第4話 キャンプ用具を揃えよう【テント編】

次の休みは、水曜日だった。

俺は、朝からアウトドアショップを覗いてみることにした。

趣のある店構え。

中に入ると「うわぁ」と小さな声が漏れた。

雰囲気で興奮する。

店内は、かなり静かであまりお客さんはいない。

まず僕を迎えたのは、焚き火台だった。

キャンプと言えば、焚き火だよな。

椅子に座りながら焚き火を見るのっていいよな。

焚き火を見てるだけで心が落ち着くし。


「いらっしゃいませ、焚き火台ですか?」


茶髪の同年代くらいの女性の従業員が話しかけてきた。

いつも接客で慣れているけど、自分で話しかけるのと話しかけるのでは少し違うな。

まあ、落ち着け。僕。

大丈夫だ。


「そうですね、でも初めてのキャンプで何を買おうかと思って」

「あ、そうなんですね。初めてのキャンプだとわからないことだらけですよね。

失礼ですけど、移動はバイクですか?」

「あ、はい。バイクです」

「やっぱり、さっきバイクのエンジン音が聞こえてたのでもしかしてと思ったんです」


ギャルぽいのかと思ったらそんなことはなく、普通に丁寧な接客だった。


「あれ?お兄さんの顔どこかで見たことある気が…」

「え?そうですか?」


えっと、新手のナンパかな?

僕は、今までしっかり見ていなかった店員さんの顔を見る。

なんだか、女性と話すのって慣れないんだよね。

あんまり、人の顔見て話すのも苦手で。

まあ、それでも仕事の時は気にせずできる。

もう、あれは仮面でも被っているようなものだ。

普段の僕は、どちらかと言うとその反動で無表情になっている。

笑顔なんか日常ではほとんど出さない…いや、出ない。


「どこだったかなぁ?うーん」

「それよりも、初心者がキャンプツーリングに行くとしたらどんなものを揃えたらいいでしょうか?」

「そうですね、順番に行きましょう。

まずは、テントからでしょうか」


僕は、彼女…名札に『KANO《カノ》』と書かれていたのでカノさんの後ろを付いていく。

壁沿いのコーナーには、テントが棚に収められていた。

その前には、いくつかのテントが展示してある。


「まずは、テントの種類からですね」

「え?テントってそんなに種類があるんですか?」

「はい、まずは自立式と非自立式とあります」

「テントって自動で立てれるんですか?」

「あ、違います違います。

ポールを通してテントを張ったりすることが出来る物が自立型で、非自立型はペグや張り網なしではテントが立てれない物をいうんですよ。

まあ、そう言う種類があるってことだけまずは覚えておいてください」


ペグ?に張り網?

うむ、分からんが別で道具が必要ってことかな。


「それでですね、テントの種類はこれを見てください」


テントコーナーの前に置かれたPOPに目を向ける。

そこには、テントの種類が書かれていた。

おお、わかりやすい。


「ドームテント、ツールームテント、ワンポールテント…ティピーともいいますね。あとは、ソロテント、シェルターテント、ワンタッチテント…あ、これが自動で立つと言えば立ちますね。あとは、特殊タイプテント、ロッジ型テントが種類です」

「うわぁ、いっぱいありますね」

「今回は何人で利用の予定なんですか?」

「あ、1人です。ちょっとスーパー林道を走ろうかと思って小川の里経由で行ってみようかと」

「なるほど」


彼女は、よく見るととても可愛らしい顔をしていた。

茶髪の髪は、後ろでシュシュで纏められポニーテールにしているから動く度に左右へ揺れる。

癖なのか、考える時には右手の人差し指を頬に当てている。

その仕草が、とても可愛らしい。

普通だと、あざといと言われそうだが。


「そうすると、ソロテントか1~3人を対象にしたテントがいいかもしれません。

バイクだと積載の限界もあるのでそこは考えないといけませんが」

「そうですね…一度きりと言うわけではないと思うので少し大きい物にしようかな。

もちろん、積載も考えて」

「はい、そうすると…ドームテントとワンポールテント、ちょっと大きくなりますがツールームテントがお勧めです」


僕は、POPに視線を向ける。

ドームテントは、軽量で収納時のコンパクトさが売りのようだ。

根強い人気があるみたいだ。

ツールームテントは、ドームテントにリビングスペースが取れるタイプみたいだな。

ワンポールテントは、これが非自立式なのか。

ああ、なんかインディアンが使ってたテントみたいなのだ。

円錐型だな。見た目はいいけど、めんどくさそう。


「うーん、バイクもあるからこのツールームテントにしようかな」

「いいですね、じゃあツールームテントで探してみましょう」


僕たちは、ツールームテントの棚へと移動した。

綺麗に種類別で並べられているようだ。

メーカー毎にも並べられている。


「見た目は…このカタログですね」

「結構いい値段しますね」

「そうですね、テントは第2の家みたいなものですから。

テントに関してはネットで探すのも手ですよ」

「あはは、いいんですか?そんなこと言っちゃって」

「アウトドアを楽しんでいただけるだけで嬉しいじゃないですか」


カノさんは、笑顔でそう答えた。

その笑顔に、胸が高鳴った。

僕ってなんて単純なんだろう。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る