第18話 来客

スマホが鳴り、『15分後に着くよ!』というメッセージが表示される

部屋の片付けもある程度は終わったので、俺は薄手のカーディガンを羽織り駅へ向かう

流石に時間もまぁまぁ遅いので普段より人通りは少ない。


駅に着き、改札の前で待っていると電車が来たらしく、人がパラパラと流れてくる。


「あっ……おーい!」

少しすると由花も出てきた


普段は結んでいる髪をおろし、緩いワンピースを羽織る彼女。

小さなスーツケースを引いて駆け寄る彼女はまるで映画のワンシーンから出て来たようで……


「綺麗だ……」


思わず見惚れてしまう


「しぃ君?」


由花の声で正気に戻る。

「あ……ああすまん、ってかそのスーツケースどうしたんだ?」

「ああこれ?気にしないで!それより早くしぃ君のお家連れてって!楽しみだなぁ〜」

「はいはい、でもコンビニだけ寄ってく?飲み物あんまりないから……」

「うん!」


そして俺は由花の手を、指を互いに絡め握り、コンビニへ向かう。




コンビニで飲み物とちょっとしたお菓子を買って、俺の家へ向かう。

そして鍵を開け、初めて女性を招待する。


「何もないところだけど……いらっしゃい」


「お邪魔しまーす!へぇ、これがしぃ君のお家!」


興味津々に俺の家を眺める由花。まるで犬のようだ


それを尻目に家主の俺は先に買ったものを冷蔵庫にしまい、先ほどまで勉強していた机の前に座る。由花も俺の反対側にすわり、そわそわしている


「とりあえず……ここなんだが」

「ああ、ここはね……」

俺が苦戦した演習問題の内容を由花はわかりやすくどのように解けばいいのか解説してくれている。

その後も解説をしてもらい、気づけば演習問題1枚丸々終わった。


「凄いな……」


正直な話、ここまでできるとは驚いた

数学が得意とは聞いていたがここまでとは……


「にへへ〜、数学は大の得意だったからねぇ」

そういうと俺の隣に由花が座る


甘い匂いが由花から漂う。

「しぃ君さ、次の試験どれぐらい目指すの?」


目標…目標か

「できれば10傑入り……7位には喰らい付いたいなぁ」

10傑はなかなか高いハードルかもしれないが、得意分野では負けない自信がある。つまりあとは数学をどこまで鍛えられるかである。


すると由花が少し考え込む


「ん?どうした?」

「あー……しぃ君、もし7位に入れたら、何かしたいことある?」

「また唐突だな……」

そう言われて考えるが、何がしたいか……


「もし由花がよかったらだけど……一回手料理食べてみたいかも」


「そっか、じゃあもししぃ君が7位になれたら、パーティしようよ!私が料理つくるから!」


おっと、でっかい餌が

まぁでも、いっちょ頑張るとしますか



「じゃあ…やったりますか!」

そんな訳で俺は頑張って目指すことにした。















それから逆に由花の勉強を見たり、一緒にゲームなどをしていると、時刻は0時近くなっていた。


「っと……そろそろ由花帰らないとまずいか?それなら駅まで送って行くけど」


俺は立ち上がり、片付けを始めようとする。


すると由花は、さっきのスーツケースに手を伸ばす


「大丈夫大丈夫!私今日しぃ君の家に泊まるつもりだから!」








はい?

なんか今日は、波乱に満ちた一夜になる気がしてきた。

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