に顔を向ける
「落ち着けー!」
大羽先生が手を叩き、教室が静まる
「それじゃあ、入ってきてもらうぞー」
生徒の視線が一気に扉に集まる。
ガラっと教室の扉が開き、うちの高校の制服をきた人が入ってくる。
「女子だ!」
「すげー美人!」
さすがに気になったので俺も頭を上げて転校生の顔を見る
綺麗な黒髪をポニーテールにしている輪郭がくっきりしている女子だ……確かに皆が言うように美人だ……ってちょっと待て
「
笑顔で自己紹介するその姿にクラスが熱狂に包まれる。だがしかし俺はそれどころじゃなかった。
自己紹介の声も、顔立ちも、その笑顔も
卒業した、あいりすそのものだったからだ。
「それじゃあ御巫の席はそこなー。みんな仲良くしてなー」
やはり空いている席がそうだったのだろう。御巫由花と呼ばれた女子が俺の隣の席につく。
「よろしくね、君の名前は?」
俺はふと冷静になる。
そりゃそうだ、冷静に考えてそんなことはないはずだ。
よく似た他人だろう。
「詩音……柚月詩音」
それはそれとして現実の女子と話すのは久々だ……
「柚月君ね……よろしくねっ」
あー……くそ
御巫さんのその笑顔は……まさにあいりすそのものだった。
あいりすはいないという寂しさ
別人なんだと頭では理解していても、どこか重ねてしまう。
そんなこんなでHRが終わると御巫さんの近くに人が集まる。
転校生あるあるだがいろんなことが聞かれるのだろう。
俺は居づらいのでスッとその場を離れ廊下のロッカーに出る。
御巫さんとあいりすは別人なんだ。御巫さんは俺のことなんて一ミリも知らないんだから。俺はあんな美人さんと関わりなんてないんだから……
そんなことを考えていたら1限目が始まりそうだったので慌てて席に戻る。
因みにその日一日、ずっと御巫さんの周りに人が集まるのでいづらかったのはご愛嬌だ。
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