第9話 遊園地
電車に揺られること数十分
「「着いたー!」」
俺達は目的地である遊園地に到着した
「流石に混んでるねぇ……あっ しぃくんあれ乗りたい!」
そういうと俺の手を取りグイグイ引っ張っていく
由花に連れられ着いたのはこの遊園地名物[CryMAX☆JETコースター]
おう……いきなりこれか
因みに俺はジェットコースターは得意な訳でもないが別に苦手では無い。
まぁ流石にいきなりこれは重たい気もするが……まぁ可愛い
そして意気揚々と乗り込んだ俺と由花だったが……
「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!」
「ああああああああぁくぁwせdrftgyふじこlp!!」
結論から言おう、俺は死んだ
さすがこの遊園地の名物だけあって、速度も速いが何より落差と回転がすごかった。
「はぁ……はぁ……」
長距離走を走り切った後の選手のように肩で息をする俺
といっても俺だけがこれほど披露しているわけではなく、乗った多くの人がこんな感じに疲労困憊している。
まさにCryMAXだ……最初からclimaxだが……
一方……
「いやーすごかったねぇ♪ぐるんぐるん回転してて楽しかったぁ♪」
対照的にケロッとしている由花……すごいな……
「次はあれのろー!」
「お……おう……」
あの激しい乗り物に乗った後だというのに元気に俺の手をつかみながら行く……元気の塊だな……
それから由花に連れられ俺は様々なアトラクションに乗った。
フリーフォールや空中ブランコ、そしてさらにジェットコースター
正直普段なら途中で休憩を挟むだろう……
だがどうしてだろうか、由花の笑顔を見ているとつい「よし……後一本!」みたいな感じで乗ってしまう
因みに由花は乗るアトラクションすべてに新鮮なリアクションをしていた。まぁこれも俺が頑張ってしまう原因の一つなんだろうが
だが幾つかのジェットコースター地獄を超えたあたりでさすがに俺の元気が底をつきかけた。
「なぁ由花……いったん休憩しないか……?」
「いいよー!あっ、あそこのチュロスおいしそう!」
視線の先には遊園地おなじみのチュロス屋さんがあった。
「じゃあ由花のチョイスでいいから買ってきてほしいな……俺はそこで座ってるから……」
「わかったー!」
何にしようかなぁと考えながらチュロス屋に向かう由花を見ながら、近くのベンチに腰を落とす
「ふぅ……」
いかん、思わずおっさんみたいな声が出てしまった。
まぁしかたない、今はつかの間の平地を味わおう……
思えば、ここ数日で俺の人生は大きく変わったな
急に卒業した推しが俺の学校の転校生で
そんな転校生と俺はいきなり付き合えることができて
そして今、こうして青春を味わうことができている。
昔の俺が見たら……きっと……
「幸せ者だな……俺は」
不意にぼそっと呟く
「ただいまぁ~!はいっ♪」
由花が俺にチュロスを渡す。
匂いからするとシナモンだろうか?
やはり俺の好みをわかっているな……
「ありがとう……ってあれ?由花の分は?」
ふと見れば買ってきたチュロスは一本である。
俺が不思議がっていると由花がいつか見せた小悪魔みたいな笑顔を出す
そして俺の持っているチュロスにかぶりついた。
「うぁっと⁉」
「へへー♪こうして食べるから大丈夫♪」
いやあの……俺が大丈夫じゃないんだが
心臓がバクバク音を立てる。
由花と……間接に……
俺は高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、チュロスを口にほおばる
そのチュロスは本来のシナモンの味だけじゃなくて、甘酸っぱい青春の味と、幸せに満ちた味がした気がする。
そんな休憩を終え、丁度時間的にもよいので近くの店でお昼ご飯をすます。
「ふぅ……ごちそうさま~♪おいしかった~!」
満足そうにニコニコしている由花。見ているだけで幸せだ。……っと、主観が入ってしまった
「それで……次はどこ行く?」
俺は由花に尋ねる。
由花の事だ、次はダイシャリンとかバイキングとかだろうか
そんなことを考えていたのだが……
「しぃくんは何か乗りたいアトラクションとかある?」
おっと……これは想定外の質問だった
「そうだなぁ……」
俺は地図を開き、確認する
すると〔メトロポリタン・サブノーチカ〕の文字が目に入った。
……そういえばこのアトラクションは、自動で動いてくれるんだっけか
「これのろうよ、休憩にもなるしね」
今度は由花の代わりに俺が由花を連れてアトラクションに向かう
少し歩くとアトラクションエントランスについた。
幸いにもすいていたためすぐ乗れそうである。
「あーっ!見て!潜水艦だぁ!」
無邪気にはしゃぐ由花
なんだろう。乗る前からすごい癒しである
このメトロポリタン・サブノーチカは所謂潜水艦に搭乗して海底調査を行うという趣旨のアトラクションである。
三方に窓があり、大体数グループが分かれて搭乗する。
正面だといいなぁ……と思っていたのだが
「今回の調査はお二人です!行ってらっしゃい!」
クルーのお姉さんがそういうと俺と由花を潜水艦に乗せ、扉を閉めた
なんとたまたま、この二人で一隻になったのである
目を輝かせて窓を見つめる由花、俺が少し後ろの席に座ると潜水艦はゆっくりと潜り始めた。
室内が暗くなりはじめ、喧騒が遠くなる
……あれ?そういえば今これ……由花と密室なのか?
とたんに、心臓の鼓動が高まってきた気がした。
そのまま潜水艦は潜り続ける
由花も俺の隣に座り、ナレーションアナウンスを待つ。
彼女の手が、腕が
俺と密に接する。
俺は何とか理性を保ちながら待つ……
待て、おかしい
記憶が正しければそろそろアトラクションの魚などが見えてくるはずだが、数分たっても何も見えない。
由花も何か感じたのだろうか?
「ねぇしぃくん……この乗り物さ……動いてるのかな?」
丁度由花がその不安を口にした瞬間
「お客様にお知らせいたします。ただいま安全装置が作動したため当アトラクションは停止しております。皆様そのままでお待ちください」
まさかのハプニング襲来……である。
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