第9話 ソロキャンプ×ソロキャンプ=2人キャンプ?

結果。

僕は、1人でテントを設営できませんでした。

アヤさんが来てくれなかったら無理だった。

がっくし。

ワンポールテントとその横にはヘキサタープが張られ、そこには2台のバイクが置かれている。


「慣れてないんだから仕方ないよ。

ワンポールテントって難しいから」


バランス取るのが大変だった。

ワンポールテントカッコよくて好きなんだけどなぁ。


「とりあえず、内装も頑張ろう」

「そうだね、えっとまずはキャンプマットを敷いて」


僕は、思い出しながら設置していく。

まず、キャンプマットを敷いてその上にシュラフを置く。


「あ、ソウくん。お夕飯は任せて」

「え?作ってくれるの?」

「うん、折角だからアウトドア飯の良さも知ってもらいたいから…メスティンって持ってきてたりする?」

「うん、あまり幅を取らないから持ってきてるよ」

「じゃあ、それでご飯を炊こうかな」

「これで、ご飯が炊けるんだ!?」

「うん、任せて」


アヤさんは、そのあとテントに入り着替えをしてきていた。

ライダージャケットからTシャツになっていた。

その上から、エプロンをしている。


「エプロン似合うね」

「えへへ、そう?ありがとう。

あ、はい。ソウくんにもあげるね」

「いいの?」

「もちろん。私とお揃いじゃ嫌かな?」

「嫌じゃないよ。むしろ嬉しいから」

「そ、そう?」


アヤさんの顔が赤くなっていた。

僕は、彼女からエプロンを受け取った。

着替えしようかな。

僕は、テントへ入りジャケットを脱ぐ。

元々、下にはTシャツを着ていたからそのままエプロンをする。


「うん、ソウくんも似合うよ」

「そう?ありがとう」

「そのエプロン、難燃素材で作られているから焚き火の火の粉で穴が開いたりしないからね」

「なるほど、火の粉…全く考えてなかったよ」


僕たちは、それから話をしながら準備をしていく。

といっても、僕がやる事はすぐ終わった。

アヤさんのテントはベージュのツールームテント。

今もリビングで料理をしている。

時刻はもうすぐ17時になろうとしていた。

でも、陽が長いからまだ明るい。

メスティンも彼女に渡してある。

色んな所からお腹が空く匂いがしてくる。

BBQかなぁ。


料理が出来上がったのは、1時間くらい経った頃だった。

テントの外で、食卓を2人で囲んでいる。

テーブルの上には、メスティンに入ったカオマンガイやクッカーにアルミ鍋を載せたアヒージョ、シェラカップにはポテトサラダが入っている。


「凄いね」

「これくらい簡単だよ」

「僕には、無理だな。料理は苦手だから」

「そうなの?」

「普段もコンビニ飯やファーストフードばかりだからね」

「そうなんだ…じゃあ、今度作ろうか?」

「え!」


僕は、彼女の言葉にドキっとした。

どういう心意があるんだろう。


「ふふ、もう。やっぱりソウくんは気づいてないんだね」

「え?どういうこと?」

「私ね、ソウくんとは中学時代クラスメイトだったんだよ」

「え?アヤさんと?」

「うん…苗字も変わっちゃったし容姿も頑張ったから」


苗字が違う?容姿も頑張った?

そうか、依然感じたどこかで会った感じ。

あの既視感はそれか。

アヤさんは、少し俯いてコンタクトを外して眼鏡を掛ける。

夕闇が訪れようとしていた。

彼女の髪が、黒っぽく映る。

そして、僕はあるクラスメイトの姿を思い出した。


「進藤さん?」

「うん…前は字は違うけど同じ苗字だったけどいまは神野…お母さんの旧姓なの」

「そっか、まさかアヤさんが進藤さんだったなんて」

「私は最初からソウくんだって分かってたよ…私、ずっとあなたの事を見てた」

「え?」


僕の事を見てた?

どうして…。


「私、中学時代からソウくんのことが好きだったの。

優しい貴方が」

「そっか…中学時代の事はそのさ…もうあまり記憶が曖昧だけど。

僕は、今のアヤさんの事好きだよ。だから、僕と付き合ってくれないかな」


彼女の頬から大粒の涙が零れる。

胸が締め付けられる。

でも、きっと今言うべきことだったと思う。

アヤさんに、全部言わせちゃダメだから。


「再会してから、僕はアヤさんに惹かれていたんだ。

だから、毎日の連絡も途切れさせたくなくて…もっと、アヤさんと一緒に居たい。

昔の僕じゃなくて、今の僕も見て欲しい」

「…バカ。私は、今も昔もずっと貴方しか見てないのよ。じゃなきゃ、今こうして押し掛けてないもの」


確かに、彼女が来てくれたことが嬉しくて失念してた。

『どうして』を。


「ごめんね、気付けなくて。でも、これからは大切にする」

「はい…これからもよろしく宗一朗」

「ああ、よろしく。彩夏」


こうして、僕らは付き合うことになった。

あ、でもその日は別々に寝たよ。

一応、『ソロ』キャンプなんだから。

でも、コーヒーを飲みながら2人で夜空を眺め語り明かした。

今までの事、これからの事を。


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ソロキャンプ&出会い・再会編終了です。

次回からは、カップルになった2人の話になります。

キャンプツーリング・グランピングなどなどこれから展開していく予定です。




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