第8話 ソロキャンに出掛けたはずが

「あれ?ソウさん、明日遂に行くんだっけ?」

「おう、やっとだわ」


あれから、2週間が過ぎた。

スターターキットは、先週の内に届いている。

先日、サイドバッグとシートバッグが届いた。

サドルバッグサポートは取り付けも終わっている。


「じゃあ、お疲れ」


僕は、久し振りの中番だったのでクローズ作業無しの帰宅だ。

帰ったら、荷物の整理をしなきゃな。

僕は、バイクの元に向かう。

そこには、装備が一新した愛車が止まっていた。

USB取付とスマホフォルダーも取り付けた。

何度も通った場所だから迷うことはなさそうだが念の為、取り付けた。

僕は、バイクに跨りマックスバリュに向かって走ることにした。

簡単な物なら持っていけそうだから食材を買っておこうかと思ったからだ。

一応、水も購入しないとな。

これは、二俣のコンビニ辺りで買ってから向かえばいいかな。

スマホフォルダーに置いたiPhoneが鳴動している。

ヘルメットに内蔵した骨伝導インカムが音を感知する。


『もしもし、ソウくん?』

「アヤさん、お疲れ様。どうしたの?電話なんて」

『えっと、ソウくんの声が聞きたくなって』

「え?うん、ありがとう」

『今は、運転中?』

「そうだよ。明日の準備をしようとマックスバリュまで向かってるところ」


この2週間で、彼女との距離もだいぶ縮まったように思う。

スターターキットが届いた後に、不足分をアヤさんの職場で買い足した。

スターターキットにあったのは、ワンポールテント、シュラフ、キャンプマット、ヘキサタープ、アウトドアチェア、アウトドアテーブル、チタン製のアルコールストーブ、ペグハンマー、15Lのクーラーボックス、スパイスボックス、アルミ製のメスティン、ステンレス製のクッカー(鍋2種とフライパン1種)、5Lのウォータータンク、バーベキューグリル、ツールナイフとまな板セット、LEDランタン、カトラリーセットだった。

なかなかの量である。

それでも、やっぱり不足分はある物で

グランドシート、焚き火グローブ、火ばさみ、薪・炭、着火剤は何種類か、焚き火シート、バトニングナイフは別途購入した。

あとは、ちょっと補強が必要とのことでペグとペグハンマーを丈夫な物に変更したり、付属のアルコールストーブではなくシングルバーナーを一基購入して持っていくことにした。

あとは、自身の職場でソロフィルターなどの抽出具やコーヒー豆を購入した。


『料理は何か作るの?』

「いや、今回はコンビニ飯で済ませるつもりだよ」

『そうなんだね…フリーサイト?』

「うん、そのつもりだよ。区画よりはフリーサイトの方がいいかなって」

『だいぶ勉強できたみたいだね』

「アヤさんのおかげだよ。ありがとう」

『うふふ、どういたしまして』


僕は、彼女と会話をしながら夜の街を走る。

そして、気が付くとマックスバリュに到着をした。


「あ、ごめん。アヤさん、マックスバリュに着いた」

『そうなんだ、じゃあソウくんまたね』

「うん、また」


駐輪場にバイクを停め、スマホの通話を切る。

ヘルメットをヘルメットロックに置いて、エコバッグをもってマックスバリュで買い物をするのだった。



翌朝。独り暮らしをしているアパートを出て天竜を目指した。

天竜川の堤防沿いを走る。

浜松から浜北を上る。

風が気持ちいい。

時間はあるし、コンビニによって後に道の駅 花桃の里で休憩を挟もうかな。

といっても、自宅を出て30分弱しか経ってないんだけどね。

しばらく走ると、天竜川を渡り二俣に入る。

右に抜けると鳥羽山城址・鳥羽山公園がある。

昔よく来ていたなぁ。

二俣の町中を通り、船明ダムを目指す。

途中で、遠鉄ストアがあったのでコンビニではなくそこに寄った。

昔に比べて、コンビニもだいぶ増えたなぁ。

遠鉄ストアで、2Lの水を多めに購入した。

そして、更に北上する。

船明ダム運動公園の横を通ると次の信号からは空気が変わる。

左手には天竜川が広々と見える。

ダム湖とも言える。

水場の為、一段と涼しく感じる。

3つのトンネルを潜ると赤い橋…夢の懸け橋が見えてきた。

夢の懸け橋の入り口に、道の駅 天竜相津花桃の里がある。

夏場だし、夏限定のわらび餅買って行こうかな。

クーラーボックスもあるし。

お昼は、ここで花桃カレーを食べた。

野菜が溶け込むほど煮こまれたキーマ(挽き肉)の甘口カレーだ。

さて、ここから小川の里オートキャンプ場までは目と鼻の先だったりする。

湖畔を道沿いに走っていくと橋が見えてくる。

そこを、右折して少しすると見えてくる。

気田川の傍にあるキャンプ場だ。

僕は、駐車場にバイクを停めて受付に向かう。

のだが、そこには見慣れたバイクと見慣れた人影が…。


「あれ?アヤさん」

「こんにちは、ソウくん。

えへへ、来ちゃった」


てへぺろと小さな舌を出してウィンクをしてきた。

あ、うん。可愛い。

じゃなくて…いや、いいか。

設営とか一人で出来る気がしていなかったから。


「思うことはあるけど、助かるよ。

僕一人で設営が出来るか不安だったから」

「よかった、怒られるかと思った…」

「いやいや、そんなことで怒ったりしないよ…まあ、あんまり今まで怒ることもなかったけど」


僕は、途中から小さく呟いていた。

それから、2人で受付を済ませる。

一応ソロキャンプで隣り合わせにテントを張ることにする。

とりあえず、フリーサイトへと向かった。


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