第07話 レグルスな少年
その夜。
春の星空は、冬や夏ほどには豪華ではないにせよ、それなりの物語がある。空で煌めくレグルスとデネボラを繋げては獅子座を描いたり、そこからアークトゥルスとスピカを繋げて三角形を描いては、微笑をもらす。
「仏頂面よりも、そっちの不敵な笑みの方が似合ってますよ、先輩」
背後から現れたのは、ルームメイトの
「後輩指導しなきゃなんねーからって、ムキになること無いっスよ。気楽にやりましょうぜ。それに、毛玉ちゃんが可愛そうだ」
「はは……。分かってるさ。僕だって、らしくないことしてるなって自覚くらいある」
手のなかでコーヒーを転がす
「でもね、
「考えすぎっスよ。現に俺や先輩はやれてるでしょ」
「ははっ。よく言うよ。
「み、見てたんスか!? いやいや、あれはですね――」
慌て始める
「強かった?」
「ま、まぁ? 本気は出してねぇーですけど……やるじゃん? って感じには強かったスね」
「あのさぁ、知ってると思うけど、僕は嘘つきが嫌いなんだ」
「うっ……本気出す暇さえ与えてもらえねぇかったです。はい」
「ははは。流石は、僕の婚約者だね。――
表情も声色も変えずに、怒りを吐露する
「
「……言葉もねぇです」
「君を責めてるわけじゃない。家と家の話さ。たぶん、
五大名家なんて言うが、それは過去の話だ。
五大名家のバランスが崩壊しているだけの問題ではない。これは内政問題に直結している。国政を大臣や、官僚の要職、さらに軍部や治安維持隊のトップも
「その万に一つの可能性さえ潰しにかかる……。
――
――
「少しは察してくれよ、
*****
「そうは言っても、毛玉ちゃんにあそこまで当たんなくてもーとは思うんスけどねぇー」
空を仰ぐ
「痛いところ突くなぁ。まぁ……ちょっと別件でね。あの子は、僕にとって特別な子なんだ」
「特別ぅ?」
「そっ。何があっても、守るって決めてるんだ。だから、できれば帰って欲しかったんだけど……あの感じじゃ無理そうだよね」
自嘲気味に笑う
何しに来た?
死にに来たのか?
とっとと帰れ!
焦る気持ちを抑えながら、飛び出した言葉が、結果として大切な子を傷つけるものになってしまった。
「安心しなよ、
「おっ! じゃあ明日から優しい
「いいや。鬼先輩から危険物処理班になる。いまのあの子は、核のボタンを持ってる赤ちゃんみたいなもんだからね」
力が出せないうちなら、まだ放置する選択肢もあった。だが、〈
「酷ぇ言いようっスね」
「はは、どっちが。大切な人を毛玉呼びされるのは、結構我慢の限界なんだけど?」
「……っス」
「本気で怖がるなよ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます