第11話 〈新生・暁鴉〉
今日もまた、
「って……あれ?」
ふとその時、廊下を走り去っていく
「
「テロ事件が発生した。お前は寮に戻れ」
「ど、どういうことなんですか?」
予想もしない返答に、
「〈新生・
「ふ、二人は? 隊服を着てるってことは……」
返答は無かったが、それがすべての答えだった。二人は、たまたま
襲撃されたのはベーカリー『ルセロ・デル・アルバ』を中心とした周辺区域であること。犯行声明は、自称・〈新生・
「こんなに早く、先輩とバディを組むことになるなんてね~。もちろん、期待していいんですよね?」
「? 何を?」
「終わったあとの、ご褒美。くれるんでしょ?」
「無駄口を叩ける余裕があるなら安心だ」
「もー、冷たいなー。一応、婚約者なんだけどなー。それとも照れてます? あはっ、意外と
「ははは。相変わらず君は欲しがりだなぁ。ご褒美が弔花にならないことを祈ってるよ」
気が付けば、不敵な笑みを見せ合う二人。時と場所が違えば、ピロートークさながらの調子でさえあった。
だが、二人の後ろをついて走っていた
「わ、私も行きます!」
「来るな!」
響く叱責。
思わず立ち止まることになった
「お前はここにいろ。分かってるだろ? これは遊びじゃない」
*****
二人の去っていく姿を見ながら、
だが。
なぜか、
「ここにいろ」と言っておきながら、自分は戦場に向かうことに腹が立つのだろうか? いやそんなことはない。そんなことに苛立つはずがない。ならば、「遊びじゃない」と言っておきながら、どこか二人がいい雰囲気だったことか? それも違う。そもそも
あえて気になる点があると言えば、
そんなわけがない!
なら、何に腹が立つのだろう?
一生懸命、腹が立つ理由を探す。
そして、辿り着く。
「アイツ……。私にだけお前呼びしてない?」
*****
悶々とした気分でいると、
「もしもし、奏瑚! 大丈夫なの?」
「チッ……ぅるさいよ。バレたらどうすんの?」
「ご、ごめん……」
「大丈夫なら連絡してない。お察しの通り、状況は最悪だよ」
言葉に反して、いつも通りの口調で話す
「最悪って、具体的には?」
「
与えられた情報に、どう反応していいか分からない
「それって……」
「まぁ、殺されはしないでしょ。奴らにとっても貴重な人質だし。それよりも聞いてくれー。店が半壊して、多分、六月いっぱいは営業再開できない。よって、六月分の収入が蒸発したー。もう、最悪……」
「そんなのいまは、どうでもいいでしょ!」
「ショックだ。マジ最悪。うちの店を襲撃とか、何様のつもりなのって話。マジで許さんからな」
「……えぇ」
「そこで、
「何? 何でも言って!」
「
え? と予想外の言葉に反応しようとした時、目の前に一人の男のプロフィールが送られてくる。
コードネーム・スカーレット。火鼠の姿をした〈
「ちょっと待って! 今回の事件は、〈
「模倣犯だよ。いや、自称してるだけって言った方がいいかな。どうせ、いつものパターンでしょ」
「どういうこと?」
「
そう言う意味では、スカーレットさんも被害者か。ご愁傷様、と。そんな言葉を加える
「なんでそんなこと分かるの?」
「この事件で、誰が得をするのか考えただけだよ」
「信じられない……。じゃあ、
「へー、その二人で組んでるんだ。じゃあ、ますます自作自演じゃん。婚約者同士を組ませて、お似合いの二人を世間にお披露目する。茶番も茶番。極めて政治色の強い初めての共同作業ってわけだ」
ベーカリーを結婚披露宴代わりに使って、入刀するケーキの代わりに殺し屋を用意するとか、シナリオライターとしては意味不明だね、と
だが、喋りすぎだった。
「も、もしかして、
SOUND ONLYの向こう側から聞こえてきたのは、
「俺っス!
「――おい。誰と喋ってやがる?」
続いて特徴的な低い濁った声が響いた。
「おい、女。通話は切るな。土産話ついでに、そいつに断末魔も聞かせてやる。もちろん、ここにいる全員分のな」
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