第19話 月に雲
帝都炎上事件から三日後。
喫茶『
我ながら、腕一本の負傷だけでよく逃げられたものだ、と。事件の夜を思いながら、
「腕一本の人間に怖がりすぎでしょ」
苦笑を浮かべて、
事件の後、
その返答がなされる。
〈
『あっ、姿を現しました!』
十五分遅れで始まった会見。しかし、当事者が現れたかと思えば、まずその時点で会場がざわついた。会場に姿を現したのは、
黒髪ショートカットの少女だ。おおよそ自称・
『あっ、あれは!
ディスプレーの向こう側が記者のフラッシュで溢れる。
――なんで黒ローブ?
「宣言!」
快活な声が響く。
その声に、再びフラッシュが集中する。せ、宣言ッ? 一体何が起ころうとしているのか? これが、ただの会見でないことが、たった一言で印象付けられた瞬間だった。これには
「
――なっ!
恩赦ッ? その一言に、会場がざわめき出す。会場だけではない。街じゅうの人々が耳を疑い、目の前で起こっている異常事態に注目する。
他方で、
「もはや、
何を言ってるんだ、この女は!
一連の事件を引き起こした
そして、いままさに。
世界が音を立てて狂い始めた。
『それは……他の五大名家に対する宣戦布告ということでしょうか?』
「ちょ、そんな怖い顔しないでよー。私はバカ
『こ、婚約もしたと?』
「あれ? 言ってなかったっけ? そうそう♪」
『悪魔どもと手を組むと?』
「だから、恩赦してんじゃーん。分かってないなー。それ言うなら、
『い、いまの発言はっ!
「……うっぷす。口がすべったー。でも、みんな正直思ってるでしょ?
明かな人選ミスだろ。口を開けば開くほど、
だが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「はは……あはは……。そう。そうこなくっちゃ……」
ギプスのはめられた左腕をギュッと握る。
「そうだよ。こんなところで、死なれたら面白くない!
そして、
生れて初めて、心からの笑みを溢した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます