第19話 お泊まり

「由花…ごめん今なんて?」

俺は恐る恐る聞き返す


「だから、私今日はしぃ君のお家に泊まる気で来たから大丈夫だよ!」


待って待って聞いてない聞いてない

「えーと、由花さん?」


思わずさん付けになってしまう


「うん?」

「親は……大丈夫なの?」


由花の家族個性は聞いたことがないが……

まぁ恐らく実家暮らしだろう

なのでさすがに両親からストップが出ると思っているんだが……


「大丈夫!私も一人暮らしだから!


そういって笑う由花に、俺は頭を抱えるしかなかった


「ちょっと待って……」

よろよろと俺は椅子代わりのベッドに腰掛け、これからどうしようか思案する。

由花も横に腰掛けるが俺はそんな余裕がなかった。


ケース1

どうにかして由花を帰す

これは難しいか、何せ本人が泊まる気満々なのだ


ケース2

由花を泊まらせ、俺はよそに泊まる

出来ないことはないがホテルのあるところまで出るには遠すぎる



駄目だ、詰んでる

そんなことを考えていると、不意に「バン」と音がして部屋の電気が消える。


「ん?ブレーカーでも落ちたか?」


落ちるようなことしていないんだが……

とりあえず、ブレーカーを上げに行くためにベッドから立ち上がろうとしたが、立ち上がれない

否、何かにつかまれている状態になっている気がする。



とりあえず持っていたスマホをつけ腰を照らすと、


俺にしがみつき震えている由花の姿があった。


ガクブルと小動物のようにおびえ震え、しがみつく由花


その姿はまるで小動物のようで、そしてどこか儚くて


ぎゅっと俺も由花を抱きしめた


ずっと、この幸せが続けばいいのに


そう思いながら……





しばらくすると電気がまた点灯した。

因みに後で知ったのだが、どうやら断続的に停電があったらしい。

そっと、由花を抱きしめる手を離し、由花の頭をなでる

未だ、由花は何かにおびえているが、それはきっと時が解決してくれるだろう。


「けど……これで帰すわけにはいかんな……」

大好きな推しで、俺の彼女な由花を

一人にはできない。俺の第六感ともいうべき何かが、このまま帰すのはまずいと早鐘を鳴らす

なので、とりあえず収納から布団を取り出そうと立ち上がった時、不意に由花は口を開いた


「ねぇ……しぃくん」

「どうした?」

「しぃくんは……ずっといてくれる?」


ずっと……ずっとか


「ああ、由花に出会えた日からずっと、俺は一緒にいるよ」


俺が大人になって、歳を取って、老人になったとしても


ずっと、俺は由花の隣にいたい

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推しが卒業した。そして転校生が来た 不知火綴 @touya1984

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