第1章〜13〜『旅は世界を知る第一歩』
『あち〜』
不幸な旅の始まりだ。
旅路の始まりは異常気象と言わんばかりの灼熱地獄。
まぁ、旅はこうでなくちゃとは思うが、村の方が明らかに涼しかった。
外に出た瞬間明らかに気温が10度以上上がったような気がする。気候が激しすぎないか?
『なんでこんなに暑いんでしょうかね。異常気象の前触れですかね』
『なんか、水とか、氷出す魔法とかないの?』
『僕は光の魔術しか使えないんです。それに魔法ではなくて、魔術です』
『属性?魔術?魔術と魔法に違いがあるのか?』
『あぁ、まずそこから教えなければなりませんね』
『そこから頼む。ってか、マジであっち〜』
『まず魔術を説明しますね。魔術は魔力の源であるマナを利用する知識と技術を合わせたものですね。魔力の属性は生まれた時に決まると言われています。僕の場合は光属性であったって感じですかね。属性は基本火、水、風、土、光、闇の合計6つが構成されています。最近魔法と魔術の研究が進んで明確に定義が生まれた感じではありますけどね』
『なるほど、特殊な力もまだまだ研究中ってことか。そんでさ、基本っていうからには他にもあるってことか?』
『えぇ、たまに基本の属性一つと神属性という特殊な属性を兼ね備えて生まれてくる方がいます。まだ解明されていない点が多いですが、重力を操ったりできる力とか、相手の魔術を強制解除できるような力があったり、想像できないような力があったりするそうです。まぁ、都市伝説扱いされてるレベルなのでなんとも言えない点は多いですけどね』
『都市伝説ねぇ。そんで魔法は?』
『魔法は非科学的な現象を引き起こす術ですね』
『まて、魔法とか、魔術がある世界なのに科学という概念もあるのか?』
『はい。でも、10年前ぐらいに一般教養として浸透し始めた概念で、力が学問的に解明され始めてきたのは最近の話なんですよ』
『なんでそんな急激に学問的に解明され始めたんだ?』
『あぁ、それは全て楽園帝国のおかげですよ。何もない都市から急に科学、機械、魔術と魔法の研究が進み、10年で楽園帝国が誕生し、世界中に影響を与え始めたって感じです。それも帝国を誕生させたのは今の王である楽園王による功績らしいですよ。大天才ってやつですな』
『へぇ、大天才ね』
天才。天才ねぇ。現実世界では天才と呼ばれるほどの人物にあったことはないな。天才なんて言われてるやつなんて本の中にいる存在だと思う。
『このデバイスをご存知ですか?』
『何?このデバイス』
明らかにこれはスマホだ。なんでこの世界にスマホが存在してるんだ?
『これですか?キャスホですよ。キャストフォンでキャスホです』
『キャスホ?なんかダサくね?』
『ダサくないですよ〜。ちなみに僕たちの体内にあるマナを少し消費するだけで全世界のユーザーと繋がることができる活気的な機械ですよ』
『へぇ、インターネットに繋がったスマホみたいなもんで、マナを使うことで常に充電することができるっことか。これを作ったのもどうせ楽園帝国様ってことだろ?』
『そうですね。今の時代に超絶的な恩恵を与えた楽園帝国様々ってやつです』
『まぁ、楽園帝国様々なんですけど、かなりいろんな国に嫌われてますよ。この動画を見てください』
そこに写っていたのはとてつもなく綺麗な女性であった。
『なんかえらい美人さんだな』
『どこ見てるんですか。問題は動画の内容です』
動画に映る美人に見惚れてる場合ではない。しかし、その美人が語る内容は俺の意識を強く刺激した。
『宣誓、私は楽園帝国の王であるジュリエッタ・マキナ・エキドリスとして世界を否定します。経済戦争にかまけている権力者と実業家、汚職を働く陰の組織と政治家だけでなく、神であろうとも、私は全ての過ちを否定します。
最大幸福を実現し、真の幸せを探求し続ける我々の帝国は旧世界システムを打ち砕くための救済です。
生きる希望を失った方々であろうとも、前科を持っている方々であろうと、本当に救済を願うのであれば、我々はあなたたちを歓迎いたします。
共に神でも作れなかった真の楽園を我々の手で作り出しましょう。ですが、我々の安寧を揺るがす存在は全て消えていただきます。
では、世界の諸君、ご機嫌よう』
さながら、ジャンヌ・ダルクが転生したような感じだ。
世界の汚い部分を完全否定し、救済されるべき人間を選別しているのだと思う。
『まぁ、それで今世界中が楽園帝国から絶大な恩恵を受けつつも、どのように帝国を支配するかを狙っている状態ですね』
『おいおい、なんかすごく反抗的じゃね?そりゃあ嫌われまくってるのも頷ける』
『僕たちみたいな平民からしたら賛否両論ってやつですね。もちろん、学問の発展や、あらゆる支援は僕たちの生活水準を活気的に向上させるきっかけになりましたが、経済戦争をしている中で急激に成長した小さい国に出し抜かれて平然としていられる国は少ないと思いますよ』
『まぁ、そんなもんか。ってか、お前やたら経済とか、政治に詳しいんだな』
『そうですか?これも一般教養だと思いますよ。自分の国が世界的にどういう状況に置かれてて、政治がどのように変化していくのかを話し合うのは当たり前だと思います』
『俺の国にはそんなのなかったぜ?多分、そこまで考えている人がいない。考えても無意味だと思ってしまう人がいっぱいいたと思う』
『考えなくても安定した暮らしができたからじゃないですか?平和そうでよかったじゃないですか』
これは皮肉なのか?いや、皮肉ではない。
そういう考えがここでは当たり前なのだ。
『楽園帝国ってのはどこにあるんだ?』
『あぁ、ここから東に500キロのところにありますよ。ちなみにこの国はセレステリアっていうんですけど、この国の旧首都であるクロノエドが、今の楽園帝国になった感じです』
『へぇ、行ってみてぇなぁ』
『外から眺められる観光スポットはたくさんありますよ。二千兆エルの絶景って呼ばれてますね。楽園帝国は外から見ても人を魅了するほど美しいらしいです』
『へぇ、絶景ねぇ。二千兆エル?エルってなんだ?』
『エルはこの国通貨の名前ですよ』
『円とドルを混ぜたような響きだな』
『円とドル?聞いたことがない通貨ですね』
『あぁ、気にすんな。こっちの話だ』
『これがエルですよ。今お札しかないですけどね』
千エル、五千エル、一万エルを渡された。
『なんか、神々しいお札だな』
『今もっとも人気なおとぎ話の内容をお札に反映してますからね。だから、お札の絵柄はコロコロ変わります。今日の千エルは『暴虐の魔女の歪んだ愛』、五千エルは『失われた文明の大賢者』、一万エルは『楽園帝国の誕生』ですね』
な、なんか、ファンタジーとSFを混ぜたような世界観だな。おとぎ話なんか暗めな内容っぽいせいで、正直、どうツッコミを入れたらいいのかわからない。
『内容はまた暇な時にでも話そうと思います』
『そうだな。難しい話を聞いてお腹いっぱいですよ。神父様』
『めちゃくちゃ雑に流しましたね』
ジェセフは言いながら笑っていた。
しかし、暴虐の魔女、大賢者、楽園帝国の話は気になるが、この世界観を少し理解できた。
今、この世界では魔術、魔法、化学が入り混じっているってことだ。SFとファンタジーが組み合わさった感じなのかもしれない。
そこから、いろいろな問題を片っ端から解決していくしか現状考えるしかなさそうだな。
しかし、この異常気象どうにかならないもんなのか?
暑すぎて、あのシヴァでさえもおとなしいぞ。
シヴァはとてつもなくしんどそうにしながら、俺の目の前でのけぞっている。
まるでサバンナのど真ん中で喉をカラカラにしている旅人のようにのけぞっている。
『アキラ、オイラ死にそうじゃ。太陽に焦がされてしまう。。。くそぉ!!!この世界のアポロめ!!出てきやがれ!!もう一度神戦の時のようにボコボコにしてやるわ!!!』
『お前、火を使う神なのに、なんで暑がってるんだよ』
『あれは太陽の力が発している熱であって、オイラ達の火は違うのじゃよ。あれは火ではない太陽だ!太陽のせいなのだ!』
ジョセフは暑がっているシヴァを見て大笑いしている。
『ふーん、あつぃ』
切実に思う、これほど氷がほしいと思ったことはない。バケツいっぱいの冷水の中に素足を突っ込みたい。
『あ、あれは!!アキラ!!なんかめっちゃ涼しそうな神殿が見えてきたぞ!はよぉあそこに避難せねば!!おい!運転手!!早くあそこまで走らせぬか!!』
干からびた俺たちの前に現れたのは、まさに妖精が住まう神殿の形をした大きな建築物だった。
美しいのは美しいのだが、咄嗟に思ってしまったのは涼しそうな建物があるくらいだった。
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