第15話 二年B組柚木先生

それから数日後の放課後


「それじゃあ始めるぞー」


俺は教室の扉を開け、教壇に立つ

今日は俺が担当の塾の日なのだ

今回の参加者は先日の塚地と巾木と三家本、それに高城と相馬。女子は由花や他クラスの女子、そして青峰さんなどが参加している。

因みに、青峰さんは英語の、そしてああ見えて高城は生物のメンバーズなのである。


「とりあえずプリント配るぞー」


俺は自作のプリントを配り、チョークで黒板にテスト範囲である古典作品の本文を書いていく。


「まずここ、さぶらひたまひける。これはありの謙譲語。そして尊敬の補助動詞たもうの四段活用形が付いている、ここ要チェック」


「たぶん試験で聞かれるとするとここ、この活用は何活用かって聞かれると思うが、これは下二段活用だからね、間違えないように。」


「大臣参り給う。この文はまず会話文じゃない。そして給うは尊敬語だから作者から大臣への敬意なんだよ。ちなみに謙譲語と尊敬語の見分け方は、一つの考え方だけどまずは~差し上げる。とか~申し上げるで訳すこと。これで違和感がなければ謙譲語。あれば大体尊敬語かな」


俺は自前のプリントを元に一通りテスト範囲を解説する。

そんなこんなで大体30分がたち、間もなくこの時間が終わねばならない。


「それじゃあ、最後演習問題がてら古典単語一問一答クイズと今日の内容クイズするからね。時間は7分。それじゃあ初め!」


そしてタイマーを起動し、見回る


(塚地はケアレスミスが減ればいい点数取りそうだな……巾木は……うん、とりあえず単語をゴリゴリやってもらうしかないな。)


見回りながらそんなことを考える。

メンバーズになって人に教える立場になったとき、間違ったことを教えられないということから自分自身も成長できるので、個人的には入ってよかったと思っている。


(青峰さんは完璧だな……高城もなんだかんだ頭はいいからな……)


そして由花の回答も横を通りながらちらりと見る……が特に問題はなさそうだ

(教えてもらうって言ってたが……特に問題なさそうだ)


電子音のタイマーが鳴り、俺は一度回答を回収する。


「じゃあ、とりあえず今回はこれで終わりで。またこれは採点して各自に渡していくから。」


そして俺はメンバーズのメンバーが集まれる控室の扉を開ける。


「お疲れ様です~」

中には三年の神流先輩と紅林先輩がいた。恐らく全員今日は教える側だったのだろう。独特の疲労感が部屋に漂う


「おう、柚木。調子はどうだ?」

神流先輩が俺に声をかけてくる。フットサル部キャプテンでありながら現生徒会長でもあり、さらに忙しいはずなのに社会科のメンバーズとして、授業も一人一人に気を配って進めてくれるという。もはや超人的な先輩だ

「ぼちぼちですね……やっぱり皆本格的な古典文学に少し面食らっているというか……今回範囲でかすぎませんかね」

俺はそうぼやくと、同じ古文を担当している紅林先輩が話に乗ってきた

少し口が乱雑な先輩だが……フレンドリーな人柄で相談しやすいということでこのメンバーズの中でもかなり人気が高い。

俺も何度もプリント作成なんかでお世話になった。


「そんなに多いんか?どれぐらい?」

「源氏桐壷に単語一問一答5ページ」

「そりゃ多いわ。よぉやるわ……三年なんて虫めつる姫君だからな、緩いもんだわさ。」

紅林先輩とそんな軽口をたたきつつ、俺は先ほどの小クイズの採点を始める。


しばらくすると

「お疲れ様です。」

「おつかれさんす~」

そんな片やしっかり、片やコミカルな挨拶とともに青峰さんと高城が入ってくる


「うす。高城、青峰。一年はどうだった?」

神流先輩が二人に尋ねる。

「結構今年の子は生物多いっすねぇ……割と大所帯でした。」

高城が自分の席に座り伸びる。おっさんかて

「40人強……といったところでしょうか」

青峰さんが補足気味に情報を伝える。


一年は秋までメンバーズ制度がないので二三年のメンバーズがかわるがわる教えに行っている。今日は高城が生物を教えに行き、補助として青峰さんが入ってくれていたらしい。



「やはりな……俺も前の時間一年に現代社会だったんだが、こちらも30人前後といったぐらいだったし、今年の一年はやる気に満ち溢れてるぞ。」

神流先輩が心なしかかかってこいといわんばかりの感じで語る。

そこに紅林先輩が首を突っ込む


「まぁ最初だしな……それより高城、また振られたんだって?」

「まぁそうっすねぇ……ていうか紅林先輩どっからそれ仕入れてんすか……」

「へへへ、秘密だ」

高城、また振られたんかい。というか紅林先輩の情報網はとにかく鋭い。なんせクラスでも話題になっていない情報すら拾ってくるのだ


「そういえば神流先輩、数学の後釜は……どうするんですか?」

青峰が少し申し訳なさそうに口を開く。

そう、実は今2年数学のメンバーズだけ不在なのだ


理由は……一年秋の数学メンバーズは、綾音だったからだ。

綾音が退学した今、その席は空席となっている。

「ああ……とりあえず中間試験の結果で……と思っているが、何人か候補は……という感じだな」


さすがに候補はいるので

「まぁそれはおいおい……とりあえずは今回黒羽根に見てもらうつもりでいるんだが……」

神流先輩はもう一つの不在の机を見る


「ここ数日、体調を崩しているらしくて休みなんだよな……」



_________

お久しぶりです。綴です

今回は二話で失礼します。

今章からの新ワード、メンバーズ

これ実際私の通っていた高校で近しいものがあったのですがよそにはないんですかね……?



因みに登場している現メンバーズ科目別担当割り当て

国 柚木・紅林

数 不在・黒羽根

英 青峰・?

理 (高城)・?

社 混合・神流


そして次話からは元通り砂糖成分多めで書いていきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。どっちかといえば息抜き会でした。


あ、後これを丁度執筆している際、 300PVを超えていました。

ひとえに皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。


それでは次回、ゆるりとお待ちください。


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