第14話 彩夏とタンデム走行
同棲を始めてひと月が過ぎた。
今日は、彩夏のバイクでタンデム走行をしている。
ちょっとしたわけがあって…。
「彩夏、ごめんね。運転してもらった」
『うん、それは大丈夫だよ。えっと、このままバイパスでいいの?』
「ほぼ、バイパスで大丈夫だよ。
道の駅の掛川で少し休憩しよう」
『はーい、道の駅ね』
浜松を出て国道1号線バイパスを走る。
天竜川を越えると4車線あった車線は、2車線へと減っていく。
やがて、一言辺りで緩やかな登り坂へと変わる。
坂を上がるとなだらかになり、左手に下りが見えてきた。
見付ICか、ららぽーと磐田に行くにはここで降りるんだよな。
最近は、映画を観に行っていないなぁ。
前はよく行ってたんだけど。
僕らは、そのまま直進する。
やがて、袋井に入ると高架へと上がる緩やかなカーブを経て4車線の大きな通りに変わるとバイパスと言うよりも大通りと言える道路になった。
左手には、コンビニやガソリンスタンドが増えてくる。
車線は最右側へ。
この先、掛川の街中に向かう市道と、バイパスに分岐するからだ。
最右側が、バイパスである。
ここを超えると菊川のトンネルまでの間に道の駅がある。
道の駅『掛川』は、市道とバイパス側と両方から入出ができる。
僕らは、駐車場へと駐車した。
「お疲れ様、彩夏」
「うん、少し此処で休憩だよね?」
「そうだね、ゆっくりしよっか」
ヘルメットをヘルメットホルダーにそれぞれ取り付ける。
そして、それぞれお手洗いに向かう。
僕は、用を足し終わりトイレ前の広場でストレッチをしながら身体をほぐす。
平日ともあって駐車場は空いている。
「あ、宗一朗お待たせ」
そう言って、彩夏がやって来る。
彼女は、髪を左で結びサイドテールにしていた。
少し髪の毛が湿っていて張り付いている。
ヘルメットを被っていた所為だろう。
「僕もさっき出てきたとこだから待ってないよ」
「そっか、えへへ。なんか新鮮だよね。
いつも一緒だから」
「ああ、確かに」
彩夏は、僕の腕に抱き着いてきた。が、お互いにプロテクターが入ったジャケットを着ているから硬さが目立つ。
横腹に当たる彼女の肘ですら硬く感じるほどだ。
「うーん、ジャケット着てると不思議な感じだね」
「だな。プロテクターがね」
「うん」
僕らは、そのまま建物の中に向かう。
建物は、横長で出入り口は4方にある。
「あ、野菜の直売してるよ」
「うーん、今買うと持って帰れないかも」
「そうだよね、浜松に帰ってからファーマーズ行った方がいいかもだよね」
「うん、その方がいいかも」
ファーマーズ…JAファーマーズマーケットと言うのは、地域生産者の農産物を売っている施設である。
自宅からは、少しだけ距離があるからなかなかいけない。
「お、仙の坊ってここに出来たんだ」
「お蕎麦屋さん?」
「うん、自然薯を使ったとろろ汁とかも有名な袋井の蕎麦屋さんだよ」
仙の坊は、自然薯のとろろ汁や地元栽培の『遠州そば』が有名なお店である。
袋井インターの前が本店で、第2東名の遠州森SAにも入っている(少し前に閉店してしまったらしい)。
現在時刻9時だが、もうオープンしている。
「朝食まだだったし食べていく?」
「うん…でも、2人で半分にしない?
お昼は、島田で摂るんでしょ」
「まあ、そうだね。じゃあ、仙の坊定食を2人で食べようか」
「うん」
僕らは、その後券売機で券を買って仙の坊定食を食べるのだった。
仙の坊定食は、ざるそばととろろ汁、きんぴらごぼう、沢庵の載った定食である。
とろろの出汁は、さばだしとしいたけだしとを選ぶことが出来る。
しいたけだしは醤油ベース。
さばだしは味噌ベースである。
さばだしというのは、遠州地方に古くから伝わる故郷を想わせる味だ。
今回はさばだしにした。
「とろろ汁美味しい」
「でしょ、やっぱり仙の坊はいいよね」
「うん、今度はしっかり食べたいからまた来ようね」
「その時は、本店に行こうよ」
「うん」
僕たちは、食事を済ませ島田に向けて再び走るのだった。
さて、今回島田に来たのは…。
僕が、母方の実家に預けてあったものを受け取るためである。
その為に、今日はタンデムで来たのだ。
そう、母親の形見でもある車を受け取りに来たのだ。
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今回から、先日の取材旅行の内容を書いていきます。
ただ、ちょっとリアルが忙しめなので執筆速度が遅くなります。
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