第1章〜17〜『楽園への招待状』

シャルヴを空に撃ち放った場所で、俺は横たわっていた。


意識はあるのに、力を使い果たしてもう動けない。


でも、後悔はない。今俺が見ている光景は何よりも美しいと思えた。


俺が撃ち放った砲撃で暗雲を全てを消し飛ばしたのだ。


この宝石箱のような夜空が見れたのであれば、無作為に力をぶちまけたことが正しかったと思えてしまう。


少し前、俺はあの星々の横を遮って、ここまで辿りついたのだと思い出した。


この神の力さえあれば、この世界を救済できるかもしれないという自信が込み上げてきた。


その自身のおかげで、この世界に対する心配事が幾つか消え失せたと思えると笑いが込み上げてきた。


『あはははははははは!!!!』


夜空に広がる無数の星々が輝く静寂の中、一片の光が空から舞い降りてきた。


それはまるで天の川から切り取られた一筋の星屑が、夜風に乗って俺の元へと届けられるかのようだった。


手を伸ばすと、その光の欠片は軽やかに俺の手のひらに降り立ち、夢のように輝く切符となった。


その切符には金色の文字で、

 

「楽園帝国へお越しください。ニーチェ・スミス様。又の名を神道アキラ様御一行。あなた方を楽園帝国は歓迎致します」

 

と記されていた。


『げ、速攻偽名使ったのが無駄になったぞ』


『う〜ん、想定外じゃの〜』


色んなやつに見られてたり、話を聞かれていたとしても俺の苗字を知っているっことはこの最初から見られてたのか?


『まぁいいや。ジョセフ、肩を貸してくれ』


ちょっと俺より身長が高いから、ちょっと歩きにくい。


『えげつないぐらいの火力でしたね。なんというか、マナが全て吸い尽くされたような。。。』


あ、そうだ。


『おい、シヴァ』


『ギクっッッっ!?な、なんじゃね?アキラしゃんや?』


『お前の本体が監禁されてる理由って、神々の対戦で。。。』


『あぁ〜!?何のことやら!?知らぬ!?知らぬぞ!?』


はぐらかしやがったなこいつ。


『まぁ、いつか彼らに教えてあげなさい』


フォルセティはまたタバコを吸い始めた。


『わ、わかったわい!いつかな!』


本当に教える気はあるのだろうか。


『村はなんとか復興できそうですけど、グールに変えられた人たちはもう戻りません。これからどうしますか?』


『なんかいきなり空からこの手紙が降ってきたんだよ』


みんなに手紙を見せた。


『こ、これは。。。楽園帝国からの招待状ですよ!御一行って書かれているってことは僕たち全員ってことだと思うんですけど』


『おい、偽名を使っても意味がなかったではないか』


『まぁ、嘘を見抜く力があるのか。ジョセフに事情聴取していた内容が外部に漏れていたか。最初から俺の名前を知っていたかだな』


ジョセフが眉をひそめた。


『楽園帝国に招待されるってなると、ちょっと裏がありそうですね』


『ジョセフ、楽園帝国って具体的にどんな場所なんだ?』


『楽園帝国は数年で世界を変えた都市国家です。元々はこの国の首都があった場所なのですが、10年前に今の王である楽園王ジュリエッタ・マキナ・エキドリスによって大改革が起きました。それにより、旧政治体制は崩壊し、新しい秩序が形成された後、世界の命運を分けるほど楽園帝国は急激に成長を遂げました。新しい技術が毎日誕生しているのでかなり発展している場所でもありますね。様々な国に技術提供することで繁栄し続けているので独占状態をよく思わない国が多いですが、その恩恵を受けなければ世界の均衡を保てないのも事実なので、どの国も逆らえないのが現状です』


前の世界でもあった構造にも思える。しかし、急激に世界を変えたのは興味深い。


魔術だらけの世界で技術だけでのし上がってきたのは少し気がかりだ。キャスホのようにスマホのような端末が流行しているのは物凄く不自然だ。


多分、楽園王とやらは俺の世界から異世界転生した人物である可能性が高い。


『新しい技術ねぇ。。急激に技術が発展して、急激に世界を変えるほどの影響力。俺がいた世界の技術に近い物が世界中に供給されていたり、何か少し臭うな』


シヴァが目を輝かせた。


『ほほぅ、それは面白そうじゃのう!ってか、少しずつ順応してきたんじゃねぇのか?アキラ』


ジョセフが頷いた。


『楽園帝国の繁栄はかなり秘密な部分が多すぎているように僕と思います。故に、誘いを受けたとあれば、一度行くべきかもしれませんね。でも、先日のようにあの力を使うのは絶対ダメですからね!今度こそ、本当に罪人扱いされますから、その時は楽園帝国だけじゃなく、世界中が敵になるかもしれません』


俺は深く息を吸い込み、決意を固めた。


『まぁ、なんとかなるさ。行こうか。楽園帝国へ。俺たちはまずキンブレーが言っていた楽園帝国からの闇の商人ってやつを探すところから始めないといけないようだな』


『おうよ!楽園帝国とやらに行ってみるかのぉ!なんか、めちゃくちゃおもろそうだし!』


『楽観的すぎますよ!でも、これが冒険の始まりってやつですね!』


『ちょっくら、世界を暴きにいこうじゃねぇか。俺たちの手で』


今まで歩んできた道とは異なる未来を示唆するように揺らめく。風が静かに吹き、砂の音が耳を打つ中、俺は異世界でできた仲間たちと共に一歩を踏み出す。


「全てを、ここから始めようぜ—-」


その言葉が、楽園帝国に向かわせた。オイラたちの胸には期待と不安を交差させ、そして新たな絶望が待っているとは、まだ誰も気づいていなかったのだ。


ってところだな。しかし、始まりの物語は順調そのものだ。残りはこの相棒をどのように唆し、どのように世界を救済まで導くかなのだが、今わかっていることはトリシューラはオイラを裏切ろうとしている。


もう一度、あの忌々しい原初の神を殺すチャンスはオイラに訪れるのであろうか——.


『何を書いてるんだ?シヴァ?』


『な、なんでもないぞ!アキラしゃんや。。』


『何語だ?これ、全く読めないんだが』


『これはわしの時代の言語じゃからのぉ、わからんくて当然じゃ!それにオイラ日記に残すのが趣味でな!』


『ふーん、ってか、お前いつの間にノートを持ってたんだ?』


『村の子どもからもらったのじゃ!』


『へぇ、まぁいいや』


『お前、小説家になるのが夢なのじゃろ?このノートに思ったことを書き込んだらどうだ?貸してやるぞ?』


『なんで知ってんだよ』


『この前寝ぼけているお前に、お前の夢を聞いたら小説を書きたいと言っていたからな』


『寝ぼけてる時に聞いたのかよ。まぁ、気が向いたら書くよ。まずはこの世界のことが知りたい』


『お前ならすぐに知ることになるじゃろう。安心せい』

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