第11話 キャンプツーリングの後に【改修版】

僕と彩夏は、それぞれ自宅に戻り着替えをして集合住宅の入り口で待ち合わせをした。

シャワーを浴びるくらいの時間はあったので、シャワーを浴びてから着替えをすることにする。

キャンプ場には、シャワー利用も出来たのにそのことをすっかり忘れていたし今日も一日走って来たので汗くらいは流したかった。

ジーパンにTシャツ、Yシャツを羽織る。

かなりラフな格好だ。

靴もランニングシューズにした。

ずっと、ライダーシューズだったから軽めがいいや。

僕は、準備を済ませると待ち合わせ場所に向かった。

集合住宅の入り口に向かうと同じように彩夏が向かっていた。

彼女は、真っ直ぐ向かうだけ。

僕は、隣の棟なので少しだけ遠い。

彩夏は、今までは見たことがなかった白いワンピースを着ている。

ちょっと清楚系…というよりも僕が『進藤さん』に持っていた印象に近しい。

あの頃の彼女は、黒髪で眼鏡をしていた。

今も、丸眼鏡を掛けている。

髪型も少し変わっていた。

サイドテールになっているし、黄色いシュシュがワンポイントになっている。


「彩夏、似合うね。服もそうだけど髪型も」

「えへへ、ありがとう」


彼女からは、フローラルな香りがする。

僕と同じようにシャワーを浴びてきたのかもしれない。

よく見ると少しだけ髪の毛が湿っている。


「あんまり見ないで…まだ乾いてないから恥ずかしい」

「あ、ごめん…まあ、僕もまだ乾いてないんだけどね」

「あ、ホントだね。宗一朗の後ろ髪濡れてるね」

「やっぱり?まあ、歩いてれば乾くかな。

えっと、どうしようか?」

「私が、ご飯作ってもいい?」

「う、うん。じゃあ、マックスバリュに行こうか」

「…杏林堂もかな」


杏林堂とマックスバリュは、道を挟んで建っている。

ドラッグストアにはドラッグストアの良さが、スーパーにはスーパーの良さがある。

アパートからは、5分ほど歩けば着けるほどの距離感だ。


「じゃあ、さきに杏林堂に寄ろうか。

その後で、マックスバリュに寄ってから帰ってこよう」

「うん…ねえ、宗一朗…手、繋ごっか」

「もちろん」


僕たちを手を繋ぎながら買い物に出掛けるのだった。


杏林堂へとやってきた。

終始、手を繋ぎながら歩いてきたのだがやっぱりちょっと気恥ずかしい。

だからか、お互いに会話もなく歩いていた。


「えっと、着いちゃったね…」

「だね…何買おうか?」

「宗一朗が食べたい物…ある?」


彩夏にそう言われて僕は少し悩む。

これと言って思いつくものが無い。

よく考えると料理ってあんまりできないんだよね。

適当に焼いたりとかはできるけど凝った物とかは作ることは出来ない。

1人暮らしではある物の家事も洗濯と掃除だけで、毎食大体コンビニやスーパーで総菜を買うことが多い…いや、ほぼそれで済ませていると思う。


「えっと、僕あんまり食に拘りが無くてさ…」

「え?じゃあ、普段はどうしているの?」

「コンビニがほとんどかな」

「もぅ、ダメだよ。

宗一朗の食生活は私が変えます」


彩夏の目には、炎が灯っていた。

というか、怖かった。

昨日食べたキャンプ飯はとても美味しかったな。


「じゃあ、献立は私が考えるね」

「はい…お任せします」


僕は、全面降伏するのだった。

まあ、昨日のご飯で胃袋は完全に掴まれているんだけど。


それから僕らは、杏林堂で餃子を買ったり、併設している精肉店でお肉を買った。

食材は、彩夏の持っていたエコバッグに入れて僕が持っている。

そのまま、マックスバリュへ。

の前に、隣接している百円ショップで日用品を買い足した。

マックスバリュでは、野菜をメインに購入することに。

ついでに、缶チューハイもいくつか購入した。

そして、買い物を終えて帰路に就いた。

僕は、荷物を全部持つことにした。

まあ、なかなかの重さがあるから。


「私も持つよ?」

「いいよ、僕が持つから。

それに、彩夏はこれから料理してくれるんでしょ。

だから、お礼だと思ってよ」

「えー、うーん」


彩夏は、腑に落ちないようだったがそう言っているうちに集合住宅に辿り着いた。

結局、彼女は僕の家に来ることになった。

まあ、僕の所はあまりが物はない。

2LDKの割と大きな間取りの割に、家具程度で私物は極力置いてはいない。

それでも、掃除は得意だから片付けてあるから急な来客も大丈夫だ。

まあ、仕事以外の趣味と言う物がないからだろうか。

だからか、僕の家に来た彩夏が第一声に言ったことは。


「なにもないね」

「うーん、ダイニングテーブルもテレビもソファもあるけど?」

「ううん、家具はあるのは分かるけどインテリア的には…宗一朗ってミニマリスト?」

「どうだろう。趣味があんまりないからさ」

「そっかぁ、じゃあこれからは私と趣味を作って行こ」

「ああ、そうだね」


彩夏に軽蔑されるかと思ったが、そんなこともなく受け入れてくれた。

彼女に出会えてよかったと思う。

それから、僕の家にある調理器具で彩夏は料理を作った。

差し当たり今日はすき焼きになった。

夏場のすき焼き…フルーツトマトやとうもろこしが入っている。

暑いときに熱い物を食べるというのもいい物だ。


「彩夏、凄く美味しいよ。ありがとう」

「えへへ、どういたしまして。お口に合ったならよかったよ」

「もう、彩夏の料理がないとダメなくらいには胃袋掴まれてるんだけど」

「そっかぁ、胃袋掴んじゃったかぁ」


彩夏は、悪戯な笑みを浮かべていた。

ドキっとする。

普段は見せない表情もやっぱり僕は好きなんだな。と思った。


食後には、アイスクリームと缶チューハイを頂いた。

彩夏は、その日は帰ることなく僕の家に泊まった。

と言うよりも、彼女はあまりお酒に強くなかったようで缶チューハイを半分ほど飲んだら眠ってしまったのだ。

僕は、彩夏をベッドに寝かせることにした。

こうして、生活が幕を開けることになった。


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