第18話 桜色の業火
気が付けば、
「……今度は嘘じゃない、だと? 詐欺師の虚言には飽きた。なんとも、
ふと、
なんとも頼りない小娘だ。
そんな体たらくで世界を敵に回そうとしていたのか。そんな小さな身体で、一族の怒りを背負おうとしていたのか。もっと、頼りがいのある子孫なら、世界を破滅させるために力を貸したのにと、
「
「え? ええぇッ?」
「だが、もう一度だけだ。もう一回だけ、騙されてやる」
鼻を鳴らして霧散する
それを確認すると、
周囲は地獄の業火。
こんな所まで助けに来てくれた。
それは全部、一人の女の子を助けるためだ。
「わ、わかりましたよ! 掴めばいいんでしょ、掴めば!」
「? 急にどうした?」
「ふんだ。ぜーったい倒しますから! これは、約束を破りたくないだけですからっ! 別に年上がタイプとか、声がカッコいいとか、笑った顔が好きすぎるとか、そう言うんじゃないですから! 教え方は腹立つし、顔はムカつくし……あと毛玉呼びとか最低! 何考えてんですか、馬っ鹿じゃないの? 絶対許しませんから!」
「じゃあ、呼ばせないくらい強くなってみろよ、
「きゅ、急に名前……そ、そういうところですよ! わ、分かりましたよ! 強くなりますよ! 強くしてくださいよ!」
伸ばされた手を、掴み返す。
「帰ろう」
「はい」
「――帰しませんよ」
背後からの声。
*****
「一族の一部じゃない、か。――先輩、そんなことも言えたんですね。思わず聞き入っちゃった」
「……」
わずかに顔を紅潮させる
「でも駄目じゃん。世界の敵と婚約だなんて。そうじゃなくても、もうその子は、帝都に火を放った犯罪者。入る場所は、
「力が暴走しただけだ」
「私情は無しですよ、先輩。この事件を終わらせるためには、
そこで
「あー、その前に先輩は婚約者がいるのに、不倫する最低男でしたね。ふふっ。しかも、目の前で」
「殺せる理由がたくさんあって楽しそうだな」
「えへへ。普通の相手じゃ、もう満足できなくて。ちょっとは楽しませてくださいよ、先輩!」
果たして、
だから、
それなのに、このザマだ。
ならば、せめて玩具の方を壊した方が快感が得られるかもしれない。玩具では満足できないかもしれない。けれど、
「――
「……え?」
刹那、世界は白く染め上げられた。
中空で言葉を失う
「熱――ッ」
ふと、桜の花弁が
「子孫の行く手を阻む者は、お前か?
「暁……鴉……」
「邪魔だ。
炎が荒れ狂う。
まるで、桜が夜を包んでいくように。舞い散る花弁は、風と共に踊り、桜花の咲き乱れる帝都を、月が照らし出す。月夜に降り立った少女が、桜纏う悪魔であることは、もう誰にも隠せない。
伝説の復活宣言は、ここに成された。
「……逃げ足の速い虫だ」
溜息を吐くと、一瞬にして炎は消えて闇が訪れる。広範囲に燃え広がっていた炎も例外なく、何事も無かったかのように消失する。
だが、街そのものが再生するわけではない。炎は消えても、黒く染められてしまったままだ。その街の様子を見て、
「すまないな、
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