第02話 その夜
「帰ればいいじゃん。もうやってけないでしょ」
ご愁傷様。そんなふうに頬杖を突きながら、ルームメイトの
「なっ!
「客観的な感想だよ。初日で
「そ、そんなに凄い人なの?」
「帝都で五本の指に入る〈
まぁ、天下の
「帝都で五本って……具体的には?」
「いろいろあるけど、有名なのは弱冠十五歳で護国勲章を授与してることかな。〈
「流石、
「いやいや。普通科でもこれくらい誰でも知ってる。逆に、異能力科のあんたが、なんで知らないの?」
「うぐっ……」
昔から、よく「
この黒い毛玉の正体が、
「どうしよう、
「癪だけど、こればっかりは
「うぅ……」
「つらい思いをしてまで残りたい?」
九歳のころだった。日の沈んだ森のなかで、繋がれた温かな手と、太陽のように輝く笑顔はいまでもはっきりと覚えている。裏山で迷子になってしまい、一人泣いていた
少年は、そう自分のことを名乗った。
次の日、おおよそ白馬の王子様に助けられたんだと言わん勢いで
いや、絶対いたもん!
すると、
「もう一回訊くね。昨日、燃えてる森のど真んなかに、
そう言われては、何も言い返せなかった。
きっと、夢を見たか、記憶違いをしてるんだろう。しばらくは、そう思うようにした。でも、どれだけ忘れようと思っても、握られた手の温もりと、太陽のような笑顔は忘れられない。
なんと言われようと、
「――あの日、私はこれを確かに貰ったんだ」
あの体験は、やはり嘘ではない。
そして、自分もあんな存在になれたら……。
憧れの気持ちが積もりに積もった結果なのだろうか。
「私、がんばる!
「それは、つらい目に遭ってまでしたいこと?」
「うん!」
「……そっか」
物心がついたことからの付き合いだ。
「愚痴ぐらいならいつでも聞く。敵だらけになると思うけど、私は味方でいてあげるから」
「ありがと!」
「まぁ、人の噂も七十五日って言うし、ほとぼり冷めるまで静かにしとけば、そのうち皆忘れるでしょ」
「そ、そうだね! さ、流石、
調子に乗り始めた
「まぁ……アンタが大人しくできるんなら、の話だけど」
*****
翌日は、〈
昨日の今日で注目を浴びることになった
その結果。
その日から、
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