第12話 過去

今話は多少の胸糞要素が含まれます。お気を付けください










柚月詩音、どこにでもいる15歳の高校一年生だ

但し、俺には唯一無二の彼女がいる。


「おはよ、詩音」

「そっちこそおはよ、綾音」


まるで小学生のような見た目をしている女子、

椎野綾音しいのあやね、俺の大好きな彼女だ



「一現授業なんだっけ?英文法?」

「いや、コミュ英だな」

「そっか、ありがと」

会話自体はそっけないが、仲の良いカップルだと自覚していた。

「おう柚木夫婦、今日も仲いいな」

「だから夫婦じゃないってば」

周りも実際俺らをバカップルのように扱っていた。まぁ俺は否定しているんだが。


この時はこの関係が永遠に続くものだと思っていた。


「そういえばさ、綾音」

「ん?何?」

「今週の土曜日暇?」

「あー無理、部活」

「そっか……」


デートに……と思っていたが、部活なら仕方ないか。











土曜日、デートの予定がなくなったので俺は家で転がっていたのだが……


「やべぇ……腹減った」


普段ならばある程度ストックしておくのだがたまたま今日に限って食料が何もなかったのだ。


「飯……食いに行くか」


俺は自転車を漕ぎ、近くのイオンのフードコートに立ち寄る。


「何喰うか……パスタにするかラーメンにするか……」


そんなことを考えつつ、先にフードコートの席を取りに行ったとき、遠くに見慣れた姿を見かけた。


(あれ……綾音じゃん、部活なくなったんかな?)

声をかけようと思ったとき、俺は衝撃の光景を見てしまった。


綾音が知らない背の高い男性と手をつないで歩いていたのだ


(まさか……まさかなぁ)


俺は嘘だと思い、よく見なおした。

しかし、綾音は綾音だった。


その日は、飯を食うどころではなかった。




月曜日

土曜日の衝撃の光景を見てしまった俺は、恐る恐る教室に入る


「あれ?柚木、今日は嫁は?」


「ああいや……」俺は言葉を濁す


するとその時、隣のクラスの女子から俺を呼ぶ連絡があった。


教室の外に出ると、綾音と同じぐらいの身長の女子がいた。

「君が……柚木君?」

「ああ……そうだけど君は?」

「私は青峰光、綾音の友人よ」


綾音の友人……俺は少し身構える。

向こうもうっすらと何かあったのに気が付いたらしい。

「ちょっとお昼休み、綾音の件で生徒会室に来てもらえないかしら?」

やはり……か

「わかった。昼休みだな」

「ええ、後申し訳ないんだけど……このことは綾音に言わないでほしいの」

「……わかった。約束しよう」


会話が終わった直後、綾音が登校してきた。


「柚木くん、ちょっといい?」

綾音が普段の感じで俺に尋ねる


「う……ああ、わかった」

なんでだろう、とてつもなく嫌な予感がするのは気のせいだろうか。



「実はね、別かれてほしいの」


飛んできた言葉は、ある種想定していた最悪の結果だった。


「えっ……」

いや、理由は何となく察している。

恐らく土曜日にいた人は新しい彼氏だろう

なので俺は用済み……ということだろうか


「それじゃ」


綾音はそういって去っていった。


正直俺はそのあとどうしたのか全く覚えがない。


次に覚えているのは、生徒会室に行ったことだ。


「……遅かったか、とりあえず入って」


俺の顔を見て青峰さんは悔しがる。まぁ恐らく俺の状態は一番顔に出ていたからな……


俺が入ると生徒会室の鍵を閉める


「柚木くん、はっきり言うね、これから話すことは……あなたを壊してしまうかもしれない。」

俺は、目で続けるよう送る


「もし、今の状態で聞きたくなかったり……綾音との思い出を綺麗なままで終わりたいなら、扉を開けて帰ってもいい。それは柚木君の判断に任すよ」


「いや……聞かせてくれ」

俺は覚悟を決める


「わかった……本当にいいんだね?」


その問いに俺は強くうなずく。


「そっか……じゃあまず初めに、綾音は浮気しているの」


やはり……か

「ああ、それはしっている……一昨日みたから」

やはり昨日の男性は……


「そうか……それは恐らく……背の高い人間だった?」

「ああ」

「なら……まだ救いだったね」

「どういうことだ?」

俺は思わず尋ね返す。

「綾音は……今6股してるのさ、君も含めてね」


俺は思わず呆気にとられる。


は?6股?


「嘘だと思いたいのはよくわかる……だが、まぎれもない事実なんだ」

すると青峰さんは自身の携帯を弄り、数枚のスクショを見せる


そこには、複数人の男と映っている、俺の知りたくなかった綾音の姿があった

上は40代ぐらいのおっさん、うちの一枚には土曜日に見た男性もいた。


「私も……正直驚いてるし、困惑している。」

青峰さんも困惑の表情を浮かべている……が俺はそれどころではなかった。


「なんで……」

涙がボロボロあふれてくる。

綾音との思い出が……どんどん甦る


「柚木君……これは私の個人的な付き合いから思うのだが……あいつはそういう人間なのかもしれない。」


ううぅ……ああぁぁ……


「綾音の友人だからこそ、柚木君に最大の謝罪を、させてほしい。あの馬鹿娘を……止めれなくて済まなかった」


深々と謝る青峰。


「この部屋のカギは……君に預けておく、先生にはうまくごまかしておくから、思いをすべて吐き出してくれ……」


そういうと青峰は生徒会室を出た。


「うああああああああああああっ……そんな……そんなぁああああ……」



後には俺のむせび泣く声だけが、こだました。




その後、綾音は学校をやめた。

理由は知らない。否、知りたくすらない。


そして俺は人との交流を減らしていった。

もう二度と同じ思いをしたくないから

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