第04話 はじめての模擬戦の相手
どうしよう!
戦ったとして、まず勝てない相手だということは、その立ち姿で分かる。腕を組み、仁王立ちする
あるいは獅子か。
ならば、逃げる――というわけにもいかない。走ったところで、逃げ切れるわけがない。袴を身に着けている状態のいまはなおさらだ。
「どうした?」
「?」
「早く〈
「それは……」
「それとも、俺程度なら生身で十分か?」
いちいち癪に障る言い方だ。
できるものならやっている。けれど、いまの
それが分からない
改めて見れば、ムカつく立ち姿だ。〈
「なんで……私ばっか……」
ギリっと奥歯を噛む。
そうだ。全ての不幸は、この男の詰まらない憂さ晴らしから始まったのだ。護国勲章を持っている? 〈
けど
かたや、
「アンタなんかッ!」
心拍数が上がる。
すると途端に、
巨大な鴉だ。
「おい、見ろ! アイツ……」
「毛玉しか作り出せなかったんじゃなかったのか?」
「一体何が……」
羽ばたけば巻き起こる辻風。黒い風に煽られて、横で対術師の訓練をしていた誰も、ふとその足を止めて
「アイツ……実はあんな〈
「いやいや、生み出せるくらいならできるだろ。問題はこっからだ。使役できんのか?」
「無理だろ。威嚇するくらいならできるかもだけどな」
「ひょっとしたらやっちまうかも? ……でも相手が悪ぃよ。初戦が
渦巻く困惑。そこへ、どうせ無理だろという嘲りと、もしかしたらという期待が混じる。だが次の瞬間、その場にいた誰もが目を丸くした。
着物でも羽織るかのように。
かと思えば、一羽の鴉が空を滑空するかのように地を駆け、影によって紡がれた
唯一対応できたのは、
「――ッ!」
揺らめいていた無形の影。それが、
「痛ーッ!」
痛みに堪えながら、起き上がろうとする
「〈
「ウツシマ……? 何です?」
「それとも、単なる〈
嗤われたような気がして、
「自分の〈
「――ッ!」
ふと、そこで
あまりに変わり果てた姿。
お守りは半分に裂けていた。
「う……そ……でしょ?」
表情を失う
大切な人から貰ったお守り。これまで肌身離さず、大切に扱ってきた。それが、目の前で無惨な姿で転がっている。その現実が受け入れられなくて、もはやその場から動くことさえできない。
そうこうしていると、おもむろに
「か、返してください! それは――」
「ガラクタだ。もう必要ないだろ」
「が……ガラクタっ? 撤回してください! それは大切な人に貰った――」
「これは、お前の力を封じ込めるための
お前にとっては鎖のはずなんだけどな、と
そして、
「お望み通り返してやる。一生、毛玉でいるか、それとも、捨てて力の制御を覚えるかはお前が決めろ」
*****
「なーんだぁ。
腕に留まった藍色の鷹の姿をした〈
「えへへ。――見ぃつけた」
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