第13話 秋の始まりは残(酷)暑

「あっつ」


僕は、朝からぼやいていた。

エアコンを掛けたままの自室。

設定温度は、ちょっと高めだったがそれでも暑く感じるなんて。

今年の秋は…いや、むしろ夏はいつまで続くのだろう。


「ホント暑いね」


キャミソールにホットパンツと言うThe部屋着姿の彩夏が応えた。

ああ、今日は休みだったか。


「おはよう、彩夏」

「おはよう、宗一朗」


そう言って、彼女は僕に抱き着いてきた。

起きるのを待っていたのだろうか?

すっかり彩夏は僕の家の住民になっている。

彼女が自身の家に帰ったのはいつだったろうか。


「ねえ、彩夏…」

「ん?どうしたの?」

「良かったらさ…一緒に住まないか?」

「いいの?」

「いいよ、だってもうほとんど一緒にいるんだからさ」


いや、それだけじゃ足りない気がする。

ああ、そうか。


「好きだよ、彩夏。

だから、僕の傍にずっといてほしいんだ」

「うふふ、ありがとう。

私も、好き。大好き、宗一朗。

こんな私でよかったらずっと傍に居させて」


お互いの想いを伝え合う。

心が満たされていく。

それと同時に顔から火を噴きそうなほど熱くなる。

僕は、ベッドの端に座る。

すると、隣にぴとっと寄り添うように彩夏が座る。

腕に、肌と肌が触れ合う。


「じゃあ、引っ越ししようかなぁ…」

「手伝うよ」

「ありがとう。まあ、そんなに向こうには荷物残ってなかったりするんだけどね」

「ああ、やっぱり?

彩夏の私物が増えたなぁと思ってたけど」

「うん、私もね…宗一朗と一緒に居られる時間を増やしたかったから」

「そっか、同じ気持ちだったんだな。よかった」


彩夏の鼓動と温もりを感じる。

いや、きっと僕の鼓動も温もりも彼女に届いているだろう。

寄り添っていると僕らの境界線が分からなくなりそうだ。

呼吸が重なる…。

鼓動が重なる…。

そして、視線が重なり…唇を重ねた。

言葉はいらなかった。

僕らは、それからしばらくの間キスをした。

名残惜しそうに何度も何度も……。

やがて、お互いに息を切らせながらベッドに倒れ込み、仰向けに天井を眺めた。


「えへへ、私幸せ」

「僕もだよ。彩夏、大好きだよ」

「宗一朗、大好き」


飛び切りな笑顔を僕に向けてくる彩夏。

心臓が張り裂けそうだ。

僕は、咄嗟に彼女を抱きしめた。

が、そうした所で変わることは無い。


「彩夏、また今度お出掛けしようか」

「香嵐渓以外でって事だよね?」

「もちろん」

「じゃあ、宗一朗が私と行きたいところ連れて行って」

「オッケー」


僕は、そう言われて思いついたところがあった。

彩夏と行ってみたいところ。

母方の実家がある場所…。













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