第1章〜2〜『壊れた摩天楼』
この国はかつて革命に燃えていた。
現代では革命の
全ての人がそうでないのはわかってはいるものの、胡散臭さが強調され、善行的な行動であっても悪目立ちし、興味なんて持たれないし、大衆から
もちろん本当に胡散臭いやつらもいるし、人の弱みに漬け込むヤバい奴らはいっぱいいる。
しかし、そんなの考えていても
理解できないことは全て無視することよりも、良いこと、悪いことを的確に認識でき、的確に対処することができる人が増えるだけでも、社会はもっと美しい
施設から逃げ出して1週間ほっつき歩いてきたが、定住できそうな場所は見つかることはなかった。
ポケットに入っているお金は315円だけだ。最初は2,000円ぐらいあったが、ずっと歩いているからこそ、いつも以上に腹が減る。
腹が減る度に頭がクラクラする。
ほぼ休憩しないで歩くと足が攣るし、足から痛みがするが、たまに無感覚になる状態を繰り返しながら歩いている。
どれぐらい歩いても、この救いようのない魔都、いや
周りの人が、みんな邪悪で得体の知れない何かに映ってしまう。物凄く怖い。
この資本主義の心臓とまで言われたこの都市は、ただ
希望を抜き取り、理想を断絶し、絶望を植え付ける。魂の
運良く勝ち抜いてきたら、逆に成功者の烙印を押されるが、欲望が満たされることなく、金のことを常に考え続ける盲者と変わり果てるしかできない日常を強制される。
しかし、メディアは彼らを
この場所から、生き抜けたとしても、命あるだけまだマシな状態にされるか、生き地獄を味わい続けるかだ。
生きる意味を見出せないし、生きた心地はせず、社会の歯車の1ピースか、感情を持つだけのロボットと変わらないような生活を送る人もたくさんいるが、運良く幸せが目の前に訪れることを
こんな極端なルートしかないとは言わない。
何故なら、一定数そこまで多くはないがそんな社会でも争う人間もいる。
その心のあり方は立派だ。
しかし、少しの気の迷いで簡単に堕落してしまう。いや、堕落している自分に酔い始める。
俺はひたすら歩いていた。
ただひたすら目に入る人々を観察するようにした。
路上で上司が部下に謝らせて土下座させている光景を見た。
土下座するという行為に何の意味があるのか。
関係性が悪化し、モチベーションを修復させるまでの時間はかなり無駄じゃないか?
『お前、いつまでにノルマ達成できそうなんだ?これ明日の朝までにはできるよな?』
声を震わせながら土下座している部下だと思われる人物が答えていた。
『すいません。。なんとか、明日の朝には終わらせます』
その光景を見た瞬間、親父がストレス発散のために書き残していた愚痴日記の内容を思い出した。
『20XX年XX月XX日
現状の社会と経済について語らせてくれ。
しかし、私はそれら人々を究極の
海の向こう側で起きる戦争や、悲劇に嘆くが、身内の心を
世の中の企業の大半はブラックだ。
それは抗えない事実だ。
しかし、大半は隠し抜いているにすぎない。
悪行が晒されたら、どの企業も
一部の大企業は免れる方法を考案しているからこそ免れるがね。
一番効率の悪い組織を作っている大半の原因は役職持ちの奴らが何もしないことにある。
どの案も通さない。
意味がないことを繰り返す。
業績が下がれば、まずは人件費をカットすることで問題解決しようとする。
改善案を提案されまくって、全てを通したら今までの業績が悪化する可能性があると話す奴らがいた。
権力構造的に悪影響を及ぼす案がある場合は没にされることがほぼ確定されている。
しかし、その考えは
構造を一番理解しているからこそ、より業績が上がるように、あらゆるリスクヘッジを行い、戦略を考える部署との会議を繰り返すことで、組織全体が働きやすい環境を作るのが、奴らの仕事のはずだ。
責任を背負うだけの仕事をして、高い給料を得てのうのうと過ごす。
いつか訪れる頭を下げる時が来る時に備えて、のうのうと過ごしているだけのやつらが多すぎる。
それも中には
はっきり言おう、蹴落とされる立場にいる派遣社員や、外国人労働者の方が有能だ。
蹴落とされる立場にいる人たちの方が正社員よりも仕事ができる。
試しに正社員と同世代の派遣社員や、外国人労働者に同じ作業をやらせてみなさい。
結果は明確に現れるだろう。
ただ、自国の言語ができるから上に立てているだとか、権限上の問題などがあげられる。
同じ言語で喋れるなら、同じ権限をもって仕事ができるのであれば、彼らは我々のような正社員よりも仕事ができる。
しかし、一定数仕事をサボる奴も出てくるが、国籍など、立場は関係なく、ただのクズだ。
この国に限った話ではない。
この国の資本主義は非常に悍ましい危機に立たされていることを誰も話そうとしない。
給料に見合わない仕事をしていると判断すると楽な道を探し始めるのだ。
この国の労働時間は多いと囁かれているが、大半の理由は効率の悪すぎる仕事場で仕事をしているが故の残業、立場に見合っていない仕事を複数掛け持ちし、本来の作業に注力できていない。
楽に残業代を稼ぐ輩が多いことが原因だ。
仕事ができるから、仕事が多いのではない。
仕事ができない奴が多いから、仕事が多いのだ。
どの業界も、どの国も人材不足が囁かれているが、真実は安く雇える有能な人材がいないことに嘆いているだけだ。
安く雇えて、長時間働けるような人材を欲しているのだ。
私が言いたいのは、崩壊の危機にある国の大半は知識を身につけたことに自惚れてしまい、知恵を育むことを怠ったせいで、自らの首を絞めることになってしまったのだ。
めんどくさいことがあれば、全てを忙しいという言葉で片付けようとする人もいっぱいいる。
しかし、それは
先人たちがやらかした
そんなんだから、この国の大半の企業が赤字経営なのだ。
海外に金が流れて行くだけで金がない国内を戦場にビジネスをしてても、儲かるものも儲からないまま、既に積んでいる社会の歯車は回るだけで、金のない人たちからお金を巻き上げて、自分たちの生活の豊かさを維持しようとするだけの輩が多いことに変わりはない。
今後も続いていくであろう。
人間が楽な道を追求する限り、この救いようのない生き地獄の
栄光は空論の灯火の中に消え、犯した愚行によって噛み砕かれる。
』
ノートに書かれていたことの大半は学生の俺からでも想像しやすいと思った。
学生はそういう世界に飛び込むと思うと、就活する意味や、仕事にモチベーションが起きにくいのは当たり前だと思う。
夢を抱き、理想を
そう考えるのは勝手だが、後悔のない人生を歩むのは優しい人間には辛い選択肢だ。
そもそも、自分に余裕がない人間が多い社会なのだから、考え事を放棄するし、平気な顔で他人を傷つける。
パパ活女子がラブホに入って行くところを見た。
『久しぶりだね。今日はたっぷりサービスするから、いっぱいちょうだいね?』
黄金色の時計をした小太りのおじさんは興奮しながら答えた。
『朝まで終わらせないからね!』
しかし、この2人を尾行している間に、俺以外にも尾行している人たちの存在に気づいた。
コワモテなおっさんたちだったことから、おそらくこの小太りのおじさんは
可愛いさには消費期限がある。
どれほど可愛くなっても、どれだけ努力しても、老いには勝てない。
若さの愛嬌は
異性から優しくされるし、金もくれるという考え方はある種の合理的な考えなのだろう。しかし、その魂のあり方は可愛い着ぐるみに着せ替えた獣と変わりはない。
自分が兼ね備えていた武器で強者から恩恵を受けるのは、いつの時代にも存在する弱肉強食の典型的な戦い方だ。
生物の生存本能が金を他者から貪るように仕向けているのであろう。
ブランド物で着飾っている美人を見た。
どれだけ高いものを買って、自分の体を美しく着飾っても、心は美しくはならないのだ。
むしろ、心は自己中心的な
ブランド品をつけることで個性や、アイデンティティをお金で解決しようとするクセがついてしまう。
どれだけ外見が綺麗でも、心が腐っているのであれば、それは本当に綺麗と言えるのであろうか。
何事でも、綺麗に見せることが、何よりも醜いのではないのかと思う。
パチンコ屋の前で泣き崩れる人を見た。
長期的に心を満たしてくれるようなるような娯楽は存在せず、ストレス発散ぐらいしか楽しめる娯楽がない。
基本金が無ければ、カラオケか、ダーツ、ビリヤードで遊び時間を潰すか、金があれば風俗や、キャバクラに行くことで自分を迷わせることができるのだと思う。
自分を迷わせることでしか快楽に蝕まれた幸せを感じられないのだ。
これも救いようがない。
長期的に幸せになれるような娯楽は存在しないからだ。
この国の40代以上の3人に1人は浮気をしているそうだ。
片方が浮気をしていたり、2人とも気づかれずに浮気しているカップルも多いのだろう。
若い子と話したり、混じり合うことは価値があることらしい。
金を払わないと若い子と話すだけでセクハラと言われるらしい。
大人になるということは制限を
肩身が徐々に狭くなる社会を作り上げているのは自分たちのはずなのに可哀想なことだ。
体だけ老いていっても、比例して精神は成長されていかないのに、何故早く大人になることに憧れていた少年少女は、後に大人になったことを後悔し、少年少女に戻りたいと懇願するのだ。
ある汚い町の広場で騒いでいる派手な見た目をした集団を見た。
酒を飲んだり、脱いだり、酔い潰れた女の子をホテルに誘い込もうとしている売れないホストのような奴らもいた。
欲望のままに生きることでしか、生きている実感が
顔が良ければ、ナンパしてヤリ放題だし、何も
この国の少子化問題の大半はお金がないことで片付けようとしている。
しかし、実際は
他人と支え合って生きることが難しい人が増えているような気がする。
これも親父がいうように全て統計データで把握できるようなものだ。
しかし、この社会は数字という
答えは簡単で早くめんどくさいことを片付けたいと思うからだ。
海の向こうで戦争が起きていることに対して、言葉だけは一丁前に悲しみの言葉をあげるが、誰が死のうが本当は気にしてもいない。
数字で何百万人の死を知るより、目の前で死んでいる1人の死体を見る方が衝撃的だからだ。
実際、何百万の死体の山を見ない限り、人は作られた平穏の中でのんびりと
大半の人は死というものを想像できない。
俺たちの社会は死から遠ざけれるように設計されてしまったため、死に唆(そそのか)されているのだ。
故に簡単に自らの命を
失敗すれば、後遺症が残り一生苦しむかもしれないというのに、まるで完全な自殺方法が存在するかのように死に魅了される人たちが現れる続ける。
この冷たい摩天楼で日々繰り広げられている他人の精神を蝕み、犯し、強制し、支配する行為は許されているのに、誰も嘆かないのだ。
競争は形を変えて、経済競争に変わったというのに、競争社会に住んでいる
まるで、この国は
しかし、誰も知らない。知ろうともしない。
いつから、この都市は運に左右されるだけのディストピアに変わり果ててしまったのだ。
人間の
人間は、自らと他者の生に幸せをもたらすために生まれた生き物のはずだ。
なぜ、人間力を
こんな高校を退学させられた奴に言われたくはないか。
でも、俺が言えることもある。こんな世界壊れてしまえばいいと———-。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます