第18話 遠州三山巡り1 法多山
10月の中旬。
平日に休みを合わせて僕らはキャンプに出掛けることにした。
キャンプはならここの里の予定だ。
それまでの間、遠州三山を巡って行くことにした。
遠州三山とは、法多山・可睡斎・油山寺の袋井市にある寺院のことである。
今回は、車での移動になる。
前日の夜に、僕が帰宅してから荷物を積み始めた。
と言っても、ほとんどの機材の準備は彩夏がしてくれたから僕は積み込むだけだった。
彼女の私物には、色んなキャンプ用品があった。
収集癖のようなものだろう。
詳しい物の知識が無いから現地で見て見ないと分からない。
設営は、彩夏に任せ切りにはできないから。
朝になり僕らは法多山へ向けて車を走らせた。
島田に向かうのと同じようにバイパスを走る。
ただ、今回は掛川までは行かず愛野駅の方へと曲がってエコパアリーナの側道を走ることになる。
エコパを越えて左折すると法多山の有人有料駐車場がある。
僕は正面の駐車場へと入庫した。
有料駐車場は、シーズンによって金額が変わる。
この駐車場が、参道に近いので両親もよく利用していたように思う。
駐車料金を払い、僕らは参道を歩き始める。
「法多山来るの久しぶりだよ。宗一朗は?」
「僕も久し振りかな。両親が生きてた頃はよく連れられてきた気がするけど」
飲食店が立ち並ぶ参道を歩くと山門である仁王門が見えてくる。
仁王門は、国指定重要文化財である。
建立は、江戸時代初期だが桃山時代の造風が用いられている。
11月も中頃になればここは紅葉の名所になる。
いや、三山それぞれがそうだが。
山門を潜ると真っ直ぐな参道が続いている。
法多山は、夏には蛍を見ることが出来るほど自然豊かな場所だ。
さて、参道には同じく真っ直ぐな列ができていた。
「宗一朗…並ぼ」
「変わり種団子って今日だったんだね」
「うん」
法多山では、小さな串が5本刺さった餡子の載った団子が名物である。
串は、それぞれでちぎる事が出来る。
5本でひとつの団子だ。
厄除団子と呼ばれるそれは、毎月1度功徳日になると茶団子が販売される。
紅葉の時だと栗団子やみたらしが出ることもある。
大変人気で行列ができるほどだ。
という事で僕らは列に並んだ。
だんご販売所まではかなりの距離がある。
数量限定だから、買えるか分からない。
「それで、こんな早い時間に出発だったのか」
「うん、折角なら食べたいから」
現在時刻は、8時。
販売所のオープンも同じ8時だ。
列が少しずつ動いていくのがわかる。
「まあ、確かに」
「夏の厄除氷も食べてみたいけどなかなかタイミングが合わなくて」
「ああ、かき氷に厄除団子載ってるやつだね」
「それそれ」
「かき氷苦手なんだよなぁ…あ、後でアイスというかジェラートは食べれるよ」
法多山の後に行く可睡斎の前には、ジェラート屋さんがある僕は可睡斎に行く時はよく寄っていた。
「ジェラート!?」
「うん、彩夏は知らないのか…」
「うーん、法多山以外は行ったことないかな」
それぞれの御寺にはそれぞれ特徴がある。
ここ法多山は、長い階段と四季を感じれる参道。
無形民俗文化財である『田遊祭』。
毎年1月7日に行われている。
室町時代より法多地域に伝わる五穀豊穰を祈願する祭り。
村方衆により本堂前の北谷寺で奉納される七段の舞は、米作りの過程を七段構成の舞楽で表現したものだそうだ。
随分と昔に両親に連れられて見た気がする。
そして、団子かな。
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