第03話 毛玉と呼ばれて
「よっ、毛玉。今日もはりきってんな!」
「だから違うって……。はぁー。もういいよそれで」
ルームメイトの
「ふんだ。
ウォーミングアップのためのランニングをしながら、普通科の校舎が目に入り思わずそう呟く。やはり袴姿での走りは慣れない。
「なぁにが、『〈
とはいえ、もっと壮絶な虐めも覚悟していた
実際、
それに比べて
「おはよ、
トン、と肩を叩かれる。振り向くと、涼し気な笑みを浮かべている同級生――
「お、おはようございます」
「あはは、なんで敬語なの?」
そこへ、すっと
「も、もしかして……二体……操れるんですか?」
「もー。だから、なんで敬語なの? ――そうだよ。最近だけどね」
「すごい……」
「すごくないよ。
なんでこんな人が、私なんかと並走しているんだろう。
きっと神様は、世界のバランス調整に失敗したのだろう。そうでなければ、容姿も良くて、誰にでも優しくて、しかも〈
目をつぶれば、憧れの
「どうすれば……」
「ん?」
「どうすれば、毛玉じゃなくなりますかねっ?」
質問をして、すぐに
「ご、ごめんなさい! いまのナシです! 忘れてくだ――」
「大丈夫だよ」
「――へ?」
「最初はみんなそうだよ。よかったらトレーニング付き合おっか?」
もしかして天使かな?
*****
「今日おこなうのは、対術師の模擬戦だ。いまから君たちには、大学部生を相手に戦ってもらう」
ランニングを終えて、集合したあとに待っていたのは、
「ちょっと待ってください――」
「反論はなしだ。まだ、使役できてない? 知らないな。そんな理由で、〈
〈
その言葉が飛び出した瞬間、その場にいた全員の表情が凍り付いた。正確には、
帝都に住む人間にとって、〈
始まりは、千年前に遡る。都の全てを焼失させ、破壊と虐殺の限りが尽くされた惨劇が、
結局、その騒乱は、
先日も、五大名家の一つである
「君たちがまだ戦えないことは知ってる。だが、明日襲われたらどうする? 戦い方を教えてもらってないからと、あの世から恨んでも遅いぞ。これから、俺たちが模擬戦をし、最低限の対処法を叩きこむ。いいな」
そんな無茶苦茶な、と叫ぶ同級生。けれど、それはまともに〈
「
「やっぱりですか。何すればいいですか?」
「俺と組め」
「分かりました。じゃあ、隅の方で――ふぇ?」
隅の方で大人しくしていますね、と言おうとしたところで、腕組みをした
「まさか、戦えないなんて言わないよな。――お前が持っているそのお守りは、いつまでもお前を守ってくれないぞ?」
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